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ランド・オブ・リコンストラクション ~VRMMOで富豪ハーレムを目指したら《金の亡者》に!?~  作者: 海山 鍬形


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五十二話 1000ギルのスケルトン ——そしてギルドにて

 押し合って登場したスケルトンたちにジンは怒鳴る。


「なんでまたお前らなんだよ!! 入れる金額増えたら強さが変わるんじゃないのか⁉ 十体に増えたのが強くなった判定ってこと⁉」


 スケルトンたちは片手でギルを取り合いながら、もう片方の手をすっと掲げた。


 その手には木の棒が握られている。


「それで強くなったつもりか! 小学生じゃねぇんだぞ! つーかいつまでも金取り合ってんじゃねーよ!!」


 しかしジンが怒鳴ってもスケルトンたちの動きは止まらない。

 1万ギルの硬貨一枚をひたすらに奪い合っている。


「一枚だから駄目なのか⁉ いやそこはじゃあ一体だけ強い奴出て来いよ! なんでこっちが硬貨の量調整しなきゃいけないんだ! えぇい没収!!」


 ジンは1万ギルを奪い取る。

 スケルトンたちは嘆くように必死に手を伸ばしてきた。その様は本当に地獄の亡者のようだ。


「えーっと1000ギルを十枚ってどうやるんだ……あ、イメージしたらできた。ほらっ!」


 1万ギルを1000ギル硬貨十枚分にして、ジンはスケルトンたちへ配る。

 それを貰ったスケルトンたちは露骨にため息を吐きながら硬貨を体へと仕舞った。

 そして最初の奴がそうしたように、だるそうな態度で横並びになる。


「マジで役に立つのかこいつら……⁉ ……あれ? ていうか一体は先に1000ギル渡しててただろ!! そいつはせめてちゃんとした態度になれよ!! さっき来た奴どいつだ⁉」


