裏切り者
醜い、醜い、さわやかな緑は血のため池となって俺の前に現れた。ぶくぶくと膨らむ恐怖と、怒りの感情は俺の体を止める原因であって俺の体を動かす大きな要因でもあった。
「なんなんだよ………これ。」
よく見るとお腹は残って頭だけ無い死体も転がっている。手や足が逆の方向に曲がって、俺の方に指を指していたりする。血のため池?それどころかここはまるで死者の集う地獄のようではないか。
少なくとも天国ではない。
レンドラピオ
「何がどうなってんだよ、おかしいだろ、いくらなんでも。まさか本当に俺たちがいない短時間で団員がほとんどやられてしまったってのか?」
事実を確認するためにまずはいつもの宿舎へと入ってみることにした。
「………誰かいますかー?」
誰もいない廊下にそんなことをつぶやいてもまあ誰も出てこないのがオチである。でも、それをあっさり認めたくは無かった。団員で溢れかえっていたこの巨大組織が、そんな簡単に、俺の仲間が………
みんながそんな簡単に負けるわけがない、相手は相当な猛者。いや、それとも強い信頼で囲まれているやつがスパイだったのか?そのどちらかだろう。
「かぶっ、かかかかかっ。」
「ん?なんだこの声、音?」
廊下の曲がり角、薔薇の庭園に続く出口がある場所だ。そんな場所から声か音かわからないような、何かが聞こえた。
「におい、、」
いつもは薔薇が華やかな香りを廊下いっぱいに漂わせる。それなのに今日、風が運んできたにおいはいつもと違う、変なにおいだった。
「この香り………。っ!?」
「おい、誰だ!なにやって、!っは、、!?」
「くちゃ、ぐちゃあああ。」
「臓器が、喰われて………!」
腹が裂かれて真っ赤な血が噴水のように強く噴射して飛んでいく。それを全身に受けても怯まずにただただその倒れた人物の臓器だけを無心に喰らう。
だが、俺が声をかけたタイミングでこちらを見てにやっと笑った。その微笑みは優しさでもなんでもなく、純粋な快楽………
「お前、なんで、だよ。」
「スキャロップスッ!!!」
真っ赤に染まろうともその顔は鮮明に思い出される。その顔こそ、宿舎の部屋が同じで毎日隣で寝ている団員の、スキャロップスだった。
「許さねえ、絶対に!!!俺はお前を信じていた、なのに。なんでこんなことをした!答えろスキャロップス!」
「まったく愚かな、罪ぶかき人よ。この俺とかつての仲間の違いすらも分からないとは。まあそれがこの俺の力なのだから仕方ないか。」
「その声………スキャロップスじゃ、ねえ。でもじゃあ、誰なんだよ!」
「お前は俺の話をまったく聞いていなかった、だからわからないのだろう?教えてやろう、この俺の名は………」
「フォーサーだ。」
「フォーサーっ!!」
「キャノンデビエンド!!!」
「バリアゴールズ」
ドカッバアアアアンッ
ドアが勢いよく横に開いて、風にのせられたままフォーサーは薔薇の中に体が吹っ飛んでいった。
「ほう、面白い。バリアをしてもこれとは。」
「まだまだあっ!デトナディア!!」
「ファイアーイフリート!」
「うわっ!!!」
魔法が跳ね返された………!?俺の魔法が、こんなの初めてだ。ファイアーイフリートはなんとか避けたけど、デトナディアが、爆発するっ!
ドカアアアアアアアン
「ぐっが、、」
意識がぼんやりとする、目の前がぼやける。周りにある薔薇が、植物が、焦げて黒い色に染められていく。どんどん深層に向かって………
「何ねてんだよー。もうおしまいか?面白くないねえ。これだからガキは。」
バチッ
「っ!」
フォーサーは俺に近付いて耳元で罵倒を繰り返してきた。さらに、胸ぐらを掴んで頬を思いっきり手のひらで引っ叩いてきた。
「おまえ、は、許さねえ。」
「なんだって?はあっ?もう一回言えよ、ゴミが。ほんとにクソガキが俺に勝てるとでも思っているのか?調子に乗るのも大概にしろよ!」
「うわっ!」
顔がへこむんじゃないかと思うくらいに、足を全力で振って俺の頭を本気で打ちつけてきた。痛みががんがんとリズムを立てて俺の中に刻み込まれていくのをぼんやりする意識の中でかろうじて感じていた。
「さあ、そろそろこの体も飽きてきたころだ。やめにしよう。」
スキル発動




