新たな師団
「……ところでよ、その情報は他に誰に伝えてるんだ?」
「誰にも伝えてないわよ。」
「え!?なんで?」
「わからないの?オーガニゼーションのトップがローカルと繋がってたってことはまだ他に協力者、スパイがいるかもしれないじゃない。」
「じゃあ俺がスパイだったらどーすんだよ。」
「それはない。…私はサンダーランドを信頼してる。だから言ったの。」
「トニーには言っていいか?トニーなら俺が信頼してる。」
「サンダーランドが言うならいいけど…トニー以外の団員には絶対に言わないで!」
「……じゃあさ、ミリアはどうだよ。ミリアはまだ入って1ヶ月、スパイの可能性は0に近いだろ。」
「そんなに信頼してるなら勝手にすればっ!」
「え?なんで怒るんだよー。ケラーも信頼できる相手じゃん。」
「そういうことじゃなくて!!」
俺の前を歩いていたケラーの背中が途端に振り向いて大声を出した。
「声でかい……」
「本当に鈍感。もういい加減気付きなよ、サンダーランド。」
ケラーが歩き出すのをやめて、むしろ俺にどんどん近付いてきた。
「どういうこと?」俺にはさっぱりわからない。ケラーが何を思っているのか、何を考えているのか。鈍感って、なんのことだよ。さっきの話はどこへいったんだ?そんな疑問が頭に残って、その答えを知るために俺は不思議そうな顔をしてみた。
「なにその顔………本当にわかってないんだね。じゃあ、なんで私がサンドイッチ持っているのに食堂に行ったかわかる?」
「さっきの話をするため?」
「それもあるよ。でも、よく考えてよ。私は事前に食堂でサンドイッチを買ってた………二つ。」
「え…?」
「私…サンダーランドと一緒に、ご飯食べたかったんだよ。」
「いっつも、ミリアとばっかり食べて…私も本当は一緒に食べたかった。でも、それが言えなくて」
◆
「ミリア、今日のご飯なに?それ美味そうだね!」
「でしょー?でも教えないっ!」
「なんでだよっ、」
食堂の真ん中のテーブルで2人で楽しそうにご飯を毎日食べていたのを私はずっと食堂の外で見ていた。
おかしい、本当は見たくもないはずなのに。なんでこんなに見ちゃうんだろ。私っておかしいのかな?変なのかな?
2人分のサンドイッチを食べるのはこれで何回目なんだろうか。いかんせん量が多くて辛い。
サンドイッチを2人分、食堂で買っておいて後で2人で食べる。このイメージを何回も繰り返した。でも、繰り返しても繰り返してもサンドイッチを買うことしかできなかった。
なんなの私……
なんで1人で勝手に、泣いてるの?
◆
「一緒に食べてくれる?サンダーランド。」
「全然いいよ!いっぱい食べようぜ。じゃあミリアにご飯断っとくからここで待ってて!すぐ戻るから。」
「うん。」
意外だった。まさかそんなことを思ってたなんて………あの真面目で石みたいに硬いイメージのあるケラーからそんなことを。
でも…嬉しいな。
食堂に入っていつもの真ん中のテーブルで待ってくれていたミリアに俺は何回も「ごめん」と言って、ご飯を断った。
「ただいま、ほら食べよう!」
俺は外で待っていたケラーの隣に座って手に持っていたサンドイッチを貰い、一口食べた。
「うまいなこれ!ケラー、これいいね!」
「う、うん…」
「どした?おーい、」
「つい……嬉しくて、なんか顔見れないっ。」
「見てくれよー」
「鈍感すぎ………」
「?」
◆
「ごちそうさまでした。めっちゃうまかったな!また今度一緒に食べよーな!いつでも誘ってもいいから!」
サンドイッチのごみを捨てたくてゴミ箱を探したが近くにそれっぽいのはなかったため、そこから走って探しに行こうかと俺は立ち上がった。
「うん…。あれ、ていうか次の時間って確か私たちなんかあったよね。」
ケラーが針と数字が極端に小さい丸い腕時計を見つめながら話した。
「あー、なんか何段だったか忘れたけどエミリアーツ師団よりもすごい師団の話が聞けるんだっけ。早く行こ!」
そういえばと頭を回転させれば数日前にお知らせであったような気がする。必ずその師団の話を聞かなきゃいけないって。
「場所は教会!ここから少し遠いから急ごう。」
「あ、ごめん、先行っててくれ。ミリアも連れてこないと。」
「あ、うん!遅れないでよ…」
ケラーの声のトーンが急に低くなったため俺はそれを無理やりあげるようにテンションを上げて口を開けた。
「だいじょーぶ!」
◆
「と、いうわけで…今日の魔法講義を担当する、フォーサーだ。どうぞお見知り置きを。」
「師団!魔法段はいくつですか?」
「19段だよ。」
19……!?
「まあ、君たちが束になってかかってきても俺には勝てない、それくらいの魔法段だと思ってくれればいいですよ。」
何者だ……この人、、




