南支部へ〜11
「なぁ、お嬢。昨日の夜辺りの記憶がないんだが知らないか?」
「ん〜?疲れてたんじゃない?」
「……お嬢。なんか身体の節々がヤッた時みたいに痛いんだが?」
「疲れが取れなかったんだろうね」
「………………お嬢。なんでお嬢の肌がツヤツヤしてんだ?」
「気のせいだよ。気のs──」
愛莉珠ののらりくらりとした言い方に理玖は軽くキレて小さい魔狼を嗾けた。魔狼は主人の命令に忠実に従い、獲物の頭部に噛みついた。
「ア痛ァーーーッ!?何すんのさリクッ?!そもそもリクから誘って来たんだぞ!」
「知らん。というか耐えろよそんくらい」
「じゃあリクは目の前に大好物があって、それを食べずに待てできる?」
「…………………」
「ほら無理じゃんかぁ!」
そんな風に一方がぎゃいぎゃいと騒ぎながら2人はまだ朝日が登らない時間帯から港の方へと向かった。
***
南支部の主な産業は漁業であり、朝日が登らぬうちに船を出しては近海で漁を行い戻っていくというのをほぼ毎日行っている。
ただし、天候が悪い日や先日のレッカークラーケの大量発生の様な時には漁は行わずに船の備品の整備などを行なっている。
理玖達が向かったその日は漁に出ない日であった様で何隻ものの船が停泊していた。
「あ、礼華隊長。おはようございます。今日は酸性海に差し掛かっているので出航はありませんよ」
と朝早くから港で作業をしていたマゼランが理玖達に気づいてそう言った。
「酸性海じゃ何も獲れないの?」
「獲れなくもないんですが、船の装甲の腐食が激しくなりますし、出航できる船は先日の殲滅作戦の影響で少ないんですよ」
「あー、確かにそれは仕方ないか。じゃあ、それか支部での仕事の手伝いとかあるかな?無ければ訓練させたいから訓練所を貸してくれないかな?」
「仕事は………備品運搬とか要塞の補強工事とかになりますがいいですか?」
「いいよ。あっ、でもあんまり専門的な事はやらせないでね」
「わかりました。……それと先日の夜に中央から礼華隊長宛てに転送魔法で指令が届きましたよ。どうぞ」
そう言ってマゼランは1枚の紙を愛莉珠に手渡して来た。
「あぁ、ありがとう。………………あらま」
「何が書いてあるんだ?お嬢」
指令が書かれた紙を受け取った愛莉珠はその場で軽く読み進めた後そう呟いた。理玖はそんな愛莉珠の様子を見て彼女に聞いてみた。
「いや次は西支部に行く予定だったけど、あっちでボイドのスタンピートが起きちゃったみたいでババアからそっち寄らずに帰って来いだってさ」
「帰るのか?援軍とかやらずに?」
「正規部隊ならやったけど、今の部隊はまだ実戦が足りてない新人ばっかだからねぇ。あっち行ったって足手纏いだよ。無駄な犠牲を出すよりも帰った方がいいよ」
「そういうもんか」
「そういうもんだよリク。まぁ、色々あったけどこれでやっと帰れるってわけさ。そんじゃ、もう少し明るくなったら手伝い始めるよ」
そうして南支部での1日が始まるのであった。




