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スパイ

「ねっみい……」


宿舎から見える太陽は今日も相変わらず眩しくて、反射的に目を細めた。

まあ太陽なんて見えなくともこの眠い朝に目をいきなり見開くのは無理な話だが。


「おっはよー!!!!!!」



「ばっ、!!ミリア、静かにしろ!まだ2人…いや他の部屋の人も寝てるから…!」



「なんだよー別にいいじゃん。」



「ダメだっ!前も言っただろ?」



ミリアがこのオーガニゼーションに入ってからの1ヶ月間、毎日同じようなやりとりをしているような気がする。ルール、マナーを守って行動する、まさかミリアがここまでそれを出来なかったとは…


まるで、ユナイテッドにいた時の自分のようだな。



「ほらほら、喋りたいなら外いくぞ。」



「うん、わかった!」



明るく相槌をうって、ミリアが太陽よりも眩しいくらいの笑顔を見せてきた。


俺はまた目が痛くなって少し細目になった。



「なんか嫌そう…!」



「違う違う、寝起きだから…さっさといこーぜ。」


 ◆

「困ったことないんだな?それならよかった。」



「話題ないからって毎日その質問されたら困るよw」



「いや、別にそんなんじゃない、話題は……」



「あのさ、そんなことより…サンダーランド。ずっと聞きたかったことがあってさ。」



「なに?」



ミリアが俺が座ってた地面の隣にそっと座って静かな落ち着いた声で言った。



「サンダーランドは、このゲームをいつまで続けるの?」



「このゲームを…いつまで?」



確かに、そうだよな。このゲームに入ってから数ヶ月…まだほんの数ヶ月…でも、たくさんの経験をしてきた。なにかに導かれるように入ってきたゲーム世界、あの時、俺を導いたのが父、ローカル•サンダーランドだとここまで信じてきたがあれは本当に父なのだろうか。



母に次期国王として贔屓されている兄が確かこんなことを言っていた。



「お父さんは優しかったよ。俺にも、いろんなものをくれた。差し出してくれた。あの時はまだ生まれていなかったお前にまでお父さんは何かをあげようとしていたぞ。」



牢屋、ボロボロの俺の前に現れて兄は父を語った。



「なんで…そんなことを俺に、今更言うの?」



「お前は奴隷だ、俺たちの奴隷。それは間違いない。だが、一応伝えておこうと思ってよ」



「お父さんは死んだ。」そんな言葉を耳が痛くなるまで繰り返された、覚えさせられた。まるで呪文のように、暗号のように…この頭に染み付けられたんだ。



そんなお父さんがあいつの言う本当に優しいお父さんなら、なぜこの平和なゲーム世界を地獄へ変えたのか。本当にそれはお父さんなのだろうか、それともあいつの言っていた優しさなど薄っぺらい嘘の優しさだったのか。



「サンダーランド…大丈夫?泣いて、」



「あっ…ごめん、、」



「別に無理に考えなくてもいいよ!ごめん、それだけ!」



「ありがとな。」



グーッ


「わっ!あれ、私そんなお腹減ってたの!?」



ミリアがあたふたあたふたと動き出したのを見て俺もその音からうつったのかお腹が減ってきた。



「なあ、食堂行こうぜ!朝ごはん、食べよ!」



「う、うん。」



 ◆

「朝ごはん何にする?ミリアー」



「んー、私は…」



「おはっ………よ!サンダーランド!」



「お!おはよ!起きてたんだな、ケラー」



「ずっと起きてたわ。朝ごはん食べたくなって。」



「ケラーちゃんおはよ!奇遇だね!」



「…?てかケラーお前サンドイッチ持ってんじゃん、そっちの手。」



「あ……そうだ、けど。」



「なんでサンドイッチ2つ?結構でかいじゃん、それなのにまだ食べるの?」



「ねえ…サンダーランド、ちょっときて!」



「えっ!?なんだよ、俺ミリアとご飯っ!」



「ちょっ……」



「ごめん、待ってて!ミリア!」



「なあ、どうしたんだよ、もう食堂抜けたぞ!」



ケラーは黙って俺を引きずるように食堂外の廊下まで引っ張ってきた。

ケラーに何度も話しかけたが、一切応答がないために俺もしびれをきらして遂に大声を出した。



「ケラー!」



「……ごめん、どうしても話したいことがあって。」



「なんだよ、食堂じゃ話せないことなのか?つーかトニーとかスキャロップスとか他の奴らいっぱいいるだろ?なんでわざわざ俺なんだよ。」



「いいから聞いてよ!一回黙って、」



ケラーが珍しく冷静を保てなくなったのはその赤い血の上った顔を見てすぐに理解した。



「…ごめん、言いすぎた。」



「おかしいのよ、ここ最近…キャラスフェインガーさんを見てないのよ。」



「このオーガニゼーションのトップ……だったよね。」



「うん。」



「でも確かあの人って運営関係者でしょ?ならそっちの仕事が忙しいんじゃねえのか?」



「いいや、そうじゃない。私…実は入っちゃったのよ、あの人の部屋に。」



「は!?それはやべえだろ…!」



「気付かなかった?あの人の行動が変なことに。」



「変…?どういうこと?」



「あの人の部屋にはワープの石がたくさんあった。でも、大事なのはそれじゃないの。その大量に積み上げられた石の横にね、不思議なマークがあった。海賊が旗とかにマークつけるでしょ?それと同じようにこのゲーム世界でもオーガニゼーションにはマークをつけれるの。」



「そのマークが?」



「ずっと隠してたらしいけど、ダイヤの図書館という場所に行ったらすぐにわかったわ。そのマークが…ローカル•サンダーランドのいる、アサシンだってね。」



「は…?」



「間違いないわ、キャラスフェインガーはローカルと、繋がってる。つまり…スパイだよ。」

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