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【書籍化&コミカライズ】失格聖女の下克上~左遷先の悪魔な神父様になぜか溺愛されています~(web版)  作者: 紗雪ロカ
お知らせ/番外編

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悪魔の飼いならし方

7/1(火)にコミックス3巻が発売となります。ついに完結巻となりますので、一気読みができます。

かづか先生には最後まで素晴らしいクオリティで駆け抜けて頂きました。ぜひお近くの書店およびネット書店にてお買い求め下さい。

それを記念して、2つ番外編を上げます。まずはちょっと毛色の違うこちらを…

むかしむかし あるところにやせっぽっちの女の子がおりました


誰も身寄りがおらず お腹を空かせて死にかけていた彼女の前に一匹の悪魔が現われます


「お前が死んだときの魂と引き換えに願いを一つ叶えてやろう 金か? 権力か?」


賢い女の子は言葉巧みに言いくるめ 大きな獣のような悪魔を利用します


「私はこの国を皆が幸せに生きられる国にしたいの 成果が出て 確信を持てたら契約してあげる」

「ずいぶんと慎重だな よしきたお試しサービスだ 世の中をよくしていくのに必要なのは 大義名分と名声 それらを手に入れるにはちょっとばかりの悪知恵と見てくれさ! 良かろう未来の大聖女 お前と俺で悪だくみをしよう」


悪魔の提案により 女の子はピカピカの恰好に変身して一芝居打つことに決めました

毒が蔓延し苦しんでいるところに特効薬を持って現れた彼女を 人々は聖女と呼んであがめます


「やったな! これで皆幸せになっただろう さぁ契約を」

「まだまだ 確信が持てないわ」

「まぁ時間ならたっぷりある のんびり待つさ」


それから悪魔は いつでも彼女の影に居ることに決めました 退屈な魔界に戻るより よっぽどこの女の生き様の方がおもしろかったのです


たくさんの人を助けた功績が認められ 美しい聖女は王さまと結婚することになりました 今日も悪魔は影からささやきます


「おお ずいぶんな玉の輿! これでますます権力に近づいたな さぁ契約を」

「まだまだ 確信が持てないわ」

「まぁ時間ならたっぷりある のんびり待つさ」


その後 王妃の提案により教会を各地に配置したことで国民の死亡率はぐんと下がり 国はみるみる内に安定化しました 今日も悪魔は影からささやきます


「さぁそろそろ皆幸せになったころだろう 契約を」

「まだまだ 確信が持てないわ」

「まぁ時間ならたっぷりある のんびり待つさ」


王妃は子を産み よき母 よき国母として全てを愛しました

悪魔とも いつも楽しそうに 国を改善していくための悪だくみをします


「さぁそろそろ皆幸せになったころだろう 契約を」

「まだまだ 確信が持てないわ」

「まぁ時間ならたっぷりある のんびり待つさ」


そして皺くちゃになった王妃は たくさんの人に見守られながら天寿を全うしようとしていました 今日も悪魔は影からささやきます


「さぁそろそろ皆幸せになったころだろう 契約を」

「まだまだ まだよ」

「…………」


さすがにもう待てません 初めて黙り込んだ悪魔に向けて王妃はお願いをします


「今まで私の側に居てくれてありがとう 楽しかったわ 私とあなたの悪だくみで作り上げたこの国を どうかお願いね」


枯れ枝のようになった手を 波打つ毛にそっと添えて彼女は続けます


「私は死んでしまうけど あなたなら未来永劫 見守り続けることができるのでしょう?」

「……お前のどこが聖女だ したたかで ずる賢くて 契約でもなしに俺をこの地に縛り付けようとしている」


悪魔はたくさん並んだ異形の目からボタボタと熱い雫をこぼし 嘆きます


「どうして死んでしまうんだ ソフィア」


フフッと笑ったソフィアは いたずらっぽく瞳を煌めかせながら こう返します


「そうよ 私は最初からずる賢いの そんな私にほだされてしまったあなたはお馬鹿さん とっても偉大で 誰よりも私と魂を通い合わせた優しい悪魔」


長い生涯をかけて 見事に悪魔を飼いならして見せた彼女は ふぅとひとつ息をつくと 仰向けになり祈りの形に指を組みます


「私の意思はきっと巡るわ その中に あなたは私を見るでしょう」



「ありがとう 大好きよ ××××」



そうして言葉巧みに悪魔を騙した聖女ソフィアは 眠るように息を引き取りました


ひどい女です 契約ではなく呪いのような愛を一つ 悪魔の心に深く深く刻んでいったのですから



それから悪魔は人に化け ソフィアと作り上げたこの国(わが子)を今日も守り続けています


意思は巡ると言った彼女への当てつけかのように 聖女の生まれ変わりと称した女の子を代々擁立し ずっとずっと 守り続けているのです



おわり

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― 新着の感想 ―
これは……!胸がぎゅっとなりました。悪魔の想いがずっと続いているんですね。めちゃくちゃ刺さってしまいました。罪な聖女さまです
この悪魔は教皇様でしょうか? そうだとして読むと、教皇様がネリネに囁いた言葉が、切なく聞こえます。
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