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Brave Hearts  作者: 九JACK
獣王国編
88/127

第85話 ターシャの考え

 一方。

「そういえば、近々ブレイカーアミのライブがセアラーであるんですってね」

 黄の街オールのとある喫茶店にて、天使が微笑みを振り撒いていた。まあ、人間の姿なのだが。

「セアラーって激戦区でしょ? ずっとブレイヴハーツが行われていて、雷だの洪水だので荒れてるって」

「そんな場所でコンサートとはさすがブレイカーアミよね。イカれてるわ」

 店内での話題は専ら、アイドルブレイカーアミのデモライブのことだった。アミがライブを行うのはエシュ以来、ということもあるが、やはり会場が危険地帯とされているセアラーであることには注目がいっているようだ。いい意味でも悪い意味でもイカれているにはちがいない。

 これはわざわざここに出向く必要はなかったかしら、とターシャは給仕をしながら思案する。

 アミとハンナの指示により、ライブで演奏する者以外は各地でライブが開かれるという情報を広めてほしい、ということで、各々散った。ターシャは元々隠れ蓑にしていたオールの喫茶店で給仕がてらライブの話題を客や店員に振っていた。

 ただ、思った以上にブレイカーアミの名が世界に轟いている。話題を振れば水を得た魚のように人々はぱくぱくと喋り出すのだ。

 アミへの注目度もそうだが、ターシャはアミの付き人であるハンナの働きもあるだろうと考えていた。

 というか、ハンナのことは正直怪しんでいる。[こんな人間いただろうか]と。

 ターシャは天使で、中央神殿の中でもそこそこの地位に立つ。故に、世界の状況を他の天使より把握できる。命というのは天からの賜物だからだ。

 生まれた命と死んだ命は高貴な書物に書き込まれる。それは神が世界のバランスを整えるために必要だからだ。死んだら死んだ分、次の命を贈らなければならないし、増やしすぎてもいけない。

 ターシャはこうして下界に降りて命の生誕を見届ける役割も担っている。監視がメインだが、ついででも重要な役割である。

 その高貴な書物に名前を記し、確認を行うことがあるのだ。命が正しく生まれ、育まれていることを。

 だが。

 ターシャの記憶の限りだが、[ハンナ]という人間がここ最近生まれて記された記憶がない。それは、ターシャがたまたま見ていないだけなのかもしれないが……どうも引っ掛かる。

 異世界から来たアミをサポートしていると聞いたが、ヘレナが絡んでいるのではないか、という可能性を踏まえるとかなりきな臭い。

 仮に、天使や神以外の者が、命の生誕を操作したのだとしたら……それはもちろん重罪だ。そういう領域に至っていい者は限られている。天使でさえ、位が違えば高貴な書物にすら触れられないのだ。命の生誕というのはそれほどまでに重要なものなのである。

「……ちゃん、ターシャちゃん」

「あ、はい」

 店主に呼ばれていた。はっとして向き直る。

「大丈夫? 色々あってバタバタしてるけど……」

「大丈夫です。ええと」

「三番テーブルさんの注文の品、できたから運んでちょうだい」

「かしこまりました」

 お盆に揃えられたそれを持ち、ターシャはいけない、と意識を改めた。

 今は仕事中だ。あまり気を散らすわけにはいかない。

 お待たせ致しました、とテーブルへ持っていきながら、尚も考える。やはり、とんでもないことをヘレナが仕出かしているような気がするのだ。

「注文お願いします」

「ただいま参ります」

 駄目だ。職場では考え事ができない。帰ったら考えよう。

 ところで、あの子たちは大丈夫なのだろうか、と考える。あの子たちとはもちろんアミも含めた召喚された五人である。うち一人は魔王に体を乗っ取られているというとんでもない状態だが、むしろそれはいいことなのかもしれない。

 ターシャの脳裏によぎったのは、ヘレナからの遣いに利用されて、いいように扱われることだ。これ以上、事を掻き乱されるのはよくない。

 そこまで考えてから、ふと、心が平坦になった。

 思い返せばそんな心配はないのである。アミは異世界なのもお構い無しにアイドルとして自分を売り出すし、純冷に至っては指名手配も厭わずマイムの頑固エルフたちに喧嘩を売る。昴はタイラントは許せないがアルセウスを受け入れる、そして頑固という強い意志を持って行動できる人物ばかりだ。あんなのがそう易々と他人に操られるわけがない。

 なんだが心配して損したような気分だ。

 溜め息を吐きたいレベルの異世界人の自由さに呆れながらもターシャはほっとして、仕事に集中するのだった。

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