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第十八話 朝と始まり

第二章の始まりです。



 どんなに足掻いても、

 

 涙で枕を濡らしても、


 明日なんて来なければいいと念じても、

 

 泣きつかれて眠っても、


 暗闇が訪れても、





 朝は必ずやってくる。





 ***




「おはよう、お母さん」



 私は、机に飾ってある白い額縁の写真立てに向け、そう話しかける。返ってくるのは静寂だけれど、今この空間を包む雰囲気は、嫌じゃない。

 写真に写った母の微笑みは、私が知る唯一の母の表情。この写真が、私の記憶できる母の全て。

 そして、母の腕に抱かれているのは、羽毛布団にくるまりながら眠っている赤ん坊。これが、私。


 ついこの前までは、この写真を見ると酷く悲しくなり、罪悪感に襲われた。


 だけど、今はそんな気持ちが湧き上がってくることはない。むしろ、抱き上げている母の腕の優しさを思って、胸のうちが温かくなる。



 白いレースのカーテンから差し込む光が、部屋中を朝模様に変えていく。僅かに舞った埃が、日の光に照らされてぴかぴかと、ふわふわと空中で踊っている。私はその場所へと手を伸ばし、ぎゅっと握りこぶしを作った。そっと胸に引き寄せ、手のひらを開くと、そこには何もない。

 それでも、掴めはしないけれど、浮かんでいた暖かさや、安らぎのような目に見えぬ何かを得ることができたような気がした。



「一日一日。生きていきましょう」



 私は、アメリカで出会った素敵な知人の、一日の始まりを知らせる意味を含んだ言葉を唱えた。そう呟くだけで、全身に力がみなぎってくるような感覚がした。



「今日も、頑張りましょう」



続きます!

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