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Brave Hearts  作者: 九JACK
セアラーデモライブ編
124/127

第121話 おどろおどろしく

「[地獄の門番Hell]にエボルブ」

「エボルブするのか」

 純冷が驚くのに対し、昴とアミは表情を険しくする。

「驚くべきはここからだよ」

 アブソープションのシステムがあるため、ほとんどのテイカーがエボルブをしないことから、エボルブすること自体が珍しくなっているが、黒属性の真価が発揮されるのはここからだ。

 通常、エボルブしたら、エボルブ前のセンターとアブソープションのアーミーはダウンチャームに行く。そこでダウンチャームに行かず、シェルター要因としてチャームゾーンに残れるのが純冷の使う青属性の特徴だが、黒属性は、ダウンチャームに行くことで、その特性を発揮する。

「コールアビリティ。Hellは手札以外の場所からからダウンチャームに移動したとき、手札に帰る。更にコールアビリティ。ベリアルクロウはアブソープションからダウンチャームに送られたとき、センターのアブソープションとして舞い戻る。更にこのターン中、センターにパワーを3000付与することができる

 更にフィールド[死者たちの巣窟]のアビリティで二枚ドロー」

 ダウンチャームからの蘇り(コールアビリティ)。誰もが息を飲んだ。

 人々を世界ごと殺す魔王が、蘇りのデッキを使うなんて。おかしいということはないが、自ずとある結論に辿り着く。

 魔王は死神だ。世界を滅ぼす存在。滅ぼした世界も命も、決して帰らないことを誰よりもよく知っている。

 普通なら、蘇りのデッキなんて、一笑に伏せてしまうような人物なのだ。それなのに彼がそのデッキを手にしているのは、切なる願いだからだ。

 どんなに届かなくても、蘇らせたい人物がいる。魔王にも、そんな心があるのだ。

「[おばけのぱっち]をアドベント。リバースバックアップを二枚セット。Hellで攻撃」

「アンシェルター」

 黒属性のコールアビリティは不気味だが、他の属性と比べると、全体的なパワーが低めなのが特徴だ。センターの攻撃もアブソープションがあるから通るようなものだ。

「ブレイヴコマンドチェック。ブランクだ」

「ダメージコマンドチェック。こっちもブランク」

「ターンエンド」

 あっという間にクロハのターンが終わる。

「パワー不足が問題だな」

「いや、全然問題ないよ。怖いくらい問題ない」

「え」

 昴と頷くアミに純冷はきょとんとする。ダメージは二対一。明らかにクロハの方が劣勢だ。

「ターンアップ、ドロー。……」

「千裕が迷っている?」

 強者の特徴として、あまり長考しないというのがある。カードゲームはルールを把握していれば、展開くらいならほとんど悩むことがない。何か考えるとしても、相手のターン中に組み立てができる。昴や純冷はもちろん、アミもそうだ。千裕がそれをできないわけがない。

 これは余談だが、スムーズにターンを進めることによって、相手の思考する時間を短縮することができる。思考時間が短ければ短いほど、組み立てに綻びが生じやすくなる。まあ、強者にはそんな姑息な手は通用しないが。

「コールアビリティの警戒と、サイドのぱっちのことを考えているんでしょうね」

 [おばけのぱっち]にはサクリファイスという攻撃無効化能力がある。一度きりだが、使用したらぱっちは当然、ダウンチャームに送られる。ダウンチャームに送られる、ということは、復活の可能性があることを意味するのだ。黒属性なら。

 それに、目障りなリバースバックアップも安直に破壊できない。破壊されたカードは当然、ダウンチャームに行く。オープン条件がなくとも、ダウンチャームに行くだけで、黒属性はその真価を発揮する。しかも、黒のカードがダウンチャームに行けば、フィールドの効果で一枚ドローできる。ドローすれば、シェルターアーミーが増えるのだ。自ターンでの展開もしやすくなるだろう。なんとも攻めにくい属性なのだ、黒属性とは。

「俺も戦ったことあるけど、あのときはコマンドに助けられた感じだよ。何をどうしても、クロハの思い通りって感じかな」

「もちろん、リバースバックアップが牽制の可能性もあるけど……だからこそ、千裕は迷うでしょうね」

 選択肢は無数にある。どの道を行っても罠に嵌まるのなら、どの罠にら嵌まってもどうにかなるか。その選択が難しいのである。

 リバースバックアップは裏向きに置かれており、オープンするまで何のカードかわからない。わからないから、危険か安全かもわからない。

「……[剣牙狼ウォシェ]をアドベント。リバースバックアップを二枚セット」

 ウォシェは鎖使いのウォシェと同様、志願兵アーミーでありながら、スライドシェルターが使えて、且つ前列だとパワーアップができる汎用性の高いアーミーだ。堅実な構えと言えるだろう。

 相手を罠に嵌めることに関してなら、白属性の方が上手である。

「ウォシェの攻撃」

「ぱっちのサクリファイス」

 ウォシェの攻撃は通らない。が、ぱっちのサクリファイスが消費されたことで、手札以外のシェルターはない。

「Knight、死神を討て」

「アンシェルター」

「!?」

 クロハの不敵な笑みと共に放たれた防御なし(アンシェルター)発言に誰もがぞわりと鳥肌を立てる。

 嵌まってはいけない術中に嵌まったような確信が、全員の中に存在した。

 千裕のコマンドはブランク。クロハのコマンドもブランク。

 三対一。千裕優勢。

 だが。

「リバースバックアップ、オープン」

 それは始まった。

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