第72話 精霊王
「コールアビリティ……ね」
ナターシャが頷く。ブレイヴハーツの五属性が、願いの下に作られたというなら、確かに、黒属性にコールアビリティがあるのは頷ける。
死んでしまった人を蘇らせたい……決して叶わないとわかっていながら、そう願う人は跡を絶たない。それがどうにもならない願いであるが故に。
「他の属性も、こうして当てはめていくといい」
「え、そうなの?」
ナターシャは昴と純冷の言葉に耳を傾ける。
「青属性は守りが固い属性。それは精霊王が精霊王国を守ろうとしている意志が反映されているんじゃないかな?」
「精霊王がエルフたちを大事に思っている、ということ?」
昴が苦笑いする。
「そんな人間的な感情があるかはわからないなあ。だって精霊王だし」
「精霊王がどんなお方か知っているような口振りね」
ナターシャの言い様に、昴はこてんと首を傾げ、純冷が渋い顔をした。
「どんな方もそんな方もこんな方でしょ」
「え」
ナターシャは昴に示された方を見て固まる。気まずそうに純冷が立っていた。
「お前は私を何だと思ってるんだ」
「ん、気難しくて使命感の強いお姉さん」
「気難しいか?」
昴の表現に眉を寄せる純冷。しかしナターシャは納得した。
「精霊王は頑固なことで有名よ。それに、属性対応するなら、スミレに精霊王が宿っているのよね?」
「そのはずだよ」
そこの認識については純冷も異論はないらしい。ただ、「頑固」と言われたことが引っ掛かっているようだ。
「……私はそんなに頑固か?」
「「え」」
ナターシャと昴の声が重なる。予想外すぎる純冷の反応に驚いたようだ。
「頑固じゃなきゃ何なの?」
「純冷が頑固じゃなかったら世界中の誰もが頑固じゃないよ」
随分な言われ様だ。純冷は頭を抱えた。
それはそうと、と昴は話を続ける。
「精霊王の役目って確か、エルフという一族の管理だったよね」
「そんなことまで知ってるのね……」
ナターシャはもう驚くとかそういうのを越えて感心してしまった。下手をするとこの子どもたちはアイゼリヤの民よりアイゼリヤに詳しいかもしれない。
精霊王の役目は昴の言う通り、エルフの管理だ。が、正確には、「魔法を自在に扱える一族の管理」「魔法システムの管理」である。
前者はタイラントのような人間史上主義者からエルフという民を守る意味もあった。魔法を不気味な力ではなく、受け入れてもらうために[精霊王]という立場を使って、[魔法]が自然なものであるように繕ったのだ。
魔法は精霊から与えられる特別な力。そういう認識をアイゼリヤに広めるために、精霊王は[精霊王]と名乗ることにしたという。
勿論、魔法を使えるのはエルフだけではなくなっていく。ただ、魔法に長けた一族としてエルフの存在を世界に受け入れさせる。それが精霊王の第一の目的だった。
魔法の管理はそれに付随したものだ。エルフ以外が過ぎた力を持った場合、その力を正しく行使するための導き手として精霊王が存在する。
「……けど、確か、精霊王国が建設されて、精霊王はエルフの国から出られなくなったんだよね……」
何とも言えない部分である。
「まあ、エルフは魔法を使えることを誇りに他種族を差別していたからな。精霊王は神聖なものとして扱われ、祠のような感じで、エルフたちの意志が自然に精霊王を閉じ込めたのだろう」
ナリシアやアリシアが聞いたら微妙な顔をしそうだ。
エルフも外界との隔絶を望み、蒼き森で境界を敷いて、鎖国のような状態になった。
「エルフはそのためで引きこもり種族だのと揶揄されているのだったな」
「エルフそのものが差別されてしまうのもわかるよ……」
ナリシアが蒼き森の守護者になってからは開けてきたようだが……
「そういえば、精霊王の召喚、なんてできるのか?」
純冷はふと、アリシアやナリシアと出会ったときのことを思い返した。
「前も言ったけど、異世界からアイゼリヤへの召喚は許されていないの。精霊王も異界の存在だから、アイゼリヤに召喚するのは禁止」
「禁止ということはできるのだな」
「う……誰もやったことないと思うけど……」
「呼んだ?」
「ふえ!?」
突然の声にナターシャが驚く。ナターシャの真後ろにその人物は立っていた。
精霊王召喚のため、殺されかけたアリシアてある。




