南支部へ〜13
愛莉珠に言われた通り理玖はその場から動かずに待機していると表の方から慌しい気配がやってきた。
そして理玖が来た道から何やら重厚な箱を抱えた愛莉珠が顔に焦りを浮かべてやってきた。
「リク!ガラス玉は?」
「こ、これだ……」
「……やっぱりそうか。リク、それをこの中に入れて。出来るだけ静かに」
愛莉珠の問いに理玖は連絡を入れてからずっと持っていたガラス玉を愛莉珠に差し出すと愛莉珠は険しい表情を浮かべて理玖に指示した。
理玖は当然愛莉珠の指示通り、割れ物を扱う様に箱の中に入れた。
愛莉珠は理玖が持っていたガラス玉がしっかり入った事を確認すると箱の蓋を勢いよく閉め、それからかなり禍々しい見た目の鎖で雁字搦めにした後、更にそれを一回り大きく魔法陣がびっしり描かれた箱に入れて、更に呪術的な札をベタベタと貼った。
「はい、これで完了。あとは協会の禁忌庫にボッシュートするだけ」
「……なぁ、お嬢。それ、一体なに?」
過剰な封印が施された箱を機密輸送用の箱に収めた愛莉珠に理玖はそう聞いた。
「あれはパラレルコンパスっていう協会で発表されてる危険魔道具の中でも特にやばい奴。見つけ次第、厳重封印物で所持してるだけで魔術師関連の免許とか全部剥奪された上に豚箱行きになる奴」
「……………どんな効果があるの?」
「リクって並行世界とかパラレルワールドとかって聞いたことある?」
「名前だけなら。詳しくは聞いたことない」
「人の人生を1本の木に例えるとすると太い幹が大筋の世界……つまり『基軸世界』だ。その人が生まれて生きて死ぬという大まかのね。そんでその人がいつ何処で何をしてどうなったでその後の未来が決まる。
その未来は無限大にあるけど本人が知覚できるのはたった1本の枝の世界だけ。つまりその知覚できなかった『あり得たかもしれない世界』が『並行世界』ってわけ」
「つまりあの魔道具はその並行世界に行けるってことか?」
「実際どうかは知らないけど、まぁ行けるでしょ」
「だが、行けるだけなら危険魔道具にならないじゃないか?」
「……あれは言うなれば使用した本人が1番望む並行世界に行ける魔道具だ。その並行世界に行ってそこの自分を殺して成り替わるってこともできる。実際、過去に何回か並行世界から来たであろう人物も発見されている。
観光に来たって奴は平和な部類でやばい奴は自分が片思いしている愛する人が自分のせいで幸せになれないからって並行世界の自分を殺し尽くそうとしたトチ狂った奴もいたらしい」
「そりゃあ、封印されて仕方ないな」
「ちなみにやばい奴の愛する人も同じ理由で自分を殺し尽くす為にやって来て両片思いから結ばれたらしいよ」
「凄まじく傍迷惑なカップルだな」
「とにかくまぁ、リクが無事で良かったよ。一応、何か影響あるかもしれないから一旦救護院に行くよ」
そう言って愛莉珠は理玖の手を引いて歩き出した。
愛莉珠に手を引かれながら理玖は思った。今が1番いいとは感じているが、自分が1番望む並行世界とは一体どんなものなのか………と。




