第113話 鍔迫り合いの果てに
「ターンアップ、ドロー」
バイゼルの残りデッキ枚数はこのドローで二十三枚である。アミが破壊アビリティを山札に集中させれば、あっという間になくなるだろう。実質、破壊された数×2が山札から削られていく。
[烙印者の墓]がある限り。
だが、解決方法は明快だ。破壊に伴うたくさんのドローで、バイゼルの手札は豊潤である。
「[烙印者の墓]をダウンチャームへ。フィールド[血の盟約]をセット」
そう、デッキ消耗が激しくなるフィールドを変えてしまえばいい。
大体のテイカーが三枚しか入れられないフィールドを一つだけ積むことはない。こういったフィールドのデメリットが出てきたとき、替えのフィールドがなければフィールドを破棄しても不利なことに変わりないからだ。
さて、新たなフィールドカード[血の盟約]は竜騎士向けのフィールドである。しかし、掲げられているのは、血が湛えられた不気味な聖杯である。
「[血の盟約]のアビリティ。手札を一枚公開」
公開されたのは[竜騎士見習いエドクラ]
「そのカードがアーミーカードかつ、名前に[竜騎士]が入っているのなら、そのカードをアドベントできる。エドクラをアドベント。エドクラのアビリティでゾフィエルを破壊に指定」
「くっ」
カウンターもなく、ゾフィエルは志高い若い騎士の剣に切り裂かれ、ダウンチャームへと送られる。これにより、エドクラにパワーがプラスされる。
「再び[血の盟約]のアビリティ発動。手札を公開」
「またエドクラぁ!?」
「アドベント。ホーエンを破壊」
エドクラは[大物食らい]でパワーアップする。
「三度、[血の盟約]を発動。[聖竜騎士ギアース]。ギアースのアビリティで、ギアースのパワーと合計パワーが同じになるまでアーミーを破壊」
ルシフェル、アザゼルの合計パワーは9000。ギアースは正規兵であるため、パワーは9000と高い。
「アザゼルとルシフェルを破壊に指定」
ちなみに、センターのラゼルは志願兵でアブソープションをしていないから、通常なら階級が上であるギアースを呼ぶことはできない。が、これはカードアビリティによるアドベントであるため、階級差は参照されない。
しかし、ここでアミがカウンターを出す。
「暁の子はただでは沈まないわよ。ルシフェルのアビリティ発動! 破壊に指定されたとき、センターのパワーをプラス5000! 相手の手札か山札を一枚破壊、手札を指定」
アミのカウンターに黒羽が疑問を口にする。
「今のアビリティ、山札破壊でなくてよかったのか?」
昴が答えた。
「デッキアウトによる勝利はあくまで相手の自滅戦法を加速させることによって成り立つものだよ。ブレイヴハーツによる勝利はいつだって変わらない。デッキアウトよりもダメージ5の方が優先。というか、デッキアウトさせるのって我慢比べだからね。バイゼルがフィールドを変えた今、デッキアウト狙いの山札破壊より、おの豊富な手札を少しでも減らす方がいい」
しかも、バイゼルがここまでアドベントしたアーミーはどれも手札からではあるが、アビリティによるアドベントだ。ターン中三枚までしか場に出せない、という制限にはまだ抵触していない。
まだ、バイゼルはアドベントやアブソープション、リバースバックアップのセットができるということだ。
「ここで手札から[竜騎士ラゼル]をアブソープションする」
アミの顔色が変わる。ラゼルの本領はアブソープションで発揮される。先程、アザゼルのアビリティが発動しなかったのは、アザゼルの破壊対象がアブソープションだからだ。そこまで読んで、わざとアブソープションを遅らせた。
しかも、もうアミのフィールドにはアーミーがいない。空きサークルが四つ以上というラゼルのアブソープションアビリティの発動条件が整っている。
ラゼルのアブソープションアビリティ。それは条件が整っていれば、センターのクリティカルを増やすというものだ。アミのダメージは2。一気にリーチをかけられてしまう。
このライブの主役として、負けるわけにはいかない。
アミの手札は六枚。これでこのターンのバイゼルの攻撃を捌ききらなくてはならない。バイゼルはカードの効果を上手く使い、アーミーをパワーアップさせている。アミもルシフェルでカウンターをしたものの、センターのパワーアップ以外、その効果は微々たるものだ。
