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Brave Hearts  作者: 九JACK
セアラーデモライブ編
115/127

第112話 破壊と秩序

「かっこいいじゃない」

 バイゼルの宣言に、アミは笑みを閃かせる。

 以前会ったバイゼルはブレイヴハーツに勝つことにだけ執着して、芯がなかった。けれど、あれから何かあったのか、堂々として、立派な志まで持つようになった。

 そんなバイゼルをアミは素直にかっこいいと思った。信念のために戦える人間はかっこよくて好きだ。見違えたわ、と呟く。

「でも、あたしは簡単に負けないわよ」

 そう、アミのターンは始まったばかりである。

「手札から[エンジェルナイトホーエン]をアドベント! ホーエンのマニュアルアビリティで手札を一枚ダウンチャームへ。んでもって、バイゼル、あんたの手札も一枚破壊よ!」

「ふん」

 バイゼルが手札の一枚を破棄する。アーミーカードであるため、フィールドの効果で一枚ドロー。プラマイゼロだ。

 が、ホーエンのアビリティはここからである。

「破壊に成功したから二枚ドロー、ホーエンはパワープラス5000を得る」

 手札を増やし、パワーアップを得ることで、パワー不足を補填する。更に手札のバランスを整えることもできる。

 黄属性は破壊の特性が強いが、アミのデッキは破壊により、秩序をもたらす天使のデッキなのである。

「ゾフィエルの攻撃! ゾフィエルはターン一回目の攻撃のとき、パワープラス5000し、アップする!」

 速き翼を持つゾフィエルは連続攻撃が可能な貴重なアーミーである。正規兵であるため、素のパワーも高い。

「なるほど、二回目はパワーアップがないから、バックアップを使わない攻撃のようですね」

再攻撃(リプレイ)確実ならバックアップがいた方がいいもんね。

 実はアミの使っている[光の加護]って扱いが難しいんだよ」

 放送席の昴の言葉に黒羽が耳を傾ける。

「そうなのか? チューンシーン開始時の破壊アビリティ、破壊成功に伴うアドベント能力はかなり強力だと思うが」

「それだよそれ。破壊成功に伴うアドベント能力は、『アドベントできる』って表記だけど、強制アドベント。アミは天使積んでるから、十中八九アドベント能力が発動する。つまり、そのとき出てきたアーミーでそのターンの攻勢を組み立てなきゃならないんだ」

 そう、[光の加護]の能力は強力だが、いつも都合のいいカードばかりが来るわけではない。今回のように、奴隷アーミーが多く出て、パワー不足になることもある。それでもカードの能力である以上、アドベントしなければならない。

「しかもマニュアルアビリティじゃなくてオートアビリティだから、毎ターン別なアーミーで組み立て直さなきゃいけない」

 まあ、だからこそアミは同じカードを積む偏ったデッキ構成にしているのだろう。同じカードを積むと、戦略がワンパターンになってしまうが、毎ターン入れ替わるカードたちを使いこなす方が難しい。どんなカードが出るか選べない運要素の強いアビリティと組み合わせるなら、カードを積むのも一つの戦術だ。

 だが、同じ名前のカードはデッキに四枚までしか入れられないことに変わりはない。どんなカードであれ、全く同じアビリティではない。やはり臨機応変な対応は求められるのだ。

「まあ、カードゲームって手札に何のカードが来るかは結局運だから、臨機応変は当たり前ではあるんだけど、アミはそれがそのゲームごと、ではなくて、毎ターンなんだよね。すごいなあ」

 作詞作曲ができることと言い、アミは才能に溢れた人物なのだろう。

 バイゼルに1ダメージが入る。

「アザゼルのバックアップを受け、ゾフィエル、再攻撃!」

「[炎霊ほむら]でシェルター」

「今のは何故受けなかったんだ?」

「素直に受けたらバイゼルはこのターンで4ダメージ受けてリーチがかかるからだよ」

 だが、と黒羽が首を傾げる。

「アザゼルのバックアップでパワーは先程の攻撃と変わらない」

「うーん、そこは1ダメージ目だからっていうのもあるけど、コマンド狙いかな。あと、バックアップの警戒じゃない?」

 そう、アミには一枚リバースバックアップがある。そのカードが何をきっかけに開くかはわからない。

「黄属性は破壊特性が強いけど、リバースバックアップは他の属性と大体同じで、カウンター狙いがある。それに、フィールドが破壊できなくても、他に破壊できるものはあるからね」

 バイゼルのフィールドにはフィールドカードとセンターがいるのみ。フィールドはこのターン中破壊不可となっている。一見、破壊するものはないように見えるが……

「黄属性の破壊は何もフィールド上に展開されているカードだけじゃない。アミはもう活路を見出だしているな」

 千裕がくつ、と喉の奥で笑う。昴も、うん、と頷いた。

「センターの攻撃!」

「アンシェルター」

「ブレイヴコマンドチェック。クリティカル!」

「ぐっ」

 バイゼルは2ダメージを受けることとなる。

「ダメージコマンド……一枚目」

 ブランク。

「二枚目……[炎霊ほむら]」

 ヒーリングコマンドである。センターにパワーが加算され、1ダメージ回復する。

 あら、とアミは笑った。心構えが変わったからか、バイゼルの引きが以前より良くなっているような気がする。

「そう来なくちゃね。ルシフェルのバックアップを受け、ホーエンが行く!」

「[竜騎士見習いアクス]でシェルター。アクスのアビリティ、リバースバックアップを破壊に指定」

 おお、と放送席から歓声が上がる。

 リバースバックアップのオープン条件で一番多いのは破壊に指定されたときだ。これをわざわざ踏みに行くとは、胆力のいることである。

「リバースバックアップ、オープン」

 案の定、開いた。

「[嘲笑う者ラグエル]オープンアビリティ発動。場の自身を含めた奴隷アーミーを全て破壊することで、相手の山札から五枚を破壊」

「っ」

 五枚破壊され、五枚全部がアーミーカードであるため、五枚ドローするバイゼル。

「……そう来たか」

「破壊と破壊のぶつかり合いだと思ってたけど、あんたが背負うフィールドという爆弾をあたしはいくらでも弾いてあげる。むしろ、あたしにとっては好都合だわ」

 アミはターンエンドしたというのに、バイゼルには焦りが浮かんでいた。

 その原因は山札にある。明らかにアミのそれよりも低い、バイゼルの山札。

 長引かせると苦しむことになるのはバイゼルだ。デッキは五十枚と決まっている。そんな中、相手の破壊アビリティや自身のドローアビリティが重なっていったらどうなるだろうか?

 山札がなくなる(デッキアウト)

 それはダメージ5になる以外の唯一の敗北方法だった。

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