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ランド・オブ・リコンストラクション ~VRMMOで富豪ハーレムを目指したら《金の亡者》に!?~  作者: 海山 鍬形


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二十五話 ボロ儲け

 少し時間は戻り、ジンがスキルを覚える数十秒前。

 黒いゴーレムに殴り飛ばされてモンスターハウスのど真ん中に飛ばされた時だ。

 モンスターに囲まれながら一瞬の隙を見てジンは自身のステータスを確認する。


「もうほとんどHP残ってねぇ……!」



■  ■  ■

NAME:ジン

ジョブ:《金の亡者》Lv20


▽ステータス

HP:370/1500

MP:50/50

SP:100/100


STR:10

END:144

AGI:10

DEX:5

LUC:0


〈スキル〉

:〈収益〉Lv10(Max)

:〈亡者の換金〉Lv10(Max)


『所持金 315000ギル』

■  ■  ■



 リングとダンジョンへ行く前、一時間の間にジンは一度宿屋でログアウトしている。

 その時点でHPは全回復していたのだ。

 しかし1500もあったHPは、モンスターハウスに落とされてからの数分で既に400を切っていた。


 ジンがそんな絶望的な確認をしている時もリングは話を続けている。


「ですがただのピンチでは意味がありません。なので、もう一つ、《金の亡者》のデメリットについて推測を語ろうかと。100万ギルものお金を簡単に稼げるジョブということは——」


 ジンの意識はリングの話よりもモンスターの方に向けられていた。

 さっきのように攻撃を受けるとすぐに死んでしまうと考えたからだ。

 しかしそうしても四方八方から来る攻撃に耐えることはできず、迫るモンスターの群れにもうこれは死ぬのでは? とジンが諦めかけたが。


「——簡単に失う、ということでもあるのでは?」


 その言葉だけは強烈に意識へ響きジンの思考をかき乱した。


 失う? 何を? 金を? こんなところで? 何故? 残りHPは370。どうやったら? 早く続きを言え。言え!


「高耐久で死ににくいジョブ、ということはもしや死んだその瞬間にお金を全て失う——」





 死んだら?

 もう死にそうだが?





 ふざけんなと心の底から思った時、そのウィンドウが現れた。


【スキル〈亡者の激怒〉を獲得しました】



 それはリングの言う通りピンチに陥ったからなのか。

 それともジンの精神的興奮をシステムが読み取ったからなのか。


 詳しい事情は誰にも分からないだろう。

 だがジンはスキルを獲得したと理解し、反射的にそれを使用した。

 その瞬間にジンはモンスターから攻撃を受けた。


「ぐっ……!」


 四体以上から同時に殴られたが死んではいない。だが次の攻撃で死ぬかもしれない。

 そうすれば今の所持金30万以上を一瞬で失う。

 ジンは必死にまだ開いたままのステータスを確認し——驚愕する。



■  ■  ■


『所持金 45000ギル』

■  ■  ■



「…………金が」


 最初に注目したのは何よりも所持金だった。

 30万はあったものが5万以下まで失われている。

 いや、だが所持金を失うのは死んだときという話だったはずだ。ならばなぜ? あくまでリングの推測だった? でもダメージを受けても消えたことは。


 呆然とするジンに向かって蟹が鋏を振り下ろしてくる。


「……っんの!!」


 ジンは八つ当たり気味に短剣を鋏にぶち当てた。


 バキ、と。

 乾いた音と共に鋏が砕け散った。


「ギチチ……ッ!」

「え?」


 ジンは目を見開く。

 さっきまでは弾かれていた短剣があっさりと鋏を砕いたのだ。


「これ、は……このスキルか?」


 ジンは砕かれた鋏よりもさっきのウィンドウに注目してスキルの詳細を確認する。


〈亡者の激怒〉

 :アクティブスキル。

 :発動すると、1ダメージにつき1000ギルの所持金を失うようになる。

  代わりに発動中失った所持金の1万分の1、STR・AGI・DEXが上昇する。

 :効果時間 10分



■  ■  ■

NAME:ジン

ジョブ:《金の亡者》Lv1


▽ステータス

HP:100/300

MP:50/50

SP:100/100


STR:10(+27)

END:30

AGI:10(+27)

DEX:5(+27)

LUC:0


〈スキル〉

:〈収益〉Lv10(Max)

:〈亡者の換金〉Lv10(Max)