「リバースバックアップを一枚セット。エドクラとギアースの前後を入れ替え、バトルシーン! エドクラの攻撃!」
「[神の癒し手ラファエル]でシェルター」
「センターの攻撃!! ラゼルのアビリティでクリティカル2!!」
そこでアミが選んだのは。
「アンシェルターよ」
防御をしないだった。クリティカルコマンドが出ればアミは一気に詰んでしまう。
だが、他のコマンドなら、パワーをサイドに付与されても防ぐことができる。
「クリティカル2の攻撃に対してアンシェルターの宣言! ブレイカーアミの精神は普通のテイカーと一味違うようです」
かなり胆力のいる決断だ。
「さあ、バイゼルのブレイヴコマンドは……」
「ブレイヴコマンドチェック。クリティカルコマンドゲット!」
これは、アミが一枚でもヒーリングコマンドを引かないと次がない。
それでも、アミの目には強い光が灯っている。「次」を掴もうとする目だ。
そういう者のところに、コマンドはやってくる。
「ヒーリングコマンドゲット! ダメージを1回復するわ!」
「エドクラのバックアップで、ギアース!!」
「[煉獄の番人ウリエル]と[仮面の道化師アザゼル]でシェルター!」
くっとバイゼルが悔しげに顔を歪める。高パワーの攻撃、一ターンでの巻き返しは見事なものだったが、アミに首の皮を一枚残してしまい、ターンエンドとなる。
「ターンアップ、ドロー」
アミは高らかに宣告する。
「[閃光の天使Lightning]にエボルブ!」
Lightningに雷が落ち、Lightningの翼が一対増えていた。武器も、電撃をびりびりと纏う荘厳な槍に変わっていた。
おおっ、と歓声が上がる。
「アミの新しいカード、リバースメインの進化形だ!!」
「[光の加護]のアビリティ! 山札から五枚を確認!」
出てきたのは[断罪の剣サリエル][先見の天使レミエル][大天使ミカエル][神の英雄ガブリエル][厳格なる番人ウリエル]──五枚とも天使だ。
「天使たちよ、全部吹き飛ばしなさい!」
アミの掛け声に破壊されていくバイゼルのカードたち。ギアース、手札二枚、リバースバックアップ、フィールドが指定される。
「リバースバックアップオープン!」
開かれたのは[炎霊かぐら]。道連れアビリティが発動する。
「ミカエルを道連れに!」
「レミエルのアビリティ! ミカエルの身代わりとしてダウンチャームへ」
「くっ」
破壊された手札のうち一枚をバイゼルは公開する。
「手札から破壊に指定されたとき[竜の友アル]のアビリティ発動! ウリエルを破壊!」
「破壊に指定されたとき、ウリエルはブレイヴポイントを1支払って、相手の手札を更に破壊するわ」
破壊、破壊、破壊。雷が、炎が、互いのフィールドを焼き合う。
「ふふっ、ふふふっ」
結局、アドベントされたのはサリエル、ミカエル、ガブリエルの三体のみ。それでもアミは楽しそうに笑う。
実際、楽しいのだ。破壊の限りを尽くすのは、アミ自身の願いでもある。
「[閃光の天使Lightning]のアビリティ! フィールドに[光の加護]があり、天使アーミーが三体以上アドベントされているなら、パワー15000、クリティカルプラス1」
豊富だったバイゼルの手札も残り三枚。先程のターンで決めきれなかったのが痛い。
「それにね、あんたの山札にもうヒーリングコマンドはないわ」
「……気づいていたか」
ヒーリングコマンドはダメージコマンドとダウンチャーム合わせて既に四枚出ている。防げなければ、バイゼルに後はない。
バイゼルの手札は三枚。ダメージは2。パワーアップとクリティカルを得ているセンターの攻撃は防げない。スライドシェルター持ちのギアースは先程破壊されてしまった。サイドの攻撃両方を防ぐのは難しい。
センターのコマンドがブランクでも、もうバイゼルに勝ち筋はない。
「[閃光の天使Lightning]で攻撃」
「アンシェルター」
コマンドはいずれもブランク。
「とどめよ。ミカエル」
「アンシェルター」
5ダメージ。
破壊と破壊のぶつかり合い。抗い合いを制したのは、ブレイカーアミ。
「ツァホーヴ!」
雷鳴が轟いた。




