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Brave Hearts  作者: 九JACK
獣王国編
95/127

第92話 憧れのバトル

 [Knight]

 [BURN]

 人間の騎士とその数倍もの巨体を誇る炎竜が相対する。

 昴は驚いていた。

「千裕、そのデッキ……」

 どういう理由かはわからないが、千裕のリバースメインはいつも[鎖使い(チェーンマスター)Knight]で、[Knight]が出てくると千裕から裕弥に人格が切り替わっていた。裕弥のデッキを自分が使うことはできない、と昴に教えたのは千裕だ。

 千裕は何か覚悟を決めたのか、悲しそうだったり、寂しそうだったりはせず、好戦的な色の目で昴を見据える。

「俺の先攻だ。ターンアップ、ドロー」

 戸惑いも迷いもなく、カードを展開していく。

「フィールド[CHAIN ROAD]をセット。セット時アビリティ発動」

 [CHAIN ROAD]は鎖使い(チェーンマスター)シリーズの補助作用が強いフィールドのはずだ。それに、セット時アビリティは初めて聞いた。

 千裕がアビリティの説明を始める。

「[CHAIN ROAD]がセットされたとき、センターのアーミー名に[鎖使い(チェーンマスター)]が入っていない場合に発動される。センター[Knight]と同じ名前を含むアーミーカードを山札から探し、公開する」

 千裕が山札から探し出したのは[鎖使い(チェーンマスター)Knight]だ。やはりどちらのKnightも入れているらしい。

「公開したアーミー名に[鎖使い(チェーンマスター)]が含まれている場合、そのアーミーをチャームへ送ることで、センターは[鎖使い(チェーンマスター)]としても扱われる」

 なるほど、それでただの[Knight]を[鎖使いKnight]として扱えるようにして、[CHAIN ROAD]の能力も補えるというわけだ。

「リバースバックアップを一枚セットして、ターンエンド」

 昴にターンが回る。

「ターンアップ、ドロー。チューンシーン、[竜騎士アレン]をアブソープション!」

 横で見ていたアミと純冷が驚く。

 普段の昴なら、フィールド[炎竜の咆哮]か[荒れ果てた荒野]をセットしたり、[エッジスナイプドラゴン]をアブソープションして、炎竜を呼ぶ連鎖で手札消費をせずに、盤面を整える戦法を使う。ヒューマンアーミーを使っても、それは[竜の友]のはずだ。

 千裕も虚を衝かれたようだ。

「リュートから何か教わったの?」

「そうそう。竜騎士デッキかっこいいから、一回使ってみたかったんだよね。でも竜騎士で揃えられるほどカードは引けなかったからさ」

 でもターシャからブースターパックもらえたでしょー、と昴はからから笑う。

 純冷がはっと気づいた。

「私が引いたカード……」

「そうそう! 純冷の方に出る赤のカード、竜騎士シリーズが多かったんだよね。でも、今のところ、俺たちが混色デッキを作る意味はブレイヴハーツにはないから、俺のに出た青のカードを純冷に渡す代わり、純冷が出した赤のカードをもらったんだ」

「どういうこと? パックは自分の属性しか出ないはずでしょ?」

 アミが首を傾げるのに答えたのは、千裕の後方にいつの間にか佇んでいた魔王だった。

「デッキ譲渡があっただろう。その影響だ」

「タイラントのときのあれ?」

「ああ、私もそれが原因だと考えている」

 元の世界のカードゲームでは、自分の扱う属性のカードが出なくて苦労するというのはカードゲームあるあるだ。故に、目的のカードが出るまで延々とパックを買ったり、いっそ箱買いしたり、と様々な手法を取る者が存在する。それがトレーディングカードゲームというものだ。

 なかなか目的のカードが手に入らなくて、諦めて手元にあるカードでデッキを作ってしまうというのもざらにある話である。

 また、今では規制されているが、元々友達同士で互いの欲しいカードを交換するという慣習もあったため、カードゲームの中でもトレーディングカードゲームは人気だった。他にカードゲームと言ったら、トランプくらいしかないので、トレーディングカードゲームは子どもたちの心を掴んだ。

「姫巫女は運命操作の能力を持っている。ヘレナの力は歴代で最高峰と言われるほど強い。異世界の人間を召喚できるレベルにな」

「え、でもアイゼリヤは異世界と関わっちゃいけないんでしょ?」

「ああ。だが、世界は一つではなく、無数に存在する。それら全てが衝突して一つになったり、交差したりしないようにするのは至難だ。並行世界と呼ぶが、同時にいくつも存在しているだけで、平行に並んでいるわけではない。この話は長くなるが、聞きたいか?」

