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ロープを登るのは結構久しぶり。
いつも下から上を見るばかりで、登るのは一緒に来ている三人に任せているのですが、ボタンを押すのも撫子にお願いをしているので、実質いつもここに来ていても何もしていない事に今更気がつきます。
二人で来ているので流石に今日は何もしないという訳にもいかず。
「さてと、登るかな」
ロープを登るというのはなかなか難しいのですが、縄梯子になるとそうでもなくて、意外と簡単に登っていくことは出来るのですが、多少お腹のお肉が挟まれることはあって、それは微妙に痛い部分も。
そんな痛みに負けず通常の前側ではなく後ろ側を登っていくと前にも見た出っ張りが。
それを思いっきり引っ張ってかなり頑張るとやっと引き出せます。
「あれ?これ持って降りるの……結構きつくない?」
取っ手はそこまでの大きさではないのですが、それでも片手を塞ぐぐらいの大きさがあって、これを持って下まで降りるのは結構大変でもあって。
ただ、降りない事には何も始まらない状況でもあるので、行きの半分ぐらいのスピードでゆっくりと降りる事に。
ある程度降りたところで撫子もちゃんと持って来たね?という感じでこっちを認識するとボタンを押すのをやめてこっちに来ます。
ただ、おもっているよりもかなり撫子は軽やかで、自分の様にノロノロという感じはなくむしろ遅いと言いたげな程。
まあ、どんな事でもこんなもんしかできないという自分の事を理解している人間なのでその目に何も思う事はもうなく、そのまま撫子はバランスを取る為に寄ってきていたみたいで、腕に尻尾の方をくるりと巻いて降りるサポートをしてくるのですが、サポートをしてくれるのであれば自分としてはこの取っ手を持ってもらった方が楽な気が。
ただ、それを上手く伝えるすべがないのでそのままやっと地面に降ります。
「コレだよね?」
すりすり
「撫子も覚えていると思うけど、色々なものを置いてみたけど何も反応は無かったよね?」
すりすり
「この木を置いても、多分おんなじだよ?」
ぺちぺち
撫子は明確にそんなことは無いと反応しますが、今までにそこらへんの木を個の取っ手の中に入れてロボットの中に入れたことは勿論あって、その時にも何も動かなかったのは多分覚えているはず。
「この木は違うの?」
すりすり
という事なので、木を取っ手に嵌めようとしてみますが、木の大きさよりも取っ手の中の大きさの方が大きく全く固定は出来ない状態。
「えぇっと?」
どうするの?コレ?という事になるわけですが、ぺちぺちと撫子が何かしらの動き。
何をしようとしているのか見ているのですが、イマイチその動きの意味は分からず撫子の動きを見ていると、自分の手から取っ手を取り地面にそれを置きます。そして持って来た木をカプっと咥えて、取っ手の真ん中に。
勿論木は取っ手の真ん中に置いているのですが、スカスカなので取っ手を持ち上げても何の反応もなく。
ただ、少しだけ面白い事になるのはこの後。
いつもかなり優雅な動きというか、冷静な動きをしている撫子の顔面には漫画で見るような青筋が。そしてかなり驚いた様子で、何度か木の位置を変えてみるのですが、何の反応を示すこともなく、そのたびに驚いて、首を傾げそしてもう一度木を咥えて移動して。
そんなことを珍しく三回程やった後、諦めたみたいで取っ手の中に置いていた木を咥えるとぺいっと捨てるように投げます。
言葉は発していませんが、動きや表情が言っているであろう言葉は「もういい」って感じで、かなり諦めを含んだ形だったのですが、ちょっとだけその気持ちは分かる部分もあって。
なにせ自分達も半年間色々なものをここに入れて取っ手を入れ直すことはしていたわけで。
「あれ?もしかすると?」
そうだ。と一つ思ったことがあって、撫子はこの地面で取っ手の中にこれを入れようとしているのですが、いつもはこの作業を取っ手の手前で三人のうちの誰かがしていて、もしかしたら中に入れていたのでは?と、いう気付き。
「これ、もって上に上がって取っ手を中に入れるときに一緒に木を入れたらいいんじゃない?」
一応そのまま伝えてみたのですが、首を横に振って違うとかダメという返事を撫子がしてきます。
「あら、違うのか」
撫子が凄い勢いで落ち込み、今まで一度も見た事のないふにゃふにゃの状態になってしまい、色々なやる気も同じようになくなったように見えます。
ただ、半年間自分達も色々とやっていてコレもダメだともう無理なんじゃ?と思うしかないのですが、とりあえず持って来た木をどうにかしたいという気持ちは分かったのでぺいっと投げた木を拾いに動くのですが、へにょへにょな撫子に躓くことに。
「おっと」
ちょっとした躓きなので問題はないハズだったのですが、バランスを崩しそのままとととと片足で数歩、丁度目の前にロープがあったのでそれを掴もうとするのですが、ほんの少しだけ目測を誤って、掴んだと錯覚をして空を掴みます。
その結果、くるんと回る形で後頭部が下になり、撫子が投げた木に頭を打つことに。




