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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第5章
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来たるイベント〜4

3人………というより約1名は2人に付いて行ったと言うのが正しいが、一行は学園近くの商店街に入り、そのまま裏路地へと進んで行った。



綺麗に整えられている商店街の表とは違い、裏路地は生活感溢れた雑多とした雰囲気が漂わせていた。



そんな裏路地の一角、よく言えば趣きがあり悪く言えば小汚く見える住宅を兼ねたやたらポップな字体で『金ちゃんのカレー王国店』という看板が掛かっている店はそこにあった。




「相変わらずの店構えですね」



「………だね。変わった点は植えてある植物が変わったくらい?」




理玖と夜奈がそんな会話をして店の入り口である引き戸を開けると夥しいスパイスの香りと強烈な冷房の冷気が3人を襲った。店の内装は小ぢんまりとした飲食店でよく見かけるタイプのカウンター席型でカウンターの奥にはいくつかの年季の入った寸胴の銅鍋によく使い込まれた調理器具が並んでいた。




「いらっしゃい。………おや?久しぶりだねぇ夜奈ちゃんや」




そう言って店の奥から出てきたのは白髪をオールバックにした背筋が真っ直ぐな何処か優しげな雰囲気を漂わせる初老の男性だった。




「ご無沙汰です店主。今日は理玖とオマケ1人と食べにきました」



「おぉ、それはそれは………ん?ありゃ理玖坊、その姿……お前さん覚醒ビーストだったんかい?」



「そうだけど………爺ちゃん覚醒ビーストを知っているの?」



「昔、聞いたことあってな。ほれ、夜奈ちゃんのとこの神崎さんもそうじゃろ?理玖坊のバディは………隣の真っ白な方かな?」



「そうだよ爺ちゃん。俺の大事な人で料理以外はなんでもこなせる」



「補足しますが、かなりの変態です」



「お前が言うな。はーい!紹介にありました僕はリクのバディの愛莉珠です!よろしく!」



「おぉ、元気な娘さんだね。ワシは金時(きんとき)と言ってな。ここでカレー屋を営んでいる爺さんじゃ。……さて、立ったままだとあれじゃから、席に着きなさい。今日も美味しいカレーが出来ておるぞ」




そうして会話が一旦終わると店主の金時は3人を席に促して、愛莉珠にメニュー表を手渡した。




「夜奈ちゃんと理玖坊はいつものかい?」



「えぇ、いつもので」



「俺はこの姿になってから色々あるから様子見で7段階で」




そんな会話を横目に愛莉珠はメニュー表を眺めていた。



メニュー内容はやはりカレーオンリーで、ポークカレーをベースに別料金で様々なトッピングが付くシステムだった。そして辛さの度合いが強ければ強いほどカレーの料金が下がっていくというあまり見ないものだった。



ちなみに辛さの度合いは1段階が1番下で最高は10段階であった。



「お嬢。ここのカレー、結構辛いから食べるなら1番下のがいいよ」



「いや大丈夫だよリク。僕、辛いの得意だし。………まぁ、様子見で5段階目かな?すみませーん。僕はトッピング無しの5段階で」



「はいよ」




そうして注文を受けた金時は早速調理に取り掛かった。




***




〜side愛莉珠〜





…………………失敗したかもしれない。



僕は店主がカレーを準備している様子を見てそう思った。



最初は普通だと思っていたんだけど、店主が鍋の蓋を開けた途端、着色してるんじゃないかってくらい真っ赤な湯気……煙?が爆発する様に上がって換気扇に流れていった。



そしてしばらくすると外の方が悲鳴やらなんやらでドッタンバッタン騒がしくなった。



……………絶対にあの湯気直撃したら色々やばい。



常連2人の様子からこれが普通なのだろう。



そして店主がカレーを装っていく途中でお玉からほんの一雫のカレーが台の上に置いてあるおそらく濡れている台拭きに溢れると………



『ゴォッッッ!!!!』



一瞬で燃えて消し炭と化した。



……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………僕は今日死ぬのかな????



いやだって、濡れている台拭きが一瞬で燃えて消し炭になるカレーってなにッ?!というかあの音、『ゴォッッッ!!!!』というより『轟ッッッ!!!』だったよッ!?というかマジで2人とも反応しないなぁ?!




「ありゃりゃ………溢してしまったわい」



「今回もいい辛さに仕上がっているみたいですね店主」



「そりゃあ、何日か寝かせておいたからのぉ。味は格別じゃよ」




いい辛さってなにッ?!え、まさかあれって辛過ぎて燃えたってこと??




「はいよお待ちどうさま。5段階目普通カレーじゃよ」



「ど、どうも……」




そうして出てきたのは目が痛くなるくらい真っ赤なカレーだった。そして香りだけでも咽せかけた。…………………やっぱりリクの言う通り1番下にしとけば良かった。




「次は……7段階目カレーの唐揚げ乗せじゃよ」



「ありがとう爺ちゃん」




リクは僕のよりも2段階上のやつで見てみるとルーが皿に盛られているのにまるで中華料理の熱々に熱した石鍋の中身の様にグツグツいっていた。そしてトッピングの唐揚げは何故か普通だった。




「次で最後じゃな。……ほれ、10段階目カレーの大盛りじゃよ」



「ありがとうございます」




そして最後の局長のやつ。確かメニュー表だと最高ランクの辛さのやつだった筈。



見てみると見た目は普通のルーが白い大盛りのカレーで…………



いや違う。



あれは白くない。ルーが白熱化している。轟々と毒々しい熱波があの白熱化しているルーから立ち込めている。ルーと接しているライスが黒く焦げている様に見えるのはきっと気のせいだろう。いや気のせいであってほしい。



というかあれは食べ物なのか????



あのババァは普通に食べてるし、リクもハフハフいいながら食べ始めていた。



これってもしかしてそんな見た目よりも辛くないのかな?



ま、まぁ………食べよう。僕は辛いのには強いからね。それでは……いざ尋常に勝負ッ!!




──────結論から言って口に入れた瞬間、記憶が吹っ飛んだ。



気づいたら家に帰っていてパジャマ姿になっていてリクと一緒に寝ていた。ちなみにリクは局長から貰ったペンギンパーカー姿で僕の胸を枕にしてスピスピ寝ていた。



辛過ぎると記憶が吹っ飛ぶもんなんだと僕は学習した。

カレーの元ネタはとある短編コメディアニメ映画です。


ちなみに「カレーなる勝負」と検索すれば出る筈です。あのアニメは私が好きなアニメに1つであります

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しみに読ませてもらってます [一言] 地球1周しなきゃ(使命感)
[一言] 今回は物理的な飯テロかよ(٥↼_↼) 湯気の段階でテロレベルは営業できる代物ではないぞ(╥﹏╥)
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