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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第5章
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鏡に咲く二季草〜3

保護作戦の班分けで理玖と愛莉珠は作戦の主軸であるウィステリアの保護を担当する事になった。そして2人はある場所に向かっていた。




「お嬢。先に行くとこあるって言ってたけど、一体どこ?」



「まぁ、テルゼウスの情報屋みたいなところ。そろそろ着くよ」




その場所は執行官(ジャッジメント)の本部や各支部の外部オフィスや全職員の個別倉庫などユグドラシルの中でも重要な部署などが点在する区域である『総監督部』の端の方に存在している執行官(ジャッジメント)が規則違反を犯した者や危険行為をした者を一時的に収容する懲罰舎だった。




「…………ここ懲罰舎だよな?なんかやらかした人なの?」



「んー、やらかしたっちゃあ……やらかしたね。というかソイツ元々『ラビュリンス』で終身刑だったんだけど、やらした件はアイツにとって暇つぶしのお遊びだったって事とクソババァ(夜奈)が使えるからって引き抜いてきたんだよ。ただ、あそこにぶち込まれていたくらいだから監視も兼ねてここで生活してるの」



「なにやったのその人」



ウチ(ユグドラシル)のメインサーバーにハッキングして全職員の顔写真をコスプレオカマにすげ変えたり、多数の大手金融機関などの大口株の数字を出鱈目にして大暴落引き起こしたりしてた」



「……………………うわぁ」




愛莉珠の説明に理玖は思わずそんな声が出た。



前者はまだ良い。聞く限りでは被害は写真のみであったから。しかし、後者は被害が世界規模で甚大であった。




「まぁ、大暴落はちょうど『天災』後の景気が不安定だった時期で尚且つ上流階級のがめつい奴らが株でたんまり溜め込んでいたのが全部パァになって発狂したくらいであんまり問題にならなかったんだけどね」



「いやありすぎでしょ」



「とにかく、ちょっと癖があるけど面白いし何より優秀だからね。ちなみに特級戦乙女で倉庫番犬の金持のバディだよ」



「…………特級って変人ばっかなのか?」



「変人と狂人と変態かな。だってイカれてないと強くなれないし」



「なるほど」




2人は懲罰舎の中に入り、そこに勤務する職員と何個か受け答えをした後、施錠されていたエレベーターへと乗り込み、地下へと向かった。



そしてしばらくするとエレベーターは停止して出るとそこは無機質なコンクリート打ちの冷たい一本の廊下で奥に古びた木の扉があった。



愛莉珠はそのまま扉へと進み、躊躇いもなく開けた。



扉の奥は薄暗く入り口の側まで大型コンピュータや制御装置などが並んでおり、コンピュータ内部のファンの音や駆動音で部屋は満たされていた。更に床には配線が所狭しと張り巡らされており、それらを踏まない様に増設されたであろう小さな橋らしき物が部屋の奥へと続いていた。



全体的に薄暗い上に四方を圧迫する様に鳴る慣れない音に理玖は少し顔を顰めて耳を伏せながら愛莉珠にしばらくついて行くと部屋の最奥にモニターに向かってアーケードスティックで格闘ゲームに奮闘している小さな影が見えてきた。




「おーい、パルモ?ちょっといいk ──

「少し待って!今いいとこ」──はいよ」




愛莉珠が声を掛けている途中で少々高めの声で止めに掛かり、しばらくすると画面内のキャラが技を決めてデカデカと『K.O!!』 の文字が表示された。




「はい勝ったぁ!そんで何の情報が欲しいの隊長さ〜ん?………おっ!オオカミっ子だ!!可愛いねぇ、隊長さんのハウンド?」




パルモと呼ばれた人物はゲームを終わらせると自分が座っていた椅子を半回転させて2人に向き合って机の側に取り付けてあるライトを点けてそう言った。



背は子供にしか見えないくらい低く体型も合わせて見ると本当に子供の様に見える。金色に輝く瞳は縦に割れており、腰よりも長く伸びた彼岸花の様な真っ赤な髪を邪魔にならない程度に纏めていた。服装はサイズオーバーの無地のワイシャツのみで完全に外行きなど考えていない服装であった。




「そうだよ。そっちの番犬と同じ覚醒ビーストでね、リクって言うんだよ」



「そうなんだぁ、ほんじゃ初めましてだねぇ。ボクちゃんは天才美少女ダンピールハッカーのパルモン・ブラッティリリィだよ♪よろしくね☆」



「ちなみにコイツこんな(なり)してるけど、200歳超えてるロリババァだからね」



「え゛っ」



「ちょっと?!歳は余計だよ!!」




こうしてユグドラシルの情報屋との邂逅は随分と締まらないものとなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダンピールハッカーとはまた新しい響きだな(ʘᗩʘ’) でも二百歳じゃまだまだ子供じゃないか(゜o゜; 世の中、歳喰い過ぎても幼女のままだから絶壁年増幼女なんて呼ばれた奴もいたが(٥↼_↼)…
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