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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第7章
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東支部へ〜3

〜side愛莉珠〜



今日のリクはなんだか何処となく機嫌が悪い感じだった。



訳を聞いても何も喋らず、ただぐりぐりと僕に顔を押し付けて時折匂いを嗅ぐ仕草をしているだけだった。



抱き枕にされるのはほぼ毎日だからそれが嫌だったわけじゃない筈だし、そもそも嫌だったら理由を聞いた時点で答える筈。



そうこう悩んでるうちにリクは既に着替えて出発の準備を整えていた。プライベートと仕事の切り替えが早いんだよなぁ。



そうして僕も着替えて全員集合して東支部本部の方へと足を運んだ。やれる仕事……まぁ東支部なら鉱石採掘ぐらいでそれがダメなら砂漠での短期訓練をしようと思うからそっちに行く為の確認取りに向かった。………だけど。




「いや〜、ごめんねぇ。今鉱脈の安定期間で採掘は停止してるんだよ〜。砂漠の方も今封鎖中でぇ」




……とアーミラがなんとなく胡散臭く感じる謝り方でそう言ってきた。




「鉱脈休憩はわかるけど、なんで砂漠も駄目なの?」



「愛莉珠ちゃん、デロデロに溶けた超高温のガラス海の中を泳ぎたい?しかも雨季の時期に」



「よしやめよう。絶対やめよう」




千度近いガラスの海に土砂降りの雨なんて爆撃みたいな水蒸気爆発地帯にその爆発で飛び散ったガラスが天然のナパーム弾になってまた降り注いでいる地獄なんて行きたくない。



それにここの気候は僕の魔法と相性が悪いし。




「雨季が終わるまでここは暇だからね〜。とりあえず観光でもしたら?ほらこの前まで極寒に密林だったんでしょ〜」



「いやここ砂と石以外何もないじゃんか」



「それがねぇ〜、新しく娯楽ができたんだよぉ」



「一体何ができたの?」



「それはねぇ〜………………キャバクラと風俗とラブホだよぉ」



「がっつり夜関係じゃんk──ッ?!」




アーミラがそう言った瞬間、僕の隣から一瞬だけ殺気に似た気配が本当に一瞬だけ感じた。慌ててそっちを視線を向けるといつもね………いやいつもよりも無表情のリクがいるだけだった。




「なんかその子凄く機嫌悪そうだけど、何かしたの〜?」




「待って待って待って。本当に身に覚えがないんだけど!?ねぇリク!僕なんかやらかした?!」



「…………………」




僕が聞いても目を逸らしたまま黙秘を続けている。それどころか僕が近づくと若干離れようとしてくる。



とりあえず、隊員に次の支部へ出発するまで自由行動を指示してアーミラから支部の談話室を借りてそこでリクが不機嫌な理由を聞くことにした。



多分これじゃないかなという当てはある。




「この前リクが楽しみに取っておいた超人気店の週10ホール限定のロイヤルハニーミルクパイ全部食べちゃったのまだ怒ってる?」



「───あ〝?」




やっべ間違えた。鎮火寸前の炎に油注いじゃったよ。だって聞いたことない声出したし。



………あの時のリクは怖かった。



リクが冷蔵庫の奥の方に隠す様に置いてあった毎日長い行列ができる超人気洋菓子専門店の週に10ホールしか販売されないロイヤルハニーミルクパイを僕が丸ごと食べちゃった時、マジで堪忍袋の尾が切れた音が聞こえた。



もちろん謝ったさ。ちゃんと同じもの買って謝ったさ。…………まぁ、許してもらうまでに家出と会ってもガン無視されたけど。



これじゃないとなるとなんだ?



というかさっきどこで殺気出したんだっけ?



……えーと、確かアーミラがこの砂漠のど真ん中に夜の店が出来たとかで……………夜?



………………あ。




「えーとリクさんや?もしかして今…………溜まってる?エロい方の意味で」



「………………………………… (うん)




僕がそう聞けばリクは顔を真っ赤にして蚊が鳴く様な小さな声で返事した。




「あー……、最近忙しかったからねぇ。どんな感じ?」



「………そろそろ時期も重なるからやばい」



「マジか。えっと……自慰は?」



「……………男のやり方しか知らん」



「あー、うん。知ってた」




普段我慢強いリクが表面上取り繕えきれていないのからすれば今の彼女の欲求は風呂桶から水が溢れ出すギリギリな感じ。



このまま放置するのはかなり危ない。リクもその目標対象の僕も。



ちょうどここには発散できる場所あるからヤるとしよう。僕もしたかったし。……ん?時間帯?別にそんなの気にするものじゃない。




「よしじゃあ、発散しに行くとするか」



「………………ごめんお嬢」



「いいよいいよ。僕もしたかったしさ」




そうしてリクの手を引いていざ出陣と談話室から出た時………



ちょうど馬鹿でかい木箱を抱えて廊下を歩いていたら東支部の隊員にぶつかりそうになった。




「──うへぇ?!」



「え、あっ、ちょッ!?」




ぶつかりそうになった拍子に木箱が大きく揺れ、明らかにやばい蛍光色の液体が入った瓶が数本僕達の方に飛んできた。



反射的に何本か取れたけど、そのうちの1本が判断能力が鈍っているリクの頭に当たって割れて、しかも瓶に拡張魔法でも掛けてあったのかバケツをひっくり返したような量が出て、リクは中身の液体を頭のてっぺんから足先までずぶ濡れになった。




「あ、あぁ……ど、どうしよう……」



「ちょっとこれの中身ってなに!?やばい奴なの!?」



「な、中身は娼館で押収した違法薬で……媚薬です………」



「………へ?媚薬?」



「は、はい。なんでも魔力不使用の100パーセント天然薬草由来のもので………即効性のもので肌吸収でも効果があります…………はい」




……………………すんごく嫌な予感がする。



リクは魔力が含まれるものは全て無効化できる。なら、魔力が含まれていない物は?満杯寸前の風呂桶に蛇口を全開にして水を急にダバダバ流したらどうなるか?




恐る恐る振り返るとそこには……………




アメジストの瞳をギラギラに輝かせた野獣が僕をロックオンしていた。




「────ヒッ」




久しぶりに変な声が出た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今までありがとう、お嬢
[一言] あかん(٥↼_↼)骨までしゃぶり尽くされるぞコリャ(-_-;) 何だかんだで立場変わって来たよな(ʘᗩʘ’) 最初の頃は魔力供給だけでも人前は嫌だと抵抗してたのに(↼_↼) 強制発情期にS…
[一言] 控えめに言ってもヤバい状況だねハハハ(他人事
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