異常事態〜2
"起きたら全く別の場所に寝かされていた"
寝起きから覚醒した理玖は真っ先に自分の荷物を確認した。旅先の荷物の警戒は神崎にも言われており、理玖は1番安全といえる自分の影の中に入れて置いてあった。
理玖達を運んだ犯人は流石に影の中までは手を出せなかった様で荷物は無事であった。ウィステリアの方は寝る時に脱いで散らかしていた服がきちんと畳まれた状態で荷物は全て無事だった様である。
「……ウィステリアさん。ここどの辺りかわかりますか?」
「雰囲気的に多分……最下層。やったのは絶対ここの監獄長」
「根拠は?」
「あの人、マジで頭のネジがブッ壊れてる愉快犯なサディストだから。あと、下まで降ろせる権限はアレしか持ってない」
理玖はウィステリアにそう聞きながら手早く身支度を済ませていく。ウィステリアも長年離れていたとはいえ身体に染みついた動作は消える事は無く、同じ様に手早く身支度を済ましていた。
今自分達がいるのは凶悪犯がひしめき合う無法地帯の最も危険な最下層。何かあってからでは遅い。
その時だった。
壁に埋め込まれている古いスピーカーからハウリングの甲高い音が鳴り出した。そして……
『起きろ豚共ッ!!いつまで惰眠貪ってる気だァァ?!さっさと起きて私の話を聞けェ!!』
頭に響くキンキン声が思わず耳を抑えたくなる大音量で流れ出した。耳のいいビーストである2人は思わず耳を塞いで顔を顰めてしまった。
『今日はいい日だ。外は相変わらずコントみたいな天気で私の家畜共も変わりない……いや、2匹増えたな。それも白銀の狂竜の番と爆弾魔の鏡猫だ。どちらも手を出せば手首ごと食い千切られるほど凶暴だ。じつに調教し甲斐があるッ!!』
随分と愉しそうな雰囲気の声の主の言葉を聞いて理玖は思わずウィステリアの方を見たが当の彼女はそれを否定する様に激しく首を横に振る。
理玖はともかくウィステリアはヒヨコを愛する少し爆弾に詳しい猫なだけで手首ごと食い千切らない。
『さぁ私の豚共ッ!!今からその新入りの2匹にラビュリンスの支配者が誰かをそして家畜として相応しい行動は何かを叩き込めェェ!!ハァーハッハッハッ!!』
ドS女王丸出しな台詞を最後に放送は終了し、監獄内の全ての檻の電子錠が一斉に解除された。
「ウィステリアさん、武器はありますか?」
「……………な、ない」
「じゃあ、これを。無いよりかはマシです」
理玖は顔を青くしてるウィステリアに軽いが丈夫な素材で作られた棍棒を手渡した。
「とりあえず移動しましょう。ここにずっと居れば最後は追い詰められて何されるかわかりませんから」
「そ、そうね。まずは上を目指しましょ。ここよりかはマシな筈だし」
「了解」
そうして2人は自分達が寝かされていた檻から出た。




