第96話 白熱!千裕vs純冷
[鎖使いKnight]は他の鎖使いがいるときパワープラス5000、フィールド[CHAIN ROAD]の効果でパワープラス5000。スズエの能力で更に3000がプラス。元のパワーが7000なので合計20000での攻撃である。
「ローレライと[祈りのハレルヤ]でシェルター」
純冷の[Rainy]は[イリュージョナルスター]のアブソープションにより、合計パワーは9000。普段ならファーストアタックは受けるところだが、後にウォシェとスズエが控えている。センターでファーストアタックをするのは珍しい行動だ。普通はサイド、センター、サイドの順でする。両サイド整っているのなら尚更だ。何故ならリプレイコマンドを引いたとき、アップするアーミーがいないことになってしまうからだ。
だが、純冷はその理由を察していた。
故に、ローレライとハレルヤの合計20000シェルターでコマンドが出ても通らないようにする。
千裕はコマンドチェックを行った。
「クリティカルコマンドゲット」
やはりか、と純冷は思う。
コマンドはデッキに十六枚まで入れられる。うち、ヒーリングコマンドは四枚が上限だ。では残りの十二枚はどのようなコマンドで編成するか。
クリティカル、ドロー、リプレイを四枚ずつ編成するバランスタイプ。リプレイを多めに入れることで、波状攻撃を狙うタイプ。ドローを多めに入れて手札を万全にする防御タイプ。そして、クリティカルを積んで一撃を重くする攻撃的なタイプだ。
千裕のデッキにはフィールド[時止まりの古城]が入っており、そのピンポイントアビリティを考えると、クリティカルコマンド持ちである奴隷アーミー[囚われの姫君ディーヴァ]は欠かせないであろう。その上でおそらく[鎖使い]のクリティカルコマンドも入っているであろうことを考えるとコマンド構成は超攻撃的なものとなる。
入っているクリティカルコマンドの数が多ければ、コマンドチェックでクリティカルコマンドが出る確率は高くなる。そのためにリプレイコマンドを抜いている可能性が高いと考えたのだ。
最初からセンターで攻撃し、コマンドのパワーアップでも通らないシェルターをされた場合、サイドにパワーを振ることができる。何ならクリティカルのおまけつきだ。
ブレイヴハーツは五ダメージ受けると終わる。クリティカルを増やすのは早く終わらせるための簡単な方法の一つだ。
更に質の悪いことに、千裕のアーミーは序盤からパワーが高い。20000シェルターはどこかで消費しなければ、純冷はこの一ターンで一気にリーチをかけられるところである。
「パワーとクリティカルは共にウォシェへ」
「[祈りのハレルヤ]のアビリティ。シェルターからチャームへ移動」
「ウォシェでアタック」
「アンシェルター」
純冷に二ダメージが入る。
「リバースバックアップオープン! [呪いのアレルヤ]」
オープン条件は一度の攻撃で二ダメージ以上受けることだ。クリティカルを積む相手やクリティカル上乗せアビリティを持つ相手に有効なカウンターである。
「相手のアップしているアーミーがいるなら、そのアーミーのパワーマイナス5000。スズエを指定!」
アレルヤは奴隷アーミーなだけあって、そのアビリティは強烈である。防御力が強固なのが青属性の特徴であるが、センターのパワーを上げるのではなく、相手のパワーを下げるというのがなんとも言えない。
「チャームゾーンに[祈りのハレルヤ]があるなら更にマイナス5000」
これでスズエはパワーマイナス10000を食らい、攻撃が純冷のセンターに届かなくなる。
「なるほど、それで最初にシェルターってわけね」
これはチャームゾーンのカードを参照することでより強力な能力を発揮するアビリティだ。相手のパワーを削ぐことで攻撃を無効にする。
純冷は前列にアーミーを出していないから、千裕のアタックはこれで終了である。
だが、純冷のバックアップはもう一枚ある。
