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ショートショート7月~

藪医者

作者: たかさば
掲載日:2020/07/01

モニターに映る、レントゲン画像を見ながらため息を、一つ。

よろしくない影が見える。

検査の結果が、芳しくない。


「219番の方、どうぞ。」


マイクで呼び出すと、つやつやしたおじさんが診察室に入ってくる。

こんなに元気そうだけど…。

内臓は、あまり元気では、ない。


「どうだったかいな!結果は!!!」


おじさんの顔に、運命が二つ重なって見える。


病気治療をしないで、体力を消耗して尽きる運命。

病気治療をして、我の強い性格で周りを振り回して多大な迷惑をかけて散る運命。


今から治療を開始したら…間に合うけれども。

…間に合わせたら、いけないパターンの人だ、この人。

医者として、僕は治療をすすめなければ、ならないはずなのだけど。


「そうですね…。暴飲暴食が過ぎるきらいはありますが、おおむね…」

「結果を聞かせんかい!」

「今すぐどうという事はなくてですね…」

「じゃあなんともねえんだな?」

「そうですね今後…」

「なんや!そうか!わかったわ!じゃあな!!!」


僕の話を聞かず、おじさんは出て行ってしまった。

看護師があわてて結果の紙を渡しに、行った。

数値上は、そんなに問題のない、検査結果の書かれた紙。


頭を抱えたくなる、瞬間がある。


今、僕は頭を抱えている。


僕は、選んでしまった。


おじさん一人の人生と、おじさんが摘み取るはずの5人の人生。

おじさんを、見捨てる道筋を、選んでしまった。


今日僕が検査入院をすすめたら、おじさんは大病が発覚し、治療に専念し、回復する。

回復、するけれども。

75歳になったおじさんは、免許の更新時にもめた挙句、免許取り消しになってしまい。家族が止めるのを全く聞かずに、無免許で、無保険の車を運転し、事故を起こす。暴走事故は、五人の命を奪い、自らも人生を終える。賠償責任の在処を巡り、家族がバラバラになる。家族は闇に落ちる。


…僕が検査入院を勧める間もなく、おじさんは退室してしまったから。

そう、自分に言い訳をして。


「僕はなんで医者になっちゃったんだろうなあ…。」

「何言ってるんですか先生?多くの人の命を救うためだって言ってたじゃないですか。」


僕の意味深な呟きに、おじさんに検査結果の紙を渡してきた看護師が声をかける。

…そうだね、この病院に来た時にひらいてもらった歓迎会で、そんな偉そうなこと、いったね、僕。


僕は病気を治すという意味では、立派な藪医者だ。

治せる病気を治さない、ただの藪医者。


もう、医者ですらないのかもしれない。


「224番の人、呼んでくださいよ!まだ結構残ってるんですよ!!医者は先生しかいないんですから!ハラ括って早く全員診てください!!」


テキパキした看護師の檄が飛んできた。


そうだね、僕は、医者だったね。

この病院の、医者だったね。


病気で困っている人を救える、医者だったね。


…理不尽な運命で断ち切られてしまう命を救える医者は、僕しか、いない。

そう考えよう、そうしよう。


「224番の方、どうぞ。」


マイクで呼び出すと、少しやつれたおばさんが診察室に入ってきた。


…この人は、少し疲れているだけか。ふくよかな白髪のおばあちゃんが、おばさんに重なったから。


「なんか食欲湧かなくて。私悪い病気なんじゃ。」

「ただの食欲不振ですよ。」

「診察しないでわかるんですか?!」


おばさんに、訝しげな目を向けられた。

…しまった。こういうところだよ!!!


ろくに診察しないで適当なことをいう藪医者のレッテルが!!


「ええと!!触診しますね、ベッドに横になってください。」


僕は少々丁寧に、おばさんの腹部を触診し始めた。



僕は、藪医者なんかじゃ、ない!!


…はず。

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― 新着の感想 ―
[一言] 患者の未来が見える医者ですか。 医者免許は持っているのですかね。持ってさえ入れば、いい医者になると思うんですけどねぇ。
[良い点] 謎のブラックジャック感。 [気になる点] 未来が見えるんですね。診察後 『あー今日◯◯食べたら患者が死ぬー』 『歯磨きしなかったら未来が変わるー』 みたいな事ありそう。
2020/07/01 20:30 退会済み
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