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クルパドック大戦㉑無理がある博打

火薬が燃焼するように、火花が瞬く。次の瞬間にはそれが連続的に爆発していた。ニュートンの放ったデトナディアの連続爆発。至近距離においての不意打ちだったが、黒煙の舞う中には、フォーサーが無傷のままで立っていた。変わったのと言えば、黒い服の一部がより焦げて濃くなっていただけだった。


「快楽?人を殺すのがそんなに楽しいことか?俺には、、まったく理解ができん。」



今のニュートンには、訳を説明されようとも到底理解する気などなかった。聞くほどがないまでに、理解の出来ないと断定が付く領域なのだった。目を細めながら、猛る心臓に合わせるように、フォーサーは空に広げる腕を収めて話した。



「理解ができないっていうかさ、そもそも俺は理解をしてもらおうなんて思ってないわけ。そもそもお前なんかが理解できるわけないんだよ。俺には俺の理解があるし、お前にはお前の理解がある。これは生きているなら普通は知ってる常識だ。そんなことも分からないで、俺のことを探るなんて浅はかだよ。そう思わない?」



「浅はか、よくもそんなことが言えるな。聞いていれば、人間の心だのなんだの言って、あくまでも自分は、まだ人間らしさに擦りついているじゃねえか。そういうところが腐ってるって言ってんだよ。」



さきほどの爆発魔法によって、ニュートンとフォーサーには5メートルほどの距離が開かれてていた。遠距離であろうが、近距離であろうが、攻撃はいつでも可能なこの間合いにて、なぜだか二人はなかなか攻撃を行おうとはせず、今にも溢れそうなほどの熱をより高めていった。



「なんか勘違いしてない?人を殺す快楽とさ、殺す人に対する優しさは別だよ?だって痛いじゃん、人間が苦しそうにすがってくるのは。せめて、楽になってほしい。たくさんもがいて、痛くて、そんな中で死ぬなんて想像もしたくないから。そうするだけだ。」



「やっぱり、お前は間違ってる。理解ができるかできないかの前に、まずは人間としてのあり方が大事だ。根本的にお前は絶対に違うんだ。」



「そう。」



文字通り、この戦いの火蓋を切ったのは、ニュートンだった。高まった熱を全て技に込めて解放をするように、バリタを腕で振ると、ニュートンは唱えた。



「ファイアーイフリートッッッ!!!」



「くだらないねえ、、」



燃え上がる炎が渦を巻いて、ゴーゴーと雷のような強い響音を立てた。この魔法は、あまりに威力が強く、場所の離れた森林にまで大きな延焼を及ぼしていた。だがしかし、この激しい炎であっても、フォーサーの服の布、その繊細な一つの糸ですら、燃やすことは叶わなかった。



「意味がないんだよ、お前の攻撃。」



「どうなってん、だよ、」


痛がる仕草の一つも見せず、未だひょうひょうとした様子で言葉を放つフォーサーに、ニュートンは心臓を撫でまわされるような、チクチクとした恐怖感に体を刺されて翻った。ただそれでも、「逃げる」という意思や意識は気取られないように、背中を見せることも後ずさりをすることもしなかった。



「だからお前には理解できねえんだよ。強さにあまりに差がありすぎる。せめてそれだけでも覚えておけ。」


力の差が、この二人の間にある距離の、どれほどまでに短いかを示すかのように、彼ら二人の間にある、透かして見ることの出来ないその差が、いかに巨大であったことだろうか。フォーサーはすでにその差を見透かした上で、自分の手の上で転がすことの価値すらもないこの人間に対して、興味などはとっくに薄れていたのだった。



「でも、だからって、、戦わない理由にはなんねえだろうが・・・・・・!!!」



ニュートンはそれでも未だ戦う姿勢を貫く。当然、ニュートンからすれば、本当は今すぐにでも逃げたいという場面であった。だが、それでは仲間に立てる顔もないし、万が一にでも仲間の元にこの化け物が送り出されでもしたらと思うと、不安の音が鳴りやまなかった。


だが、その思いは形、または凹凸が違おうとも、同じくフォーサーにも戦う意思はなかった。さっきまで必死に口論をした「理解」の結論は、もしかするとここで出ていたのかもしれない。二人は知らず知らずのうちに、「共感」をしていたのである。



ニュートンは死を覚悟しきれない状態で、とりあえず逃げれればいいかという曖昧な狙いを定めてバリタを構える。フォーサーもなんとなくそれらしくはするけど、とりあえず喰えればいいか、そんな中途半端な本音を出し切れないまま、バリタを構えた。



「ソニック、」



「ソニックブーム(衝撃波)か、」



「レンドラピオ!!!!(加速)」



「移動か!?」



格上の足下をすくってやる近道、いや、唯一の方法とするならば、やはり不意打ちか。瞬時に考えた、技をすり替えるという一見シンプルすぎるような作戦。だが、これはシンプルであっても、この技一発に賭ける価値は十分にあった。


(スラフストラフ)



最大までに加速をすることで、相手の攻撃が通らない間合いに入る。完璧な間合いを見つけると、次には、スラフストラフで打撃技を一定時間の内強化をした。賭ける価値とは、まさにここだ。スラフストラフがかかった状態の拳が当たれば、たった一発だけで、相手に大ダメージをくらわすことが出来る。倍率が高めの可能性、普通なら賭けない博打を賭けるのは、他の可能性が0であったからだ。


もうこれ以外にない、この一発に、



「全て賭ける!!!」



「テルケニス(念動力)」



「は。」



念動力魔法、不意打ちをしたほうが、なぜだか不意打ちをくらう不条理。



「死ね。」



念動力魔法により体の向きを後ろに変えられ、背中を取ると、フォーサーは乱暴にそのまま手で顔面を掴んだ。少し手探りをした後、髪を引っ張り出して自分の右膝へ寄せると、何度も上下に強く打ち付けた。釘をハンマーで打ち尽くした瞬間みたく、フォーサーは突然満足し、ニュートンの体を足下に放り投げる。



足下では、白目を剝いたニュートンが、大量の赤い血を吐いて地面を濡らしていた。


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