 バッとスケルトンたちが全員で右端の奴を指さした。

 さされたスケルトンは『お前らバラすな!』というように手を振っている。


「お前か!! 2000ギル分なんだから強い武器とか持ってきたよな⁉」


 迫るジンに対し、スケルトンはすっと右手を掲げる。


「いやお前も木の棒……いや、これは⁉」


 それは木の棒より短く、端が丸くなったつるっとした棒——めん棒だった。


「だからなんで日用品なんだよ!!」


 ジンが叫んだその時だった。


「ウオォーーン!!」


 上から遠吠えが響く。

 丘を見上げれば、二体のグラスラン・ウルフがジン目掛けて駆け下りてきていた。


「よし、ちょうどいい! あの二体を倒せ!」


 ジンがグラスラン・ウルフを指して命じる。

 しかしスケルトンたちは一様に手を横に振っていた。


『無理無理』『やだー』『怖―い』


 そんな声が聞こえてきそうな仕草だ。

 舐めた態度に、ジンはとうとう堪忍袋の緒が切れた。


「いいからはよ行けーーーーッ!!」


 短剣を振り回して追いやるとようやくスケルトンたちは走り出した。

 駆け下りてくるグラスラン・ウルフに対し、丘の中腹でスケルトンたちはぶつかり合う。


 スケルトンたちはグラスラン・ウルフへと木の棒を振り下ろし……あっさり避けられ、逆に振るわれた爪で肋骨をバキャッと破壊された。

 それでスケルトンの一体が草原に崩れ落ちる。


 続けてグラスラン・ウルフは他のスケルトンへ跳びかかりその頭を噛み砕いた。

 頭の半分が砕かれたスケルトンは仰向けに倒れていく。


「弱っ!」


 ジンは驚愕の叫びを上げる。

 グラスラン・ウルフ一体に対し、スケルトンは五体で挑んでいる。

 だというのに碌にダメージも与えられず二体が沈んだ。

 というかもう一体のグラスラン・ウルフにも二体やられているので、合計四体が一瞬でいなくなった。


「4000ギルでこれかよ……! 囮にすらならねぇ!」


 予想以上の弱さにジンが頭を抱えていた時だ。


 肋骨を砕かれたスケルトンがすうと立ち上がった。


「あっ、流石にあれでやられは……あれ? 傷が……」


 そのスケルトンの体には何の異常もなかった。

 また別の奴かとも思ったが、他に立っている三体はまだ倒れていない。


 そしてよく見るとその肋骨には僅かにひびが入っていた。

 だがひびは瞬く間に修復されていき、綺麗な白色に戻る。


「回復機能……!」


 スケルトンは再びグラスラン・ウルフへと突撃していった。

 さらに他の倒れたスケルトンも続々と起き上がってくる。


「グウゥ⁉」


 その光景にグラスラン・ウルフも戸惑っているようだ。

 脚を止めてきょろきょろとスケルトンたちを見回している。


「おおっ、相手が困惑してる! 今だ、攻撃しろ!」


 脚を止めたグラスラン・ウルフへ、スケルトンは一斉に攻撃を仕掛ける。

 周りを囲んで五方向から振り下ろされた木の棒は避け切れず、グラスラン・ウルフの体へ三発ほど命中した。


 しかしその威力は弱かった。

 ボスボスと布団を殴るような音しか出ず、グラスラン・ウルフの反撃でスケルトンたちはあっさりとまた蹴散らされていく。


 ジンは半目でスケルトンたちを見る。


「……まあ、うん。囮ぐらいにはなるってわかったし……またあれも回復するんだろうし」


 全く役に立たないよりはマシだとジンは自分に言い聞かせる。

 しかし蹴散らされたスケルトンの中には立ち上がらない者がいた。


 それは一度肋骨を砕かれたスケルトンたちのようだ。

 そいつらは倒れ伏したまま骨が崩れていき、ざぁと灰のようになって消えていった。

 ジンはそれを見て再び頭を抱える。


「いや回復限界はあるのかよ……ああ、もう……」


 ため息をつきながら、ジンは短剣を手に駆け出した。




 結局グラスラン・ウルフはどちらもジンが倒すことになった。

 めん棒の奴がちょっとだけ頑張っていたが、結局大してダメージは与えられていない。


「お前らほんと役に立たないんだな……」


 落胆したジンの眼差しへスケルトンたちは抗議するように手を振り回している。

『自分たちは頑張った』とでも言いたげだ。

 中には看板を掲げている者もいた。書かれている言葉は『金をくれ』である。


「金は先払いしただろ!! あの体たらくでよく追加要求できるな⁉ つーか他に出来る事ないのか!!」


 スケルトンたちが洗濯板や裁縫道具、箒を取り出した。


「お前ら亡者なんだよな……?」


 何故さっきから家事に関するものが出てくるのか。

 そしてどこからその道具は取り出しているのか。

 ジンはつっこむのも疲れて天を仰いだ。


「今は指名手配犯に対抗する力が欲しかったのに……!」


 嘆くジンの肩をぽんぽんとスケルトンが叩いてくる。


「いや慰めるぐらいなら働け……ってなに?」


 別に慰めるつもりはなかったらしくスケルトンは何か板を手渡してきた。

 板には文字が書かれている。


「えーっと? 『10分経ったので帰ります』……は?」


 板から顔を上げるとスケルトンたちは門へと撤収していくところだった。


「待て待て待て! 一人1000ギル払って10分しか働かないの⁉ 時給6000円なんてよっぽどの高給取り——」


