第111話 破壊VS?
「[Lightning]」
「[竜騎士ラゼル]」
黄属性の天使と赤属性の竜騎士が向かい合う。
「おおっと、バイゼルも竜騎士デッキ使いのようです。リュートとは違い、ラゼルをリバースメインにしているようです。放送席、どうぞ」
純冷の進行に昴が応じる。
「黄属性と竜騎士デッキはどっちも破壊の特性が強いからね。破壊VS破壊の激戦が期待できるよ!」
「アミの破壊は連鎖的な破壊だ。カウンターを生かせばカードが散り合う壮絶な戦いになりそうだな」
そう、カウンターによる破壊もあり得るのだ。何度か言ったが、リバースバックアップのオープン条件で一番多いのは破壊に指定されること。それが互いに破壊の連鎖を生むとしたら、破壊特性同士の戦いは激しいものとなる。
アミの先攻で始まった。
「ドロー。エボルブシーンは飛ばして、チューンシーン。[エンジェルナイトパロエ]をアブソープション!」
Lightningを守るように、甲冑を着た騎士が現れる。パロエが剣を掲げると、その先端から光が伸びた。
「パロエのアブソープションアビリティ。デッキからフィールドを一枚選んでセットする。[光の加護]をセット! 更にリバースバックアップを一枚セットし、ターンエンドよ」
「俺のターン、ドロー」
バイゼルは一枚のカードを掲げた。
「フィールド[烙印者の墓]をセット」
バイゼルの背後にゆらりと霧が揺らめき、どんよりとした空気が漂う中、ぼんやりと青みがかった黒い墓が現れる。
その様子に黒羽が声を上げる。
「黒属性カードのように見えるな」
「そうだね。墓から何か出てきそうだよ。
でも、竜騎士デッキ用のフィールドではないよね? 変な感じ」
竜騎士シリーズのフィールドは[団結の剣]や[団結の旗]のようにカード名に[団結]が入るのが特徴だ。どうやら、バイゼルの竜騎士デッキは一般的な竜騎士デッキと趣が違うようである。
「[エッジスナイプドラゴン]をアブソープション!」
その宣言に一同が驚く。
バイゼルは挑戦的な笑みを浮かべた。
「誰が竜騎士デッキだって言った?」
バイゼルの強気な声に、アミの口元にも笑みが閃く。
「確かにそうね。あんたは以前も純粋な竜騎士のみのデッキではなかったわ。面白い、続けて」
「エッジスナイプドラゴンのアブソープションアビリティ、山札の一番上を確認」
出たカードは[溶岩竜バイドラ]
「竜であるため、バイドラをアドベント! リバースバックアップを一枚セットし、バイドラで攻撃!」
エッジスナイプドラゴンは昴がよく使うイメージがあるため、お馴染みの炎竜連鎖を思って身構えたが、昴のあれはフィールドが[炎竜の咆哮]だからこそである。バイドラにも苦い思い出があるが、まだ序盤だ。
「アンシェルターよ。ダメージコマンドチェック、ブランク」
「竜と共に飛び立て、ラゼル!!」
「アンシェルター」
「ブレイヴコマンドチェック、ブランク」
「ダメージコマンドチェック、こちらもブランクよ」
アミに2ダメージを入れ、バイゼルのターンが終了する。
「ターンアップ、ドロー。[光の加護]のアビリティ発動。山札の上から五枚を確認」
[仮面の道化師アザゼル][暁の子ルシフェル][速き翼ゾフィエル][エンジェルナイトホーエン][大天使ミカエル]が開かれる。
「ホーエン以外は天使よ! よってアブソープション、サイド、リバースバックアップ、フィールドを破壊に指定!」
「リバースバックアップ、オープン」
ここまでは予想通りだ。だが、開かれたカードは予想外のアビリティを持っていた。
「[炎霊はるか]は墓地の混沌を守るもの。オープン時自分の他に破壊対象に含まれたカードの破壊を無効化する。フィールド[烙印者の墓]はこのターン中破壊されない効果を付与される」
現れた女の子の幽霊は、光へと変わりながら、墓へ祈りを捧げて消える。
破壊無効化能力。破壊特化に対する特効だ。
しかもまだバイゼルのデッキのアビリティは続く。
「[溶岩竜バイドラ]は破壊されたとき、センターにパワープラス3000を付与する。更にバイドラ、エッジスナイプ、はるかが破壊されたことにより、[烙印者の墓]のアビリティ発動! 破壊されたアーミーカード一枚につき、一枚ドロー。破壊されたのは三枚であるため、三枚ドロー!」
フィールドは守られただけあり、そこそこにえぐい能力を持っている。センターはアブソープションの分ダウンしたパワーがバイドラのアビリティにより戻り、おまけにバイゼルの手札は三枚も増える。
「くっ……そう来るわけね。破壊が無効化されたため、ミカエルはダウンチャームへ。他はアドベントよ!」
アミの盤面が一気に埋まる。[光の加護]の良い点でもあるが、出すカードは選べない。パワーの高いミカエルがアドベントできなかったのは手痛いところだ。ゾフィエルは正規兵だが、アザゼルとルシフェルは奴隷アーミーである。強力なアビリティを持ってはいるものの、パワーは心許ない。
アミが予想していたのは破壊指定時オープンによる道連れアビリティだったが、これはこれで分が悪い。破壊すればするほど、バイゼルの手札が増える。
しかも、手札破壊もデッキ破壊も、公開された結果、アーミーカードであればドローできる。それは捨て身でも守るわけだ。厄介なフィールドカードである。
デッキに入れられるフィールドカードは三枚まで。うち一枚はセットされており、デッキに残るフィールドカードは二枚。それ以外は全てアーミーカードだ。
破壊をすればドローされる。しかも今のターンは破壊不可の能力が付与されており、手が出せない。
竜騎士だけでなく、様々なアーミーを組み合わせた対破壊デッキ特化型デッキ。噛み合えばアミに対してこれほどの脅威になり得る。
「俺は気づいた。破壊の特性を持つデッキを使う者が多い、と。強いテイカーは強力な破壊アビリティを持つカードを使いこなす。ブレイカーアミ、アイゼリヤで一番多いテイカーの属性はどれだか知っているか?」
「……まさか」
バイゼルの発言にアミははっとする。
バイゼルのデッキ構成は対破壊型デッキである。そちらに特化しすぎていて、破壊型デッキとは普通のゲームしかできないだろう。
それでも、ブレイヴハーツ激戦区のセアラーで通用する。別にバイゼルは、アミとの再戦のためだけにこのデッキを構築したわけではないのだ。
「一番多いのは黄属性だ。理由は様々あるだろうが、破壊アビリティは爽快感があるというのが一つだろう。戦争を止めるために戦争をするような世界を受け入れているのがアイゼリヤの住民であり、ブレイヴハーツテイカーだ。黄属性が多くなるのも必然」
バイゼルの目が煌めく。
「だが、俺はそれに抗う! 俺を否定する世界に抗う! そのためにデッキを作り、ここに立っているんだ!!」




