第117話 シェルターVSパワー
「ターンアップ、ドロー」
ポックルはるんるん、とカードを選び取り、センターに重ねた。
「[聖霊の巫女ルミナ]にエボルブ!」
きらきらしたセンターが天使の翼のようなものに包まれていく。そうして蕾が花開くように少し大人びた姿になった聖霊の巫女が現れた。
「[聖霊の巫女]のアビリティ。ルミナにエボルブされたとき、[聖霊の巫女]はチャームゾーンに留まり、自分のパワーとクリティカルをルミナに与える」
昴がぐ、と手札を握る。クリティカル増強。昴は2ダメージの状態だ。このターンで決めに来るつもりなのだろう。
手札温存のできる短期決戦タイプ。しかも奴隷アーミーの比率が多く、低パワーアーミーばかりかと思いきや、ルミナや水霊の巫女のように正規兵アーミーも入っている。はまれば強いデッキだ。ちゃんと安定してはまる工夫もされている。
それにこのライブ会場には何万人もの人がいる。そんな大勢に見られながらのゲームであるにも拘らず、ポックルはのびのびとプレイしていた。あがり症なんて嘘みたいだ。
「いっくよー! [精霊の巫女アリシア]をアブソープション、[深霊の巫女]をアドベント、リバースバックアップをセット!」
1ターンに出せるのは三枚まで。だが、まだまだここからだ。
「まずはアリシアのアブソープションアビリティ発動! 自身を含め、場に[巫女]の名前を持つアーミーが三枚以上出ているなら一枚ドロー。そんでもって、チャームゾーンに[巫女]の名前を持つアーミーが一枚以上あるなら手札から一枚アドベントできる。[深霊の巫女]をアドベント!」
アビリティによるアドベントは制限に引っかからない。が、深霊の巫女は志願兵アーミー。サイドに置いて単体でアタックするにはパワーが足りない。
ポックルは更に続ける。
「深霊の巫女のアビリティ! 自身と同名のカードが他サークルに出ているなら、パワープラス6000。更にセンターが[聖霊の巫女]の名を持ち、チャームゾーンにカードが二枚以上あるなら、相手センターのパワーマイナス5000!」
「うわっ」
奴隷アーミーもかくやというようなアビリティに昴が思わず声を上げる。ただし、奴隷アーミーと比べて条件が厳しい。そんな厳しい条件がきっちり整うということは、ポックルのデッキ回りが絶好調ということだ。
面白くなってきた。どんなに非力なアーミーでも、ちょっとした条件と工夫で強くなれるのだ。
「バトルシーン、深霊の巫女でアタック!」
深霊の巫女は12000パワー。BURNは4000パワーである。昴の手札は六枚。更に言うなら、ルミナがクリティカル2なので、後のことも考えた選択を迫られる。
深霊の巫女たちの攻撃を受けて、センターの攻撃を全力で止めるか、深霊の巫女たちの攻撃を防いで、センターの攻撃を受けるか。
昴はこういう二択を迫られたとき──
「アンシェルター!!」
胸が熱くなる方を選ぶ!!
