第70話:カリンちゃんの憂鬱 その4
◆◇◆◇ カリン視点 ◆◇◆◇
今日は冒険者ギルドの仕事はお休み♪
なので、いつもより早起きして妖精さんたちと近くの森までやってきました。
お弁当をお母さんに作ってもらったので、今からお昼がちょっと楽しみです。
妖精さんたちは姿を消すことが出来るので、最近は街でも妖精さんたちといつも一緒♪
途中、ゴブリンの集団に襲われてちょっとビックリしましたが、妖精さんたちの敵ではありませんでした。
特に最近お友達になってくれた、ちいさな王冠をかぶった妖精さんがすごくて、ゴブリンの集団に向けて魔法を放つとたった一発の魔法で全滅させてしまっていました。
すごく頼もしいです♪
この妖精さんは他の妖精さんと比べてすこし体が大きくて、豪華なドレスのような服を着ています。一番よくお話するようになったので、この子だけ特別に名前で呼んでいます。
「クイちゃん。前にお願いしていた映像記録は上手くいきそう?」
いろいろと情報を集めてくれる妖精さんがいっぱい増えたんだけど、情報が増えて報告を聞くときに時間がかかるので、何かいい方法がないかクイちゃんに相談していたんです。
そしたら妖精族固有の魔法で幻を見せる魔法があるので、それを応用すれば映像を再現できるかもしれない。ちょっと実験してみるねって言われていたのです。
ちなみにクイちゃんは魔法音声とかいうものでお話も出来るんですよ!
今ではもうすっかり親友です!
≪いけそうだよ! ちょ~っと待ってね……。こんな感じでどうかしら?≫
「わぁ~! どんな感じになるのかしら♪」
ワクワクしながら待っていると、私の前に靄が立ち込め始めました。
そしてその靄は形を変えると、わずかな時間で何かの会場と思わしき光景を再現します。まるでミニチュアがそこにあるかのようです。しかも人まで動いてる!!
よく見ると、その開場の中心では貴族っぽいおじさん二人が何か言い合っているように見えます。
「すごい! クイちゃん、これって今起こっていることなの?」
≪そうだよ~。これは今起こってる光景だよ♪ 場所はトリアデン王国の王城の中ね!≫
すごいです! 今まではお話を聞くだけでしたが、これからは詳しく知りたい情報は映像として見せてもらうことができます!
「あ。でも……これって音は出ないのかな?」
映像はかなりリアルに再現してくれていますが、残念ながら音がないことに気付きました。
でもクイちゃんは私の前でくるっと宙を舞うと、大丈夫と微笑みました。
≪ふふふ。もちろん音も忘れてないわ。そっちは幻聴魔法でこうすれば……≫
クイちゃんが何やら呟くと、ちいさな魔法陣が追加されて今度は無事に音が聞こえてくるようになりました!
しかし音が聞こえるようになったことにお礼を言おうとした時でした。その聞こえてきた話の内容に、私はすごくすごく驚いてしまいました!
「えぇぇ!? コウガさんが女神様の使徒なの!?」
これは大変です!!
コウガさんは普通の冒険者で終わるような人ではないと確信はしていましたが、まさか女神様の使徒だなんて、さすがに考えもしませんでした!
勇者様もすごいですが、使徒様も同じぐらいすごいのです!
≪カリンちゃん、どうしたの? 魔法、何か失敗しちゃってた?≫
私がコウガさんのことに驚いて混乱していると、魔法がうまくいかなかったのかと勘違いしたクイちゃんが、心配そうに尋ねてきました。
「うまくいったよ! クイちゃんごめんね! そうじゃないの! 私の大事なコウガさんが女神様の使徒だったみたいなの!」
興奮してそう伝えたのだけど、でもクイちゃんは使徒が何か知らないようでした。
なので私はクイちゃんをはじめとした妖精さんたちに、この『女神様の使徒』という存在がどれだけすごくて尊いものなのかと、切々と懇切丁寧にこんこんとじっくり語り聞かせました。
≪うわぁ~! 使徒ってそんなすごい人なのね! カリンちゃん! これは今まで以上にしっかり見張っておかないといけないわね!≫
妖精さんたちもコウガさんのすごさをようやく理解してくれたようです。
これで益々監視にも身が入るでしょう。
「今まではコウガさんにランクアップしてもらえるように、こっそ~り上位依頼を回していたけど、これからはそれだけじゃダメですね!」
今までは将来が超有望な冒険者として、コウガさんたちに早くランクアップしてもらおうとAランクやBランクの依頼をこっそり斡旋していましたが、これからはそれだけではダメなようです。そもそももうこっそりする必要もないですしね!
これからはもっとコウガさんの周りも監視して、魔王の動向などをいち早く掴んでいかないと!
≪ん~? つまり、どうすればいいの? 何したらいいかしら?≫
クイちゃんも俄然やる気が増したようです。
身を乗り出して目をキラキラさせて私の周りを飛び回っています。
「そうね。まずは魔王軍の動向を監視していち早く情報を掴みましょう。これからはコウガさんの周りだけでなく、この国を中心に近隣諸国まで手を伸ばしましょう!」
≪わかったわ! それぐらい私の国の者たちに命じれば簡単よ!≫
さすがクイちゃんですね!
最近はもう妖精さんが何人いるのか数えきれなくなってしまっているのだけど、クイちゃんはすべての妖精さんを把握しているみたいです。
今もいつもクイちゃんの後ろに控えている精強な妖精さんたちに何か指示を与えています。
≪お待たせ! もうバッチリよ! これで魔王に関する情報はすべて私の耳に入ってくるわ!≫
「さすがクイちゃん! ありがとう!」
私はクイちゃんをつかまえると、ほっぺにスリスリしながら抱きしめます。
≪へへへ~♪ 私とカリンちゃんの仲じゃない。これぐらいお安い御用だわ!≫
私はもう一度クイちゃんのほっぺにスリスリしてお礼を言うと……。
「ありがと! それじゃぁ今日も『恒久の転生竜』名義の依頼をさっさと片づけてしまいましょう♪」
そう言って妖精さんたち五〇人ほどで、オークロードの集落殲滅依頼に向かうのでした。
「これから忙しくなりそうだわ!」
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