:〈亡者の激怒〉Lv1


『所持金 45000ギル』

■  ■  ■



「1ダメージで、1,000ギル失う……だから27万もギルが無くなって、代わりにステータスが27上がった、のか」


 《執着の短剣》一つ分ものSTRが上がったことで、鋏を容易に砕けたのだろう。

 その上昇ぶりを見たジンは。


「10分しか持たねーのに!!!」


 蟹に向かって短剣を振り上げて。


「27万も持っていくんじゃねぇぇぇぇ!!!」

「ギチチッ⁉」


 全力で短剣をぶっ刺した。

 鋏をも砕いたSTRはあっさりと蟹の甲殻を砕き光の塵へと変える。


 ジンにとっては目先のステータスより目先の金が重要だった。


 しかし一体倒したところで後続がすぐに迫ってくる。

 色々衝撃的なことはあったが未だモンスターたちはジンの周りを囲んでいるのだ。


「「「「ギギギギギギ——」」」」

「クソッ!! 全員ぶっ殺して金にしてやる!!」


 さっきまでの諦めなど吹き飛んでジンは自分からモンスターの群れへと飛び込んだ。


「シュルル……」


 タコが触手を鞭のように振るってくる。

 頭を狙って振るわれたそれをジンは屈んであっさりと避けた。


「ん……? なんかさっきよりも遅いな」


 ゆったりとした攻撃にジンは首を傾げる。

 そこにヤドカリの水弾が放たれる。視界に映るか映らないか、という場所から放たれたそれが何故かよく認識できた。


「あぶねっ」


 軌道まで推測し、水弾が右腕に当たるとわかったジンは腕をひっこめる。

 外れた水弾はジンの前のタコへと当たった。


「シュル……!」


 その隙にジンはタコへと一気に接近する。

 近づく間タコの動きは鈍く、ジンはあっさりと間合いに入ってタコの眉間に短剣を突き立てた。ズドンとクリティカルが入った音がする。

 それでもまだ反撃はなく、短剣を引き戻してもう一度突き刺した。

 すると、それもまたズドンと快音が響く。なんと二度目のクリティカルだ。


「シュゥ……」


 二度のクリティカルには耐えきれずタコが倒れた。

 その光景にジンは思い至る。


「相手が遅い、っていうか俺のAGIが高くなってるのか。しかも動きやすいしクリティカルも入りやすくなってる……こっちはDEXのおかげか?」


 モンスター相手に立ち回りやすくなった。

 ジンは文句を言ったが〈亡者の激怒〉はこの状況にぴったりのスキルだろう。


「でも所持金が減る!! 体が強くなっても心が痛い……!!」


 ジンが複雑な顔をしていると視界に金色の光が入ってきた。

 それはジンにとって見慣れたものだ。


「ギル⁉ なんで……あ、蟹か」


 蟹を倒した時にドロップしたアイテムが今〈亡者の換金〉で砕かれたのだ。


「これで少しは補填できれば——」


 ギルが手に吸い込まれたのを見てジンはもう一度所持金を見る。


『所持金  51000ギル』


「えっ」


 ジンは増えた額に目を疑った。


「ご、5万? さっきまで45000ギルだったから……ろ、6000ギル増えた?」


 〈亡者の換金〉で十五倍に増えるとしても、元の額は400ギルということだ。

 【怨霊鉱山】のスケルトンから出たアイテムが50ギル程度だったと考えると、あまりに高い。

 ジンはハッとリングの言っていたことを思い出す。


「そういえば……ここ、高位ジョブに就いたばかりか、基礎ジョブ二つ持ってるプレイヤーが戦うような場所って……」


 そう、【海越えの大燕洞】第二階層はジンにとって手ごわい敵だ。

 しかしそれはつまり——落とすアイテムも高いということだ。


「ふっ、ははっ……あっはっはっはっはっ!!」


 ジンは笑った。

 モンスターハウス中に響きそうなほどの声で笑った。

 そんなジンにさっきとは別の蟹が再び接近してくる。


「ギチチッ!」


 その攻撃は鋏を振るうのではなかった。

 口からブシューッと大量の泡を吐いてきたのだ。ダメージはないが体に纏わりついて動きを阻害する類の行動だ。

 さらに周りのモンスターたちも同時に動く。

 ヤドカリは水弾を吐き、タコは触手を振るい、青い粘液が装備を溶かす粘液をまき散らし、ゴーレムは上から叩き潰そうとする。


 それは偶然だった。

 モンスターたちは連携したような形でジンを包囲し攻撃した。

 周りは囲まれジンは逃げ出せないだろう。


 ——それが〈亡者の激怒〉を発動する前だったなら。


 ジンはヤドカリの水弾へと突撃し、それを殴って(・・・)弾いた。上昇した力と、速さと、正確さはそれを可能にする。

 それで包囲には空きができた。水弾を吐き出したばかりで動けないヤドカリへ駆け、その頭を短剣で貫いた。


「カチ、チ……」


 ヤドカリが倒れたのを見もせず、今度はタコへと向かった。