 ジンが引き留めるより早くスケルトンたちは帰り。

 そして門だけが草原に残った。


 ジンは呆然とそれを眺め、やがてステータスを見る。


「ああっ、レベルが13から3まで下がってる……なんで1万ギルも使ったんだ俺は……!」


 ギルを使ったことでステータスは下がり、しかも出てきた者は全く何の役にも立たなかった。

 今まで覚えたスキルは全て役に立ってきたが、〈地獄の門は金次第〉だけは使い道が見いだせない。


「あ、でもスキルレベルは上がってる」


 1万ギルを投入したからか〈地獄の門は金次第〉のレベルは一応2に上がっていた。


「これ、スキルレベル上げたらもっといいものが出てくるようになる、のか? ……でも多分レベル上げに必要な金額増えていくよな」


 10万や100万、あるいはそれ以上か。

 ジンはちらりと門を見る。


 門の中からはスケルトンたちが覗いてきていた。

 その手には『大歓迎♡』と書かれた板を持っている。


 それを見たジンはすたすたと門に近寄り——ゴォン! と無理やり扉を閉めた。


「お前らなんかにそんな金額使えるかバーーーカ! このスキルはしばらく封印する!! それより〈餓者の取り立て〉のレベル上げだ!!」


 ジンは大股でずんずんと丘を登っていく。


「とはいっても草原は人多いんだよな。正直あの呪いみたいな光景は見られたくない……あ、そうだ」


 悩んでいたジンはふと手を叩く。


「グレースから教えられた洞窟があった。あそこ人いないしモンスターは多いしちょうどいいな。……ギガ・ボウにはちょっかい出さないようにして」


 そうしてジンは洞窟へと向かった。





 ジンがスケルトンと戯れていた頃。


 冒険者ギルドの二階にある応接室に街長とギルド長はいた。

 革張りのソファへと腰かけ、大理石のテーブルを挟んで向かい合っている。


「ひとまず指名手配の手続きと捜索の指示は終わりましたね」

「やれやれ。まさか二日目にこのような事件が起こるとは……」


 街長は疲れたようにソファへともたれこんだ。


「第二陣の人員も無事でいてくれればいいが……しかし、本当にこの者達は何を目的としているのか」


 テーブルにある羊皮紙を街長は眺める。

 そこにはたか丸とソールズの似顔絵が書いてあり、その下にジョブ名が記載されている。


「目的、ですか」


 ギルド長もまたそれに視線をやり呟く。


「ネクスタルかゼノに恨みがあるのか、あるいは本当に愉快犯なのか。〝祝福〟を受けた者には確かにそういった享楽的な人物が多く……」

「私は違うと思っています」


 街長の言葉を遮りギルド長は語りだす。


「この襲撃には強い情念を感じます。冒険者たちのような邪魔者は完全に潰し、物資も全て破壊している。非戦闘員もまた、手ごまとして役に立つから活かしたに過ぎない——彼らは全てを破壊しようとしている」


 断定的に語るギルド長へ街長は訝し気な視線を向ける。


「ギルド長? 何を言って——!」


 街長は突然ガバッとソファから立ち上がった。

 その目は見開かれ、驚愕と警戒を露にしている。

 まるで目の前の人間が突如別人に変わったかのような反応だった。

 いや、ような(・・・)ではない。


「気づいたか、街長」


 実際にそれは別人だった。

 モノクルをかけた細身の青年という容姿は変わっていない。

 ただ放つ雰囲気と……何よりその目。

 全てに価値を感じていないような冷たい目が、ギルド長の印象をがらりと変えていた。


「お前は……⁉」

「俺の名はソールズ」


 名を聞いた街長は驚きに顔を歪め、同時に応接室のドアへと駆ける。

 だが一歩を踏み出した瞬間にガッとその首を掴まれた。


「ぐっ……!」


 数歩の間を、ソールズがそのAGIで一瞬で潰したのだ。

 ソールズは低く呟く。


「ネクスタルの街長、フォージ・ブラクス。我々の目的のためについてきてもらうぞ」

「……⁉」


 同時に街長の体が震え出した。

 それは《大悪党》のスキル、〈蝕む恐怖〉によるものだ。


「が、う……」

「高位相手には少し時間がかかるか」

「お、前たち、は……なぜ、こんなことを……」


 街長の問いにソールズは僅かに目を細める。


「お前をさらうのは、この祭りを潰すため。そして……少し話をしたいと思ったからだ」


 話をしたいと言いながらもソールズはぎり、と首を絞める手を強くする。


「この街で一番の権力者というのは、どんな気分だ?」

「が……っ!」

「高級で頑丈な館から見下ろす街はどう見える? 安全で、綺麗で、素晴らしいか? そんなものだけが目に映るんだろう?」


 冷たい目をしながらも、その手には強く力が込められていた。


「俺たちは、そういう奴らに踏みにじられた」



「だから——今度は俺がお前たちを踏みにじる」



 そう言い捨てソールズはさらにスキルを起動させる。

 街長の震えが強くなり、恐怖へと蝕まれて行きながら。

 最後に街長はソールズに対して呟く。


「芝居、がかった……ことを……!」


 その言葉にソールズはピクリと肩を震わせ。

 そして、街長は完全に恐怖へ縛られる。




 そうして、街長はさらわれた。


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