第40話 赤vs青
「Brave Hearts,Ready?」
「「GO!!」」
「[異形の戦士 アレス]」
「[Rainy]」
合図と共に広がったフィールドは脇に川の流れる土手。川の反対脇には民家が並ぶその光景に純冷は引っ掛かりを覚えた。アイゼリヤらしくない。
異世界めいていない、懐かしい景色。
何故元の世界の景色なんだ。
純冷の中に疑問が生じる。その中にあまりにも不似合いな自分の分身たるアーミーが現れれば尚のこと。
水が人の形を取ったような淡く青色に輝く妖精アーミー[Rainy]。
そのRainyと対峙するのは腕だけが人間の屈強な男のものである異形の竜人。それこそがタイラントのリバースメインアーミー[異形の戦士 アレス]だった。
「ちょっと待ちなさい!」
タイラントのアーミーを見、声を上げたのはターシャ。そのオレンジ色の眼差しには怒りの色が少し混じり、疑心に彩られていた。
タイラントを睨み付けて言い放つ。
「タイラント、あなたはブレイブハーツのカードを持つことを許されていないはずよ。そうでなくとも、あなたが赤属性を持てるはずはないわ」
「天使様? 何を根拠にそんなことを仰いますか」
惚けるつもりなのだろうタイラントはうっすら口元に笑みを浮かべる。神経を逆撫でするような嘲りの笑み。
ターシャの目線が鋭くなる。
「あなたは一度ブレイブハーツをするために黄属性と契約を結んだ。一度契約を結んだ属性と違う属性のデッキを使うことはできない。これはヘレナ姫が当初から設定していたルールよ。
それにあなたは一度、ブレイブハーツの魔法を悪用した。そのため、ブレイブハーツができないよう、中央神殿の管理下にあるこの城に投獄した。黄属性のカードも没収したはずよ」
けれど、タイラントは今、赤属性のカードを持ち、ゲームを始めた。
「ナターシャ、魔法を悪用したとはどういうことだ?」
「今は制限がかかっているけれど、以前はブレイブハーツ以外でも自由に使えたのよ、魔法」
今もブレイブハーツ以外では使えるのだが、と振り返り、純冷は気づく。
「危害を加える目的でも、使えたということか」
「そうよ」
現在のブレイブハーツの魔法は危害を加える目的以外でならゲーム以外でも自由に使える。純冷がカホールで氷壁を作り出したように。
しかし、氷の剣やら水圧の剣やらといった武器の類にはならない。おそらくタイラントの[悪用]が原因で制限がかかったのだろう。
それにしても、以前は黄属性だったとは。属性変えができないというのは、純冷もアルーカから説明を受けている。だが、今実際にタイラントが使っているのは赤属性だ。一体どうやって……
「別に良いではないですか。我輩がどのような属性を扱おうと。ゲームはもう始まっているのです。天使様には最早口を挟む隙などありません。どうぞご観戦ください」
タイラントは一枚ドロー。エボルブを飛ばし、チューンシーンに移行。
「[エッジスナイプドラゴン]をアブソープション。アビリティで山札の一枚を確認。……む、竜ではない」
ならばアドベントはできない。
「が、アレスのアビリティ。カードアビリティで山札の上を確認したカードが竜人アーミーならば、アドベントできる」
アレスのサイドにアドベントされたのは今度は顔だけが人間のものである竜人。[異形の戦士 ヘルメス]。
次いでタイラントはフィールド[赤の狩場]をセットし、ターンを終了した。
純冷のターンである。
「ドロー。チューンシーン、フィールド[水霊の集い]をセット。[イリュージョナルスター]をアブソープション。フィールドアビリティで一枚ドロー」
純冷はそのまま攻撃に移ろうとしたのだが、ふと脳裏によぎる姿があった。
真っ直ぐな目をした自分と同い年……中学生くらいの少年。
紅月 昴と言った。赤属性使いの異世界人テイカー。
どういう偶然か、布陣が彼と戦ったときと同じだ。だからか、昴との対戦を純冷は思い出す。
まだ始めたばかりで、アイゼリヤで対戦するのは純冷が初めてだと言っていた。青属性を相手するのは初めてだと。
……ん?
待て、今何か重要なことを思い出せそうだ。
「アルーカは赤属性だったし」
「アルーカに会ったのか?」
あのときは不思議に思わなかったが、アルーカは複数の属性を使いこなす[七色のハーツテイカー]だ。
タイラントも同じなのか?
考えながら、純冷は自分のセンターをダウンする。
「Rainy、イリュージョナルスターでアレスを攻撃」
昴はどうしているだろうか。
はい、次回は昴視点に戻ります、って、ええっ!?




