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書籍化をガチで目指している皆さんへ

作者: 篠浦 知螺

 コンテストに応募して書籍化を目指している皆さんならば既にご存じでしょうが、キネティックノベル大賞の一部受賞作品について翻案権等に関する契約が解約されました。

 簡単に言うなら、書籍化は無かったことになるそうです。


 一部受賞作品と書きましたが、全部で二十二作品が対象で、これを一部と表現することにも疑問を感じます。

 書籍化を目指している方ならば、一度受賞や書籍化が決定していながら出版中止になるケースを耳にしたこともあるでしょう。


 編集者や編集部とのトラブルに起因するものや、作者やイラストレーター、作品自体に問題があった場合などが殆どで、今回のような一度に大量の作品が出版中止になることは前代未聞……ではないですね。

 小説家になろうで長く活動されている方ならば耳にしたことがあるかもしれませんが、過去にはレッドライジングブックスが大量の書籍化中止をやらかしています。


 こちらはコンテストではなく、書籍化打診を繰り返した挙句のレーベル消滅なので、今回のキネティックノベルスとは少々状況が異なりますが、書籍化を目指していた多くの人が被害を受けたという共通点があります。

 勿論、どちらの騒動においても、全面的に出版社側に落ち度があり、書き手の皆さんには何の責任もありません。


 ですが、手塩にかけた作品にケチをつけられ、もしかしたら別のコンテストに応募していたら、そちらで書籍化できていたかもしれない……などと考えると、やりきれませんよね。

 コンテストに応募するにしても、打診によって書籍化を目指すにしても、心構えをしておいた方が良いと思うのです。


 小説家になろうで行われている最大のコンテストと言えば、ネット小説大賞でしょう。

 複数の出版社が合同で開催するネット小説大賞では、受賞と同時に複数の出版社から打診を受ける場合もあります。


 つまり、今まで選ばれる立場だったのが、ある日突然選ぶ側になることもあるのです。


 ここで考えていただきたいのは、複数の出版社からのアプローチでなくとも、受賞して書籍化するということは、出版社とビジネスパートナーになるということです。

 書籍化を目指してコンテストに応募するのであれば、そのコンテストを主催している出版社が自分に合っているのか、もっと極端な言い方をするなら、その出版社は自分にふさわしいのか考えてみてはいかがでしょう。


 キネティックノベルス大賞については、私も応募を検討したことがありますが、応募は見送りました。

 レッドライジングブックスからも打診を受けましたが、こちらもお断りしました。


 いくつかの理由があるのですが、一番の理由は両社共に出版社としての実績に疑問があったからです。

 レッドライジングブックスは、打診を受けた時点で既刊ラインナップを見ると殆どが一巻打ち切りで、新刊の告知も途絶えていました。


 そんな状況なのに打診を続けていたなんて、どういう神経してたんでしょうね。

 キネティックノベルスに関しては、アニメやゲームに関する実績はあるものの、出版に関する実績が弱いと感じていました。


 新規レーベルがコンテストを開催するケースは珍しくありませんが、その場合でも出版社としてのバックボーンを確かめておいた方が良いでしょう。

 勿論、新規のレーベル全てが駄目という訳ではありませんが、出版社としての下地を持たない所は、それなりの注意が必要です。


 コンテストに応募するということは、皆さんの大切な作品を預けるということです。

 とにかく、お金が欲しいから、どこでも良い……といった考えも否定はしません。


 数撃ちゃ当たる方式で、バンバン応募するのも良いでしょう。

 ですが出版社やレーベルには独自の色があります。


 そこに合致しない作品だとコンテストでも選ばれにくいです。

 心血注いだ大切な作品と思っていらっしゃるならば、応募するコンテストも慎重に選んでみてはいかがでしょう。


 出版社の求める作品と、作者が求めるレーベルが、上手くマッチングするのがコンテストのあるべき姿ではないでしょうか。

 12月19日からは、第14回ネット小説大賞も始まります。


 書籍化ガチ勢の皆さん、どうか楽しい小説ライフを……


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― 新着の感想 ―
・中止になってる作品が大体2021年~2023年くらいにとった作品。 ・2023年にキネマティックノベル(ビジュアルアーツ)はテンセント(中国)の完全子会社になり、社長も変わった。 ・外資系は売上から…
Xで本件について知り、驚きました。 受賞して書籍化の夢が叶ってからのこの結末は浮かばれないですよね……。 受賞作がなんらかの形で次のステップにつながってほしいです。 コンテストや出版社さんについての下…
これはひどい話ですね……。 自分が受賞者さんの立場だったらと思うと、胸が痛いどころの話じゃない。 願わくば、他の良縁があることを願うばかりです。
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