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奴隷の俺

「よし、じゃあとりあえず、これでオーケー?」


「うん。ありがとう!」


「んじゃあ俺行くからさ!よくわかんねえけど、気をつけろよー!」


ぎゅっ


「うぇええっ!?」


まるで逃げる猫を捕まえるみたいに、離れた瞬間にすぐ俺の手を握った。


「ん?ど…したの?」


手を握っている…ただそれだけなのに。いや、それだけでもやばいんだが。そんなことより、この子…すげえドキドキしてる!?


それとも俺!?


「怖い…」


「怖い?何が?なんかあった?まあ、なんかあったからこうなってるんだけど」


「私の入ってるオーガニゼーション、レオナドフ教っていう名前でね。さっき襲ってきた人たちもその関係者なんだ。」


「レオナドフ教?」


「ほら、私のデータベース見ればわかるよ」


そう言って彼女は空中で手をスライドして、データベースと表示された緑の画面を開いた


「なるほど…人数、500人もいるのか…」


「うん。最近勢いがあるオーガニゼーションなんだけどね。実は、っていうか…名前でわかるとは思うけど宗教なんだよ。」


「宗教がなんで?」


「ローカルのせいだよ。ローカルのせいで…この世界での完全犯罪が簡単に可能になっちゃったんだよ。全部あいつのせい。そのせいで、両親も利用されてる」


「え?それ、まじ?」


「うん。両親は現実世界で教祖のレオナドフに洗脳された。今はゲームの世界か、現実世界か、どっちにいるかもわからない。ずっと私は逃げてる。ずっと、1人で…」


「そうだ!そこから抜ければいいんだ、協力する、一緒に逃げよう!」


「ダメ!危なすぎる。それに、あなたにはあなたの目的があるでしょ?」


「じゃあなんで、そんな涙目なんだよ。止めたのもそうだろ?怖いってのも、1人だからだよ。それは全部。仲間がいれば怖くねえ。仲間がいれば楽しいんだ!」


「そんなことないし…別に…」


「だから!無理すんなよ!1人で抱え込むことはダメだぞ!」


「じゃあ、わかった。私、頼ってみる。」


「ああ」


「私の名前、これデータベースに入れてて。これがあれば緊急時に連絡できる。もし連絡がきたら、お願い。」


「ラファ・ミリア!へへっ、いい名前じゃんか!」


「ちょっと、照れるから…!」


「なんでだよ、両親がつけてくれた名前だよ?いい名前だよ!」


「褒められ慣れてないから…!いい名前なんて、レオナドフ教のやつらに言われる名前なんて、もう最悪!ゴミとかフンとか!」


「そりゃひでぇなw」


「あっ!ていうか、コンビニでなんか買おうとしてた?邪魔しちゃったよね?ごめんね、その代わり奢ろっか?」


「いやいや!全然いいって!ほら、早くいけよ!またなんかくるかもしんねえだろ?ほら!」


「ほんと?わかった。じゃあ、またいつか、」


「死ぬなよ?絶対な?」


「うん…!ありがとう!絶対、助けにきてね!」


ビュンッ!


「さってと、ジュースジュースっと。」


絶対、助けてか。


あの牢獄にいたとき、俺はまるで奴隷だった。金持ち風なキラキラした服を着た兄、アーチャー•サンダーランドは、城中の掃除がやっと終わった夜ごろに、俺に偉そうに命令をしてくるのが日課である。それをしなかった日はなかった。


なんだか胸がスッとしたような…?俺はやっと奴隷としてではなく普通の人間として、同じ人間として扱われた。


あれはきっと。命令ではない、本気の「願い」だったんだ!




「おい!さすがに遅いから心配したぞ、サンダーランド!」


「あっ、ニュートン!ごめん!ちょっとさ。」


「ちょっとってなんだよ?ちょっとって!もうレーファンも風呂からあがっちまうとこだぞ?あの長風呂のレーファンがな!」


「ごめんってトニー…!ほら、ジュース!」


「いや、いいけどよ!ありがとな!」


相当喉が渇いていたようだ。トニーはすぐに喉に流し込んだ。


「なあ、これ…ジュースじゃなくて、野菜ジュースじゃね?」


「えっ?俺ちゃんとオレンジジュースにしたよ!そうだろニュートン!」


「これ、野菜ジュースだな…」


「うっそ!!!ミスった…」


「ちょっと、ロビーのトイレでうがいしてくるわ…俺、野菜苦手なんだ…。」


「ごめん!本当にごめんトニー!!!!」

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