第7話 次なる街へ
「アルーカ……サバーニャ、アルーカを知ってるの!?」
昴の反応にサバーニャがかくかくかく、と首を縦に振る。
「わたしはアル姉を探しているの」
「アル姉……?」
話を聞くと、アルーカとサバーニャは従姉妹らしい。
「あなたたち、アル姉を知ってるなら、トレードしない? どうやらそっちも人探しのようだし」
アミと昴は顔を見合せ、頷いた。
「場所を変えよう」
昴たちは喫茶店[ラテン]にやってきた。
「アル姉とはどこで会ったの?」
サバーニャが早速訊いてくる。
昴とアミは顔を見合せた。なんとも言えない表情をする。
「どこっていうと……」
「表現しづらいわね」
昴は躊躇いを覚えつつ、正直に話すことにした。
「俺もアミも、異世界から来たんだ。ヘレナさんに呼ばれて」
「……へっ?」
サバーニャが狐につままれる。まあ、そうなるよね、と思い、昴はブレイブハーツウォーズのことを話した。
「止めてほしいって言われたんだ。エシュやこの街は平和だけど、街の外じゃ、ブレイブハーツウォーズの弊害で死んでしまう人や、非行に走る人が出て、治安は最悪だって聞いた」
実際、昴は森でテイカーのカードを盗む獣人にも会っているし、盗賊に殺された一家の話も聞いた。
「そうね……青の街は秩序を重んじるエルフたちがいるからいいけど、黒と白は酷いものよ。ヘレナ様がお心を痛めるのも当然……って感じ」
黒と白の街はブレイブハーツウォーズの激戦区で、魔法の使用過多により、環境破壊が進み、戦争の参加者もそうでない者も次々と命を落としているという。
「話を戻すけど、俺たちは召喚されて、最初にアルーカに会ったんだ。そして、ヘレナさんからの願いを聞いて、ブレイブハーツを教えられた。あの場所がどこかははっきりとはわからないんだ。でも、多分アルーカはヘレナさんと一緒にいると思うよ」
「昴、それ、情報になってないわ……」
アミは指摘しつつも、冴えない顔だ。おそらく、アミも昴と似たり寄ったりなのだろう。
「ありがとう! 貴重な情報よ」
サバーニャは笑顔で答えた。何の裏もない、心からの謝辞に二人は目を丸くする。
「よかったの? 結局、アルーカの居場所の手がかりにはならないんだけど……」
「充分よ。アル姉がヘレナ様の側にいるんだったら、側にいなくても、ヘレナ様のために動いているってわかっただけでも大きな収穫よ。ありがとう。──さて、誠意には誠意で答えないとね。あなたたちが探している人について、教えて」
昴は裕弥のことを話した。
すると、サバーニャがぽんと手をついた。
「そういう人の噂訊いたわよ。白髪の見慣れぬ男の子、凄腕のブレイブハーツテイカー。その子は今ーー白の街[セアラー]にいるわ」
白の街──昴は青ざめた。ついさっき話に出たばかりのブレイブハーツの激戦区。
更にサバーニャは驚くべき事実を続けた。
「そこでも、勝ち続けてるみたいよ?」
「なっ……!?」
昴とアミの声が重なる。
「最近現れたブレイブハーツテイカーで白のテイカーって言ったら、間違いないわ。名前は知らないけど、有名人よ」
空恐ろしい。常にブレイブハーツが繰り広げられている白の街においても最強のテイカーなのだ。
「裕弥……」
戦ってみたい、という感情はあるが、今はそれよりも、あの時の裕弥の──千裕と名乗った彼のことが過り、表情を険しくする。
「その子は自ら渦中に行くことを選んだのね……」
「どうする?」
アミは思考に沈みかける昴に声をかけた。昴はアミをみる。
「これから。あたしはしばらく予定はないから、あんたが会うっていうんなら、その裕弥って子に会ってみてもいいわ」
何か引っ掛かる言い方だが、昴は気にしなかった。
昴は決然と前を向いた。
「裕弥に会いに行く」