「リバースバックアップオープン。[サラマンドラ]。サラマンドラは通常、特定のフェアリーアーミーのパワーアップ要員だが、指定のアーミーがいないとき、その矛先は相手へ向く。リバースバックアップを一枚指定して破壊!」
「破壊に指定されたことで、リバースバックアップオープン。[藍染AIZEN]」
青属性にも属し、青属性のAIZENとは夫婦関係という特殊なカードは、絆を嫌う。
アブソープションのパワーを無効化する。強力なカードが開かれたが、千裕は苦い顔をしていた。
純冷の[Rainy]はチャームゾーンにカードがあるとき、常にパワーアップするのである。先程チャームに入ったハレルヤがいい仕事をしている。アブソープションのパワーが奪われても、スズエのパワーが[Rainy]に届くことはない。
「ターンエンド」
「ターンアップ、ドロー」
「何? 今度はあんたたちがブレイヴハーツしてんの!?」
純冷にターンが回ったところで闖入してきたのはアミである。後ろからおずおずと魔王もついてきていた。
「アミ、どうしたんだ?」
「生意気にもご本人様のいるところで曲をカバーする輩がいたもんだから、進捗を見に来たのよ。それがどうしてカードゲームになってるわけ?」
意味わかんないとアミは首を横に振る。
「ブレイヴハーツ馬鹿は昴だけかと思ったわ」
「私には弟がいてな」
純冷はカードを一枚掲げながら告白する。
「こうやって、二人でカードゲームをすることはよくあったんだ」
エボルブシーンを飛ばしてチューンシーン。純冷が出したのはフィールドカードだ。
「フィールド[水霊の集い]をセット。[雨の子サララ]をアブソープション。イリュージョナルスターはアビリティでチャームへ」
千裕が顔を歪めた理由がこれだ。白のAIZENの能力は相手のターンにまで及ぶが、新たにアブソープションされてしまうと無効になる。つまり、AIZENを開かされ、無駄打ちさせられたことになるのだ。
AIZENは山札に戻ったから、コマンドとして出てくる可能性があるのが唯一の救いである。だが、それを除いてしまえば、純冷の掌の上で踊らされていたも同じだ。
フィールドの能力で純冷は一枚ドロー。
「サララのアブソープションアビリティ。アブソープションしているアーミーがフェアリー、尚且つチャームゾーンにカードが一枚以上あるなら、山札からフェアリーアーミーを一体アドベントできる」
そうしてサイドに呼ばれたのは、正規兵のローレライである。
「[礼讃の雨歌ローレライ]。青属性アーミーが現れたことにより、[水霊の集い]の効果で一枚ドロー」
雨の降るフィールドで朗らかに歌う少女。彼女の歌は雨を呼ぶ。
純冷がターンを進める間に盤面をチェックしたアミがぽつりと呟く。
「もしかして、千裕が圧されてる?」
そう。白属性で未だ黒星は魔王に与えられた一つのみのブレイヴハーツテイカーである千裕が、純冷にいいようにされているのである。
「バトルシーン、サラマンドラのバックアップを受けたローレライの攻撃! ローレライはセンターが青属性のフェアリーアーミーなら、アタックしたとき、パワープラス3000」
「アンシェルター」
千裕のダメージコマンドはブランク。
「アレルヤの支援を受けて、[Rainy]の攻撃!」
アレルヤはハレルヤがチャームにいることでパワーアップしている。
「アンシェルター」
「コマンドチェック。リプレイコマンドゲット! ローレライをアップ、再攻撃!」
コマンドのパワーも加わったことで、ローレライのパワーは[鎖使いKnight]にも届く。
が……
「ウォシェのアビリティ。シェルターサークルへ移動」
同パワーなら一枚のシェルターで事足りる。ウォシェは志願兵ながらに正規兵と同じくシェルターサークルに移動する能力を持っていた。これが千裕がウォシェを前列に置く理由だ。
攻撃を防がれ、純冷は笑う。
「ふっ、簡単に追い越させてはくれないか」
ダメージは二対二。千裕にターンが回る。