「うん、後でね! [竜騎士サゼム]をアドベント! サゼムのアビリティで、山札の一番上を確認、炎竜ならアドベントする」

 魔王の話をさらりとかわして、昴はターンを進める。竜騎士シリーズは基本的に黄属性に似た相手のカードの破壊アビリティであるが、中には昴の普段の手法である味方を呼ぶ連鎖を築くものもある。

 昴が山札の上一枚をめくる。出たのは──志願兵[火種の竜アラク]

「アラクをサゼムの後方にアドベント! アレンのアブソープションアビリティ発動! ターン中、炎竜か竜騎士がアビリティでアドベントされたとき、センターにパワープラス5000」

「うわ、竜だけじゃなくても連鎖するのね」

 アミが滅茶苦茶嫌そうな声を出す。隣で純冷が淡々と告げた。

「味方を呼ぶことで互いを強化するのが赤属性の特徴だ。竜騎士シリーズの破壊アビリティも仲間が増えていくごとに強化されていく。ゼウスが使っていたコトカタシリーズも、仲間を集めることが肝だからな」

「まあ、主人公っぽい能力よね。仲間を集めて協力してー、なんて」

「強い個の力より強い集団の力の方が強力なのは、まあ当たり前だからな」

 ある意味、赤と白は対照的な属性かもしれない、と純冷は考察する。千裕の[Knight]は一人でいることで強いという象徴のカードだ。

 [Knight]のセンター時アビリティはこうだ。センター時、アブソープションされていないとき、このアーミーのパワープラス5000。このアーミーはアブソープションできない。──アブソープションもエボルブもしないことで孤高の強さを得る、白属性の一つの特徴だ。ただし、仲間を嫌うわけではない。

「シエロとは随分違う戦闘スタイルなのよね」

「シエロとブレイヴハーツしたことがあるのか?」

「一度ね。シエロはどっちかっていうと昴のスタイルに近いわよ。仲間を連鎖させることで相手の動きを封じていく感じ」

 アミと純冷が話し合うのをよそに、昴のターンが進んでいく。

「リバースバックアップを一枚セットして、バトルシーン。サゼム!」

「アンシェルター」

「[BURN]!」

「アンシェルター」

「コマンドチェック、リプレイコマンド! サゼムをアップしてパワーもサゼムに。再びサゼム!」

「リバースバックアップ、オープン」

 出てきたのは[夢見る鎖使い(チェーンマスター)ホリー]

「ターン中同じアーミーからの二回目の攻撃を宣言されたときにオープンする。オープン時アビリティ。相手のバックアップにあるカードを一枚指定し、次の相手のターンのアップシーンでアップできないようにする、またはリバースバックアップとしてオープン条件が整っても一度目はオープンできないようにする」

「うわ、えぐ」

 単体パワーの高い千裕の[Knight]相手に、フィールドによるバフなしで単体攻撃は通りにくい。そこへの追い討ちでバックアップを機能させられなくなるのはパワーが手薄になる。

 リバースバックアップのオープンを一度無効にされるのもなかなか手痛い。二度目に条件が整うのがいつかわからない上、カウンターを阻止されることとなる。しかも、破壊に指定されるわけではないので、破壊に指定されたときにオープンするリバースバックアップに引っかからない。

「リバースバックアップを指定」

「OK。まさかリプレイコマンドを読んでくるなんて」

 そう、このホリーのアビリティはオープン条件が整わなければならない。[同じアーミーに攻撃される]というのはカードのアビリティか、リプレイコマンドでもなければ発生しない条件である。

 条件が厳しい分、アビリティが強力なものとなるのだが、永遠にオープンできない可能性の高いカードをリバースバックアップにセットするというのはなかなか胆力のいることだ。

「普段なら、昴はクリティカルコマンドを積んでるから、そういうメタ読みでこのカードを仕掛けることはなかった。でも、昴は滅茶苦茶うきうきしてたから、これは何かあるなって思ったんだ」

「竜騎士シリーズは波状攻撃も特徴の一つだ。竜騎士のコマンドはクリティカルもあるが、リプレイコマンドが多いのも特徴。ここは千裕の読み勝ちだな」

「いや、雰囲気から察するって何……?」

「……と、サゼムの攻撃はシェルターするよ」

 いくらコマンドの効果でパワーアップしているといっても、コマンドチェックのないサイドの攻撃である。[Knight]の単体パワーが高いのも手伝って、バックアップがあるときより手札の消費が少なくて済むのだ。

「ターンエンド」

 千裕は二ダメージ。千裕にターンが回ってくる。

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