 振るわれる触手を見切って避け同じように短剣を突き刺す。だがクリティカルは発動せずタコは生きている。


「ギギギギ!」


 さらに後ろではゴーレムが拳を振り下ろしてきていた。

 そのままタコに構っていれば潰されるだろう。

 しかしジンは笑ってゴーレムの攻撃を直前まで待ち……当たる直前に横へ飛んで避けた。


「シュ……」


 逃げられなかったタコはゴーレムに潰され、避け切ったジンはゴーレムの手に飛び乗り、その体を駆けのぼる。

 そしてその頭にある、目の輝く部分に短剣を突き立てた。


「ギギ……!」


 ゴーレムは背が高い。その頭の部分に攻撃を届かせる敵はヤドカリの水弾ぐらいだ。

 つまり攻撃し放題ということだ。

 ジンはゴーレムの目を短剣でめった刺しにする。体力が高いようで多少時間はかかったが、ゴーレムは断末魔を上げ光の塵になり始める。


「よっ」


 ゴーレムが消える前にジンは頭から飛び降りた。

 そして落ちながら短剣を振り上げ。


「ギチッ⁉」


 下にいた蟹へ着地すると同時に振り下ろした。落下の威力も合わせて一撃で蟹は息絶える。

 撃破したうち、ドロップアイテムが出たのは二体だ。

 それを砕き、さらにその前に倒していたタコの分も合わせてギルが吸い込まれていく。


『所持金 68750ギル』


「ははは、1万と7750ギル……たったの三体で」


 ジンはぐるりとモンスターハウスを見回した。

 まだまだ——モンスターは尽きない。


 ジンはキラキラとした笑顔を浮かべた。


「ボロ儲けだ」





 〈亡者の激怒〉によりステータスを上昇させたジンはひたすらにモンスターを狩り始める。

 倒し、ドロップアイテムを砕き、金を手に入れていく。


 しかしいくらジンのステータスが上がったとはいえ無傷とはいかない。

 いくらAGIやDEXの上昇により動きが良くなっても、周りを囲まれているのだ。ずっと攻撃を避け続けるのはほとんど不可能だった。

 しかも〈亡者の激怒〉によってギルを失ったことで、《金の亡者》自体のレベルも下がっている。ENDで受けるような真似はできない。

 故にジンは少しずつその身にダメージを追っていき、やがて死亡——。


【スキル〈ライフ・イズ・マネー〉を獲得しました】


 ——する前にダメージが治っていく。


〈ライフ・イズ・マネー〉

 :パッシブスキル

 :ギルを手に入れるとHPが回復する。

  1000ギルで1回復。




 回復手段を手に入れたジンはさらにモンスターを狩り続ける。

 ギルを手に入れると〈ライフ・イズ・マネー〉でHPが回復し。

 回復したHPが削れると〈亡者の激怒〉によってギルを消費してステータスが上昇し。

 消費したギルは〈亡者の換金〉によって再び手に入れる。


 しかし〈亡者の激怒〉はまだレベルが低い。上がるステータスは50でストップした。

 さらに動き回るジンにも疲れが見えてきた。

 モンスターハウスにはまだまだモンスターが残っている。これを倒しきるような動きは——


【スキル〈血の涙〉を獲得しました】


 ——する必要が無くなった。


〈血の涙〉

 :アクティブスキル

 :戦闘中に失ったギルの分、相手にデバフを与える。

  1万ギルにつき、STR・AGI・ENDのどれかをランダムに1下げる。

 :効果時間 20分




 〈血の涙〉は消費したギルの数で相手のステータスを下げる。

 これまで大量にギルを消費したジンは動き回ることすらなく敵を倒せるようになった。


 だが、それはあくまで雑魚を相手にするときのスキルだった。

 〈血の涙〉のデバフは一定以上の強さを持つ相手には効かなかったのだ。


 モンスターハウスのモンスターを殲滅する直前、ジンの前に現れたのは巨大な半魚人だった。

 その半魚人はゴーレムを越える程の体躯を持ち、〈血の涙〉のデバフを弾き、ジンの攻撃力でもダメージを少しずつしか与えられない。

 それでもステータスバフもあり、熾烈な戦いを繰り広げてあと一歩というところまで行ったジンだが、最後に隙を見せて攻撃を食らってしまった。

 そこでようやくジンはゲーム内で初めての死——。


【スキル〈亡者の執念〉を獲得しました】


 ——その(きわ)ギリギリで生に食らいついた。


〈亡者の執念〉

 :パッシブスキル

 :所持金が100万以上の時、致命ダメージを受けてもHP1の状態で持ちこたえる。

  所持金の額によって持ちこたえられる回数が変わる。




 〈亡者の執念〉により攻撃を耐えたジンはボスに巨大半魚人に反撃。




 ——そうして、モンスターハウスは殲滅された。


最近遅くなっていてすみません。

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