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極氷姫の猟犬  作者: 骸崎 ミウ
第2章
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目が覚めて〜2

「えっと………理玖くん?大丈夫……ですか?」



「大丈夫じゃないだろ。起きたら性別が丸ごと変わっていたからな。……………まぁ、顔がほとんど変わっていないことが唯一の救いなのか」



『いや救いじゃないですよ縁流さん。なんでこんなことになってるんですか』



理玖は顔を真っ青にして事情を知るであろう2人に聞いた。




「あー……理玖は戦乙女(ヴァルキリー)とビーストの契約については知っているだろ。君はあの時、波長が合う戦乙女(ヴァルキリー)と契約したから身体もそれに合わせてビーストになったんだ」




『でも俺は普人でしたよ?』




「近年になって特殊な出自を持つ者は戦乙女(ヴァルキリー)と契約することで見た目が変わり、更には能力も従来のハウンドとは比べ物にならないくらい強くなるという事例が発生しているんだ。


その出自というのが戦乙女(ヴァルキリー)とハウンドとの間で生まれた子……つまり君の様な出自だ。ただ、ビーストは基本的には女性にしか生まれず、男の戦乙女(ヴァルキリー)は非常に少ないからこんなことは滅多にないんだ」




「しかも、そうして生まれる子は現在確認されている限り100%ビーストで生まれてくることがありませんし、適性だってあります。


戦乙女(ヴァルキリー)側も余程近づかなければ気づきませんから……理玖くんは色んな偶然が噛み合った結果、波長がドンピシャな戦乙女(ヴァルキリー)と出会って契約してしまい、ビーストの女の子になってしまったというわけで…………………ごめんなさい」




『………………状況は理解できました。それで?俺と契約した戦乙女(ヴァルキリー)ってどんな人ですか?俺、名前しか知らないんですけど』




と理玖が聞くと日暮と縁流は顔を見合わせ、不思議そうな顔をした。



「いや、理玖くん?愛莉珠さんのこと知らないんですか?あの『極氷姫』ですよ?先のボイド大襲撃の英雄ですよ?」



『いや知りません』



理玖が断言すると日暮はなんとも言えない表情をした。



理玖は世の中の情勢や流行など興味がない。節約の為に自宅にはテレビはもちろん新聞も取っていない。更には両親も理玖にテルゼウスに関して教えようとはしなかったからもある為でもあるが……



そしてちょうどその時、日暮が持つ携帯から着信が入った。



「……伽耶子。ここは病院だぞ」



「いやこれは管轄長からのですよ。ちょっと失礼」



そう言って日暮は電話に出る為に病室を出た。そのかわりに縁流は理玖に相棒(バディ)となった愛莉珠について簡単に説明した。



「礼華 愛莉珠はテルゼウスの5本指に入るほどの実力者の特級戦乙女(ヴァルキリー)だ。雷と氷の使い手で単独ボイド討伐数は数千は超えている。才色兼備の体現者で最近はメディア界でも活躍している超有名人だよ。」



『そうなんですか。それでその人は今は?』



「今は…………書類の山に埋もれている筈だ。時間稼ぎの為の」



「……?」



縁流の反応に訝しむ理玖。



──とその時、日暮が慌てた様子で病室に戻ってきた。



「た、た、大変です芽衣子!!今すぐ理玖くんを隠さないとっ!『極氷姫』が来ますっ!」



「はぁ?!まさか脱走したのか!?」



「いえ。きちんと全ての作業を終わらせてからです」



「化け物ハイスペックか…………とにかく今はまだ駄目だ!早く運ん─ 『ドガアアアアアアアンッッ!!!』──ッ?!もう来たかッ」



日暮と縁流が状況がわかっていない理玖をベッドから起こして背負い運ぼうとしたその時、病棟内に爆音が響き渡り、建物全体が揺れた。



「いいですか芽衣子ッ!!なんとしてでも理玖くんを絶対死守ッ!!捕まれば最後あんなことやこんなことされて目も当てられない有様にされますよ!!」



「わかってる!!よし理玖!行くぞ──」



日暮が入り口に立ち、自身の武器である鞭を取り出して防衛体制を取り、縁流が窓からの脱出を図ろうとした。……………しかし




「───逃すわけがないでしょ?」




女帝は来てしまった。



声が聞こえた瞬間、青白い光が部屋を包み込んだ。そして、その瞬間縁流は自身の背中の重みが消えたことに気づいた。



「───ッ!?おい理玖!どこだ!」



声が出せないとわかっていても咄嗟に名前を呼んでどこにいるかを探る。そしてその対象は案外すぐに見つかった。



病室のベッドの上。そこに理玖が下側で愛莉珠が上側に覆いかぶさっている。理玖は足をバタつかせて藻搔いているが、愛莉珠はそれをがっちり固定して絶対に逃がさない様にホールドしている。



「──ッ!? ──!!」



「あむっ……んちゅ」



言葉にならない理玖の呻きと愛莉珠の猛烈なキスの音が静まり返った病室に響き渡る。



そしてしばらくすると理玖の動きは鈍くなり……パタリと力尽きた。



「んふぅ〜、ご馳走様でした♪4日ぶりのリク成分補給だよ♪んふふ〜♪」



制服姿の愛莉珠は嬉しそうにそう言って、理玖のできたばかり豊かな胸に顔を埋めて抱きついた。その間、理玖は白目を剥いて気絶していた。





こうして哀れなワンコは女帝の手へと渡ってしまったのだ。




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