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【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~  作者: こげ丸
第一章 前半

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第20話:リベンジ

 足元に横たわるアシッドワイバーンをただぼんやりと眺めていた。


 竜や亜竜をはじめとする一部の魔物は、黒い霧になって霧散せずにそのまま亡骸を残す。

 だから亜竜であるアシッドワイバーンの亡骸が残ることに驚きはない。


 そこじゃない。


 このアシッドワイバーンはジルニトラが倒したのではないということ。

 つまり、オレが倒したのだ。


 しかも、先の戦いではあんなに苦しめられたのが嘘のように簡単に……。

 ちょっと放心してしまっても仕方ないだろう。


≪どうだろうか? 我の『神竜(・・)の加護』は?≫


「どうだろうかも何も、すごすぎて逆に実感がわかないんだが……」


 先日「ぜってーリベンジしてやる!」とか叫んだオレの決意を返して欲しい。


「わぁぁ! コウガ様、ギフトだけでなく近接戦闘もこなせるのですね!」


 目をキラキラさせてリルラが見つめてくるが、どう考えても『邪竜(・・)の加護』とこの武器のお陰なのでちょっと後ろめたい。


 ちなみに加護の正式な名はオレにしかわからない。

 なのでジルニトラに話を合わせている……。


「戦闘にはそれなりに自信はあったんだけど、オレだけの力だとついこの間アシッドワイバーン(こいつ)に殺されかけてるからな~。倒せたのはジルニトラに貰った『()の加護』と、この雷槍『ヴァジュランダ』のお陰だよ」


(あるじ)よ。その加護は生物本来が持っている肉体的な能力に対してかかるものだ。あれだけの動きはステータスに頼った戦いをするものには真似出来ない。誇ってもよい≫


 どういうことだと話を聞くと、魔物を倒してアップするステータスにかかるのではなく、鍛錬によって鍛えた肉体的な身体能力を底上げする加護ということだった。


「ふふっ。だそうですよ?」


 リルラが自分が褒められたようにご機嫌な様子で見上げてくる。

 母さんとの地獄の特訓が無駄ではなかったということがわかり嬉しいが、こういう正面から褒められるのは苦手だ……。


「そ、それにしてもこの槍、雷槍『ヴァジュランダ』はすごいな! オレ、詠唱魔法の適正がないから、奥義を使わずとも属性攻撃ができるのはすごくありがたい!」


 まるで長年使った武器(相棒)のように手になじみ、攻撃が属性攻撃となって雷の追加ダメージが入るうえ、一定確率で麻痺の効果がかかるというおまけ付き。


 さらに嬉しいことに黒闇穿天(こくあんせんてん)流槍術(りゅうそうじゅつ)の【雷鳴(らいめい)】を放つと、まさに(いかずち)となって放たれ、呆れるほどのパワーアップを果たしていた。


≪いい槍であろう? その槍は神様(昔の知り合い)が鍛えあげたものを宝珠と交換で譲り受けた物だ≫


「知り合いって?」


「ちょっと鍛冶の好きな神がおってな」


「うぉい!? それって神槍ってことじゃないか!?」


 神が創り出した武器を「()〇〇」などと呼ぶのだが、まさにその神槍だった……まじですか……。


 ちなみにジルニトラは有名な「竜の宝物好き」を地でいくドラゴンだそうで、次元収納という特殊な魔法の倉庫に、装備の(たぐい)から伝説に残るような宝石、素材まで誇張抜きで山のように持っているのだそうだ。


 今の時代の貨幣は持っていないようだが、軽く話を聞いた限りでも値が付けられないような物ばかり。おそらく国がいくつも(・・・・)買えるぐらいの資産にはなるだろう。


 ジルニトラ曰く集める(・・・)のが趣味であって手に入れたらもう興味は無くなるらしく、欲しければ全部やると言われたが、そんなの貰ったらダメ人間になる自信があるので必要な時に必要な分だけ貰うということでお願いをしておいた。


≪ところで詠唱魔法の適正とはなんだ? どのような魔法だ? 我は魔法神でもあるが、そのようなものは知らぬぞ?≫


 さらっと魔法神でもあるとかいうパワーワードが飛び出してくるが、いちいち驚いていては話が進まないのをこの数時間で学習したのでとりあえずおいておく。


 あれ? 何個置いておいた話題があるだろう?


「えっと、何かと聞かれてもどう答えたらいいのかわからないが、魔法を使うには詠唱魔法の適正がないと使えないというのがこの世界では常識だと思ってたんだけど……?」


 もしかして違うのか? と問うてみるが、話が通じていなさそうだ。

 すると、リルラが補足してくれた。


「ジルニトラ様はそもそも詠唱魔法と言うのをご存じないのではないですか? 確か詠唱魔法は、千年ちょっと前に人族の大魔法使い『コペルハーゲン』が、今で言う古代魔法を元に精霊魔法の祝詞(のりと)の効果を利用して編み出したと聞いたことがあります」


≪なるほど。我は一万年以上自我がなかったからな。その間に編み出された魔法の行使の仕方なら知らなくて当然か≫


「何か二人の話を聞いていると、自分がすごくちっぽけな存在に思えてくるよ。主に時間経過的に……」


 オレが苦笑しながらそんな感想を漏らしていると、ジルニトラからとんでもないことを聞かされる。


≪何を言っておるのだ? 主は我をテイムして神竜(・・)の加護を受けたのだ。もう不老になっておるぞ?≫


「は?」


≪ん?≫


「まぁ♪」


 三者三様。一人普通に喜んでいる子もいるが、それより今ジルニトラはなんて言った?


「……す、すまないが、もう一度言ってくれないか?」


 ちょっと混乱しているようだ。まさかな。そんなはずは……。


≪だから神竜(・・)の加護の効果により、老いて死ぬことはなくなったと言ったのだ。怪我で死ぬ可能性はあるが、それも我が付いていればまずあり得ぬだろう≫


「謹んで加護を返上したいと思うのだが……?」


 寿命がすこし伸びるぐらいなら嬉しいが、永遠というのはちょっと……。


≪我のテイムを解かなければ無理だ。あ、先に伝えておくが、テイムを解かれると我はまたあの呪いに侵されることになるので断固として拒否させて頂く≫


「まじですか……」


 さすがにあの知性を持たない獣のような状態に戻すのは危険すぎる。

 将来、世界を滅ぼしかねない……。


「良いことではないですか! 共に悠久の時を生きましょう♪」


 リルラがすごい喜んでいるが、一旦この問題は置いておこう。

 問題の先送りとも言う。


 何個先送った?


「と、とりあえずすぐに困るようなことではないし、この件はいったん置いておこう……。それで話を戻すけど、詠唱魔法の適正ってのは理解できた?」


≪うむ。今、古代魔法(千里眼)でどのようなものか見てみたが、何とも効率の悪い魔法だな。これなら主は『竜言語魔法』が使えるようになったのだから不要だろう≫


「え!? 魔法が使えるようになるのか!?」


 この後、竜言語魔法の習得難易度の高さを知って打ちひしがれることになるのだが、それでも魔法が使える可能性がでてきたことは素直に嬉しかった。


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【新連載】軽トラの荷台にダンジョンができました★
車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので
快適探索者生活を始めたいと思います
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