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Brave Hearts  作者: 九JACK
白の街セアラー
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第8話 白の街セアラー

「ラヴァン」

 少年の冷たい声が響く。向かい合った相手には荒れ狂う風が襲い掛かる。

「ぐわぁぁっ!」

 魔法を紡ぐと、少年は興味をなくしたように相手に背を向け、歩き出す。

「ま、待て……」

 相手が少年の背に声をかける。

「お前……何者だ?」

 少年は振り向かない。

 ただ、こう答えた。

「千裕は僕を虐めるやつを絶対許さない。それと同じ──僕は千裕を傷つけるやつに容赦なんかしない」

 少年の白髪が月明かりに煌めいた。


「僕は、負けない。譬、全てを失っても」


「助かったよ、サバーニャ」

 昴、アミ、ハンナの一行の中に、サバーニャの姿が加わっていた。

「白の街に行くには、道案内が必要でしょう?」

 オールを出る時、サバーニャはそう言って昴たちの前に現れた。旅支度は整っていた。

「サバーニャ? 道案内はありがたいけど、俺たち、何の見返りも用意できないよ?」

 昴が言うと、サバーニャはいいのよ、と笑った。

「わたしも行きたいから行くの。むしろ連れて行って! あなたたちの力になれれば、間接的にでもヘレナ様の力になれる。ヘレナ様の目指す平和なアイゼリヤのために協力できるなら、拝み倒したいくらいよ」

 サバーニャがヘレナの力になりたいというのは、昴もブレイブハーツを通して聞いていた。

「じゃあ、よろしく」

 こうして、サバーニャが旅の仲間に加わった。

「白の街[セアラー]は元は獣人の国だった。わたしとアル姉の故郷よ」

「……今は?」

 昴が恐る恐る訊く。サバーニャの表情が翳った。

「ラテンで話していた通り、激戦区なんでしょう?」

 アミが言った。

「セアラーはエルフたちのいる青の街[マイム]とは違った意味で魔法が栄えていたと聞いているわ。ブレイブハーツが広まって、悪い意味で更なる発展を遂げたんでしょう」

 アミがズバズバ言う。サバーニャは複雑な表情で頷く。

「獣たちと共存していた街の者たちは、ブレイブハーツの魔法で彼らの暮らす森を汚し、根絶やした。あそこは焦土よ。もう、見る影もない……」

「動物たちは?」

「逃げたわ。エシュ方面の森に。本当はマイムの方が住みやすいのだけれど、セアラーからは一番遠いから」

 セアラーはアイゼリヤの中で最も西に位置する。対してマイムは東。真っ直ぐ突っ切るにはオールを抜けなくてはならない。森のない商業都市を抜けるのは野生の動物たちには厳しい。

「でも、逃げたんならよかった」

「動物たちは本能的に危険を察知したのよ。だから、今ではセアラーに近づきすらしない」

「……あぁ、だから徒歩なのね」

 アミが遠い目をした。

 そう、昴たちは今、歩いてセアラーに向かっている。サバーニャはセアラーには馬車では行けない、と言ったからだが、まさかそんな理由だったとは。

「まあ、馬を嫌なところに連れて行くのも酷だし、オールからならセアラーすぐだし」

 オールはアイゼリヤの中央にある。オールからすれば、他は全て隣街だ。

「へばらないで。そろそろよ」

 サバーニャの声に前を向くと、ぼろぼろの石柱が二本立っているのが見えた。

「さあ、我が懐かしの故郷、セアラーへようこそ」


 皮肉をたっぷり込めて言い、サバーニャが示した先には荒れ果てた大地があった。


 門らしき石柱の前に行くと、わらわらと獣人が何人も現れた。

 昴はアミやサバーニャよりも前に出た。目の前に現れた者たちは明らかに物騒な雰囲気を纏っていた。

「はっ、人間の子供に女か。──どっから来た?」

 昴は黙ってオールの方を指差す。話しかけてきた獣人は、鼻で笑う。

「はっ、お子さまは帰んな。ここはお前らみたいなんが来るところじゃない」

 子供扱いされ、アミがむっとする。昴は手でそれを止めた。

「人探ししてるんだ。その人がこの街にいるって聞いた」

 昴は包み隠さず話した。嘘ではないことを察したらしい獣人が鼻白む。昴は呆れて立ち去らないうちに、と続けた。

「せめて、中の状況だけでも教えて」

「お前さんの探し人はいないよ」

「白髪で白使いの子供のテイカー」

 昴はすかさず言った。おそらく、裕弥がブレイブハーツで無双しているなら、これで反応するはず。

 思った通り、獣人の眉がぴくりと跳ねた。

「俺たちが探しているのは、その子」

 明らかに場の空気が変わった。緊張感に皮膚がぴりぴりする。

「……あれは、化け物だ」

 沈黙した獣人のうちの一人が呟く。

「化け物?」

 昴が顔を険しくする。

「化け物だよ……あれは負けないんだ。普通はあり得ない方法で勝ち続けるんだ……」

 言われて、昴は思い当たる。裕弥のアブソープションもエボルブもしないというプレイスタイル。

 確かに、あり得ないと思うのは仕方のないことなのかもしれない。

「白のテイカーはね……癖があるけど、使いこなすと最強の属性かもね」

 アミが苦い顔で同意する。そういえば、白属性は苦手だと言っていた。

「情報をありがとう。俺たちは中に行くよ」

「おい!」

 昴の目に、声を上げた獣人が息を飲む。

「俺は、理由が知りたいだけなんだ」

 その瞳の光。

 揺らぎのない、決然とした双眸。

「諦めなさい。こうなった昴は止められないわ」

 アミはわかっていた。

 昴は裕弥と戦うつもりだ。


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