逃げた先に
───勘を頼りに走り回った理玖は、辺りの警戒を魔狼に任せるとようやくひと息ついた。
道なんて知っている筈もなく、ただ止まらず離ればいいと考えた結果、息が上がるほど走り回った。
早急に逃げる事を優先した為小脇に抱えられてジェットコースター並みの振り回しを受けたウィステリアは先程のレオナルドの末路も合わさってかなりグロッキーな様子であった。
逃げる事に専念していた理玖もウィステリア程ではないにしろ顔色が悪かった。
映像などでは見慣れた光景。魔獣やヴォイドの討伐で中身をぶちまけて爆散させる事なんてしょっちゅう。しかしそれはあくまで人では無かったからで先程まで話していた人間が目の前で物言わぬ肉塊になる事など始めてであった。
「……大泉、水とか、持ってる?あるならちょうだい」
「……いいですよ」
俯いたまましゃがみ込んでいるウィステリアは左に息を落ち着かせている理玖にそう言った。
「はいどうぞ」
「ありがとう……」
そしてウィステリアは右から手渡されたペットボトルを受け取るとお礼を言い、勢いよく中身の水を飲んで………そこで気づいた。
『今自分はどっちから受け取った?』……と。
確かに隣には理玖がいる。しかし場所は自分から見て左側。わざわざ右側に移動して渡す必要はない。というか手渡された時の声も違った。
ウィステリアはペットボトルに口をつけたまま左側を見ると自身の影から飲み物を取り出そうとした格好で目を丸くして驚いた表情で固まっている理玖がいた。
恐る恐る……ウィステリアはそのまま右側を向くとそこには………
「どうも〜♪先程ぶりです御二方」
生まれたままの姿で理玖の魔狼に頭から齧られて血をダラダラ流している笑顔のレオナルドが手を振っていた。
『ブッフゥゥゥゥゥッ!!!!』
ウィステリアは口に含んでいた水を勢いよく全てレオナルド?に吐き出した。
「ギャアアアアアアアアッ!?!?!?ゾンビィィィィィッ!!!」
ウィステリアはそのまま絶叫を上げて理玖に勢いよく抱きついた。抱きつかれた理玖もウィステリアを抱えて少しでもレオナルド?から離れようとしていた。よく見ると彼女達の尻尾は本来の太さの2倍くらい太くなっていた。
「いや〜再会して早々に毒霧を受けるなんて思いませんでしたよ」
水を吐きかけられたレオナルド?はというと特に気にした様子はなく、むしろ頬を赤らめて喜んでいる様に見えた。
「あ、あ、アンタッ!し、死んだんじゃッ」
「えぇ、死にましたよ?Dr.アレーヌにペシャンコにされました」
「じゃ、じゃあなんで」
「それは私の異能力の『超再生』のおかげです。私はある程度の栄養素さえあれば無限に身体を元に戻す事ができます。更に適度な大きさの肉片があればそこから記憶を引き継いで新たな『私』として生まれる事が可能であります」
「………それがお前の覚醒ビーストとしての能力か?」
「いえ違いますよ。元々この能力は自分の傷を治す程度でしたが、ビーストに関しての法律が緩かった時に人体実験されましてね。その際、プラナリアの細胞を移植して色々やっていたら私の肉体がプラナリアと同じになってしまったわけですよ
今はそれを利用して身体の一部を切り取っては培養器で私を増やしてここの監獄の雑務などをやっていますがね」
ハッハッハッと軽い感じでかなりやばい事を言っているレオナルド (NEW)に2人はドン引きした。
「えっと……つまりアンタはレオナルドだけどレオナルドじゃないって事?」
「そうですね。全ての私は思考ネットワークで繋がっていますので私は私であり私でもあると言うわけです」
「………………………ごめん。意味わからない」
「俺もです」
「わからなくてもいいですよ。そういうものだと思ってください。………ところで服を貰えませんか?このまま全裸で徘徊するのは非常に心地よく濡れてしまそうで私としてはバッチこいですが、いつまでもすっぽんぽんでいるわけにはいきませんから」
今も魔狼に頭をガジガジと噛まれているレオナルドはそう2人に言うと理玖とウィステリアは顔を見合わせて、お互いの替えの服を出す事にした。
いつまでも全裸で血塗れでハァハァ言っている奴を側に置きたくなかったのもある。
……………ちなみに上の服はウィステリアの物にしたものの一部分が窮屈と言われてたウィステリアはその部分を削ぎ落とそうが本気で思ったのは別の話である。




