逃げ切った先で〜1
「私の異能力は『超再生』と『変態』……そして『快楽置換』です。前者2つは既にお見せしたもので『快楽置換』はその名の通り私の快楽という感情を別のエネルギーやステータスに置き換えるものです。
置換対象は電気や魔力や熱エネルギーに運動エネルギーと様々な『燃料』でステータスは単に筋力や持続力や体力などあらゆるものになります。
ただステータスに関しては元のスペックから無理矢理引き出すものなので………」
レオナルドはそこで説明を切るとチラリと隣へ視線を向けた。そこには真っ白に燃え尽きた様な表情を浮かべて床に突っ伏している理玖がいた。
──現在3人はアレーヌの追跡をなんとか振り切り、とある広場で小休憩を挟んでいた。尚、来た道はレオナルドが壁に隠された操作パネルで完全に塞いである。
「………これどのくらいで治るものなの?」
「個人差と強化具合によりますが、おそらく小一時間は動けないでしょう。回復させようにも私のコレは本人の治癒力を活性化させるものなので逆効果ですね。猫さんの活力ポーションはどうですか?」
「駄目ね。というかポーション自体受け付けないというか魔力が含まれるもの全般無効化されるって言ってたし」
「あれま………それは難儀な。ならば背負って運ぶしかありませんね」
「いやそれこそ無理でしょ。大泉、私達の中で1番重いのよ?コイツの武器なんて1丁だけでもキツいんだけど」
「それは猫さんが非力過ぎるのでは?」
「試しに持って潰されて身動き取れなくなったアンタには言われたくないわよ」
「ではワンちゃんにお願いしましょうか」
レオナルドはそう言うと理玖の側でお座りをしている魔狼に近づいた。魔狼は特に反応を示さず、ただ感情が感じられない赤い目でレオナルドを見ていた。
「………おt『ガブッ』」
レオナルドが真剣な表情で手を差し出して飼い犬ならばお決まりの芸をさせようとした瞬間、魔狼は躊躇いもなくレオナルドの手に丸ごと噛みついた。
「「………」」
元々静かであった広場に更なる静寂が訪れる。そもそもレオナルドがお手をさせようとしたのは可愛らしい柴犬やチワワではなく、アルファとその主人の命令しか聞かない魔獣やボイドが裸足で逃げ出す殺戮兵器である。
現にレオナルドの手は飼い犬の甘噛みのそれではなく肉と骨を砕く本気噛みでぐちゃぐちゃになっていた。
ブチリッ
魔狼はレオナルドの手に噛みついたまま頭を振るとレオナルドの手はそう音を立てて千切れ、魔獣はそのままレオナルドの手を咀嚼して飲み込んだ。
そしてその手が無惨に無くなった先からはギャグ漫画みたいな血の噴水が出来上がった。
「食べられてしまいました♪」
「『食べられてしまいました♪』……じゃないわよッ!?治療ーーーッ!!」
「問題ありません。生えますのでぇ──……」
千切れた手に騒ぐウィステリアにレオナルドは笑いながら自分の手を再生させた直後、力が抜けた様にその場に倒れ込んでしまった。
「え、どうしたの?」
「ちょうさいせいの……つかいすぎですねぇ………ねますぅ……zzz」
「ちょ、ちょっと?嘘でしょッ?!」
レオナルドはそう言い残すとすぐさま夢の世界へと旅立ってしまった。そもそもレオナルドはここに来る以前に一度身体を全損している。それら全てを再生させた上で更に異能の使用により活動限界に来てしまったのである。
そして今動けるウィステリアは爆弾魔として活動していた頃ならばまだしも、今のウィステリアはヤク抜きなどにより大幅に弱体化している。
今見つかりでもしたら一巻の終わりである。
───その直後であった。
凄まじい爆発音と共に広場の一部の壁が内側から弾け飛んだのは。