リバースバックアップへの警戒、ブレイヴコマンドへの警戒、ダメージコマンドが引けるかどうか、手札のシェルター管理……それらを踏まえた上で、リスクもリターンも同じくらいのものなら、自分が凌いだとき、ぐっと手を握りしめ、胸が高鳴る方を選ぶ。それが紅月昴だ。
「ダメージコマンドチェック。ブランク」
「もう一体の深霊の巫女!」
「アンシェルター。ダメージコマンド……ドローコマンドゲット! BURNにパワープラス5000!!」
手札が増え、パワーは元の数値に。ダメージは4。首の皮一枚だが、それでもダメージが5になるまで、負けではない。
「ルミナでアタック!」
ルミナは元々が9000パワー、聖霊の巫女のアビリティでパワープラス6000、クリティカルが2になり、アブソープションでパワープラス3000、合計パワー18000である。
「ルミナは聖霊の巫女がチャームにいるとき、更にパワープラス5000!」
これで23000だ。
「サラマンドラとほむらでシェルター!」
昴は10000シェルターを二枚出してシェルター、これでブレイヴコマンドが出ても通らない。
コマンドはブランク。しかし。
「リバースバックアップ、オープン! [湖の霊ローレライ]!」
「……しまった!」
奴隷アーミーのローレライはセンターの攻撃がシェルターされて通らなかったときにオープンする。純冷と初めて戦ったときにも使われた凶悪なアビリティ。
「ルミナ、再攻撃!」
しかもこの攻撃はローレライのバックアップ付きだ。パワーは27000。
シェルターが20000ないとシェルターできない。
「フレイムガトリンガー、フレイムサラマンドラのスライドシェルター、[竜の友サイ][火種の竜アラク]でシェルター!」
シェルター値は20000。ぎりぎりでのシェルターだ。
「ブレイヴコマンドチェック!」
めくられたのは[水霊の巫女]コマンドはブランクだ。
「ターンエンド」
本当に首の皮一枚だ。サイドは両方ともスライドシェルターに回し、手札も消費し、残りは三枚。
このターンで決めきらないと、昴の敗北が色濃くなる。
「ターンアップ、ドロー」
ドローで引いたカードを見て、昴は目に光を灯した。
諦めを知らぬ者の灯火だ。
「集え炎竜! 友の待つ場所へ! フィールド[荒れ果てた大地]をセット!」
アミたちが目を見開く。
[荒れ果てた大地]は[炎竜の咆哮]の上位互換のようなものだ。炎竜のみならず、竜の友とも連鎖し、[炎竜の咆哮]では前列のみのパワーアップだったのが、前列後列全てのアーミーがパワーアップする。
「[竜の友ソル]をアドベント。ソルのアビリティでアラクをアドベント。[荒れ果てた大地]のアビリティで連鎖アドベント[フレイムガトリンガー][古の竜パドラ]!!」
これで全サークルが埋まる。
「[荒れ果てた大地]のアビリティで、場のドラゴンと竜の友一枚につき、全てのアーミーのパワープラス5000!!」
しかし、ポックルの手札は九枚。しかも青属性はシェルターに特化したアーミーが多い。それにポックルはまだ2ダメージだ。勝つにはこのターンで3ダメージを与えなければならない。
「アラクのバックアップ、フレイムガトリンガー!」
「アンシェルター」
コマンドはブランク。
「ソルのバックアップ、BURN!」
BURNは元のパワーが6000、エッジスナイプのアブソープションでプラス3000、ソルのバックアップでプラス6000、[荒れ果てた大地]のアビリティでパワープラス5000×3でBURN自身のアビリティでパワープラス3000、合計33000である。
対するルミナはアブソープション含め12000パワー。シェルターには25000は必要だ。
ポックルは五枚のカードを展開する。シェルター値5000が五枚で25000シェルター。ぎりぎりのシェルターだ。
「ブレイヴコマンドチェック」
めくられたのは[竜の友アル]リプレイコマンドだ。
「フレイムガトリンガーをリプレイ、パワーはBURNに!」
「くっ」
どうやら、ポックルは手札枚数はあるもののシェルター値には恵まれなかったらしい。
「まだまだ! ダメージコマンドチェック! ヒーリングコマンド! あ……」
ヒーリングコマンドの回復効果は相手と同数か相手よりダメージが多いときでないと発動しない。
「ルミナにパワープラス5000」
「フレイムガトリンガー、再攻撃!」
「アリシアでシェルター!」
「ウェイドのバックアップ、パドラ!」
「……アンシェルター! ダメージコマンドチェック」
今度こそ、ヒーリングコマンドが出れば、回復できる。ポックルも諦めていなかった。
けれど出たのは[いたずら妖精パック]。ブランクコマンドだ。
「ありがとう、ポックル。アドム!」




