第115話 巫女と妖精
「[BURN]」
「[聖霊の巫女]」
昴の背後に赤い鱗のドラゴンが、ポックルの背後にはきらきらした少女が降り立つ。
「赤属性と青属性のバトルが幕を開けましたが……純冷、あんたのデッキの中に[精霊の巫女]ってのがいなかったっけ?」
「私が持っているのは[精霊の巫女アリシア]だ。違いについては青属性カードのモデルになっているであろうナリシアたちの方が詳しいんじゃないか?」
ホシェフにいるナリシアに映像が繋がる。
「うーん、[精霊の巫女]は全ての精霊と対話する存在だよ。ポックルさんの[聖霊の巫女]は精霊のうちでも、神に近い存在と対話する巫女かな。水霊とか炎霊とか、属性ごとに色々いるんだよ」
「えっ、じゃあほむらとかの赤属性の[炎霊]シリーズも元々は精霊だったってこと?」
「それはない」
純冷が首を横に振る。
「精霊はフェアリーアーミーだ。昴たちが使う炎霊たちはゴーストアーミー。元々人間だったもののはずだ」
ゴースト、と聞いて、何か不穏なものを感じたアミは「そうなのね」とだけ頷いた。
「俺のターン、ドロー」
昴の先攻でゲームが始まる。
「チューンシーン、フィールド[炎竜の咆哮]をセット。[エッジスナイプドラゴン]をアブソープション」
昴の展開したカードに、アミは思わず顔をひきつらせる。
「は、始まるわよ。昴お得意の、炎竜連鎖」
「エッジスナイプのアブソープションアビリティ! 山札の一番上を確認。[炎翔竜サラマンドラ]! 炎竜であるため、アドベント! 竜は呼び合う。[炎竜の咆哮]のアビリティ!」
[炎竜の咆哮]はドラゴンアーミーが場に出たときに、山札の一番上を確認し、それがドラゴンアーミーであれば、アドベントするというオートアビリティを持つ。つまり、一度始まれば、その連鎖は場を埋め尽くすかドラゴンアーミー以外が出るまで終わらない。
[火種の竜アラク][フレイムガトリンガー]がアドベントされ、三枚目は[竜の友アル]とヒューマンアーミーであるため、連鎖はそこで終わり……と思いきや。
「まだ[炎竜の咆哮]は続くよ。だってまだ、エッジスナイプがアブソープションに出た分のアビリティを消化してない」
アミは昴には昴でトラウマのようなものがある。破壊しても破壊しても、どんどん出てくるのだ。何か一つ、きっかけに引っかかってしまえば。
山札を確認、カードは[フレイムサラマンドラ]、ドラゴンだ。
「竜は尚、咆哮する!」
けれど、次のカードは[炎霊かぐら]、ゴーストアーミーである。
「残念。でも、リバースバックアップを一枚セットして、ターンエンドだよ」
先攻のターンとは思えない展開能力。空きサークルは一つしかない。
けれど、それは昴の十八番戦法。タウンショップで何度か戦ったポックルは、それを知り尽くしていた。故に、動揺することはない。
「ぼくのターン、ドロー」
次にポックルが取った行動に、ほとんど全員が目を見張った。
「[いたずら妖精パック]をアブソープション!」
[聖霊の巫女]が体から放出する光の一つが、ちらちらと瞬いて、ぴょこん、と小さな妖精が現れる。フェアリーアーミーの多い青属性でフェアリーアーミーが出てくることは何の不思議もない。
問題はパックが奴隷階級のアーミーであるということ。ブレイヴハーツにおいて、アブソープションとはセンターの階級を上げることで、アドベントできるアーミーの階級を上げ、どんなアーミーでもアドベントできる状況にするという意味を持つ。だが、アブソープションして、センターの階級を上げられるのは志願兵アーミーのみ。奴隷アーミーはアビリティこそ強いが、階級昇格はしない。
これが正規兵アーミーにアドベントしてからのアブソープションであったなら、何も不思議な感じることはない。正規兵以上の階級として騎士階級は存在するものの、騎士階級のアーミーは幻とされており、正規兵が実質最上位の階級とされているからだ。
センターの階級は志願兵。だから、正規兵が手札に来ても、志願兵階級のままでは、サイドにもシェルターにも呼べない。
ついでに説明しておくと、チューンシーンからエボルブシーンに戻ることはできない。カードのアビリティによるエボルブなら話は別だが、それはアビリティエボルブであるだけで、エボルブシーンに戻ったことにはならない。
だが、あわてんぼうポックルは何かミスをしたわけではない。その証拠に、ポックルの戦法を知る昴や千裕が笑みを浮かべる。
「ついに完成したんだ」
「うん。だからスバルに早く見せたくって。
さあ、巫女ちゃん、パック、御披露目だよ。[聖霊の巫女]のアビリティ! フェアリーアーミーがアブソープションしたとき、フェアリーアーミーをパワープラス6000」
アブソープションとの指定がないため、おそらく、他にアドベントされているフェアリーアーミーがいれば、任意のアーミーにパワーが付与できるだろう。6000のパワーアップは大きい。
現在はフェアリーアーミーが他にいないため、パックにパワー6000が付与される。その付与したパワーがアブソープションパワーと合わせて、センターのパワーとなる。
「更に、パックのアブソープションアビリティ。いたずら妖精は巫女のためなら力を素直に貸してくれるんだ。一枚ドローして、センターのパワーをプラス5000。それから、ドローしたカードを公開。[祈りのハレルヤ]。フェアリーアーミーであるため、このカードをチャームゾーンへ置く」
「うおっと」
[祈りのハレルヤ]はチャームゾーンにあることで他の様々な青属性アーミーの能力を引き出すキーカードだ。それをこんな序盤でチャームゾーンに仕込んでしまうとは。
それにハレルヤに限らず、チャームゾーンに行くことで効力を発揮するカードが青属性には多い。チャームチャージガードやチャームループコーリングなど、チャームにカードがあるだけで戦略が広がるのだ。
低階級アーミーデッキと侮ることなかれ。パワー補填もしっかりしている。
「フィールド[泉の鳴き声]をセット。リバースバックアップをセットして、バトルシーン、BURNにアタックだよ!!」




