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Brave Hearts  作者: 九JACK
セアラーデモライブ編
121/127

第118話 可能性の人

「昴VSポックル、勝者、昴!!」

 アミの宣言に会場がわあっと盛り上がる。解説席も賑わっていた。

「二人共、強かったな」

「昴は相変わらずの引き勝負な感じだけど、ポックルのスタイルは堅実なようでありながら破壊的というか。奴隷アーミーを生かした戦い方っていう危なっかしさと危うい分決まれば強力って特性がこれでもかって出てた戦いだったな」

「昴とポックルは知り合いのようだが?」

 黒羽がちら、と千裕を見る。千裕は頷いた。

「エシュのタウンショップで会ったんだ。ポックルはすごいあがり症で、凡ミスをよくするテイカーだったんだけど」

 千裕が仄かに笑う。千裕は昴が来る前から、タウンショップの常連だ。思うところは多々あるだろう。リュートだけでなく、ポックルとも戦ったことがあるはずだが、彼は多くを語らず、ただ勇戦した者への賛辞の拍手を贈るだけだ。

「ラストターン、手札のシェルターがもう少し高ければ、昴に次のターン打つ手はなかったでしょう。皆様もポックルの健闘に拍手を!」

 アミの言葉に応じ、会場中が拍手の渦に飲まれる。ポックルは思い出したようにぼっと顔を真っ赤にして、昴に「今!?」と肩を叩かれていた。

 充実したバトル、盛り上がってきた会場。ここはライブ会場だ。だとしたら、次にやることは決まっている。

「さぁて、ブレイヴハーツ交流戦はまだまだ続くけれど、一旦休憩を挟んで、お待ちかねの新曲披露よ!」

 わああ、とか、待ってました、の声が聞こえる。そう、これはそもそもブレイカーアミのデモライブ。アミの新曲披露という謳い文句に釣られてやってきたアミのファンが多いのだ。

 解説席を片付け、昴たちは自分たちの担当楽器に向かい、スタンバイする。その間にアミが語りを入れた。

「新曲を披露するにあたって、今日、ライブを開いた目的を話すわ。

 あたしたちは異世界から呼び出されたテイカー。正直ね、あたしはカードゲームなんて興味はないのよ。元いた世界では男の子の遊びみたいな感じだったし、あたしには歌があったから。カードゲームで戦争なんて馬鹿みたい、と思ってた」

 昴はアミの発言に、ウインドベルを倒しそうになる。歯に衣着せぬ物言いはアミのいいところであると同時にわりと致命的な欠点だ。

 戦争なんて馬鹿みたいというのは、まあ、平和な国に生まれたからこその発想だが、観客の中にも少なからずそう思っている人々はいるらしく、ブーイングなどはない。

「勝った人の願いを叶える。この条件さ、おかしいと思わない? そんなの、誰だって頑張っちゃうじゃない。悪い人が悪いことを叶えたらどうするのよ? アグリアル・タイラントみたいなやつが、その座を手に入れたら、唯唯諾諾と受け入れるの? どうかしてるわ」

 だからね、とアミが高らかに告げる。

「白の王を取り戻すために、このライブを開いたの。

 白の王が生きているかもしれない手がかりを掴んだから」

 アミの言葉に会場がざわつく。本当に? という懐疑的な声と、白の王が生きている可能性に対する喜びの声。喜びの声の方が大きく見える。

 白の王がアグリアル・タイラントに対抗した人格者として、国を築いたからだろう。タイラントからの厳しい差別を受けてきた人々からすると、白の王は希望の光なのだ。

 白の王が復活する意味として、白の王がブレイヴハーツウォーズに参加できるようになるというものがある。ブレイヴハーツウォーズに参加すれば、誰もが願いを叶える権利を賭けて戦うことになる。つまりは願いを叶える権利を手にする可能性があるのだ。

 ブレイヴハーツに負けてもいい、なんて考えを持つ者はいないだろう。だが、強く優しい心の人間が、夢を叶えようとしているのなら、それを応援しようと思えるのではないだろうか。

 戦争とは通常、自分の信じる将のために戦うものだ。人々はそれが欲しかった。その点において、白の王は申し分ない存在だ。

 アミはマイクを握りしめる。

「あたしにできることはね、限られてる。誰もがそうだと思う。だから互いの可能性を高め合って、夢を実現するものなの。だからあたしはあたしにできることをするわ。

 歌うために、曲を作ったの。聴いてちょうだい」

 アミは後ろの四人に目配せする。全員が頷いたのを合図に昴が動いた。

 しゃらら、と風に吹かれたように爽やかな音を奏でるウインドベル。

「風よ、草原を吹き渡り

 我らを導け!」

 瞬間、強い風が会場を駆け抜けたような錯覚を観客たちは受けた。

「Brave Hearts and take off

 覚悟はいいか?

 目指す場所はこの先に」

 最初の一音。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムの全てが一分も違わず同タイミングで押し出されたことにより、勢いが風のように感じられたのだ。

 頭サビが終わると目まぐるしくドラムが動く。ドラムの激しさと対照的にキーボードが静かに和音を奏で、ギターとベースが競り合いながらメロディを紡いでいく。

「望んだ姿じゃない

 夢見た世界じゃない

 誰もが不満を抱え、生きてる

 風が通りすぎた後にできた道

 導かれるように辿る」

 ここからサブボーカルも入る。

「風よ、草原を吹き渡り

 何処へ行くの?

 風よ、草原の終わる先

 我らを導け!

 Brave Hearts and take off

 この空の下

 切り裂いて、引き裂いて、ぶつかって

 信じて!

 Brave Hearts and take off

 覚悟はいいか?

 もう、二度と戻れない」

 白の王に願わくば道を示してほしい、という願い。その裏で、この先に一歩踏み出したら、もう前にしか進めない、そんな事実が潜んでいることを示す歌。

 アミたちの歌声は会場中を駆け巡った。

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