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第82話 辻おじよっわwwwwww


「やった……! オールキル……!」

「すげぇ……」


 初心者だと思っていたひかるんは、めちゃくちゃに強かった。

 俺が足を引っ張ってても、余裕で勝てるくらいだった。

 こういうの、キャリーっていうんだっけか。

 経験者のカレンも、悔しがりながらも感心している。


「ひかるん……本当に強いね……。どのくらいやってるの……?」

「ほんの1万時間ほどですよ。あはは……」

「すごい……私の倍……」


 ていうか、カレンさんも5千時間やってるんすね……。

 ひかるんがやってきてから、配信の視聴者数はさらにうなぎ登りだった。

 今や俺もひかるんも世界的な有名人だ。

 それに、ひかるんのゲームの腕はものすごい。

 あっというまに、視聴者は500万人になっていた。

 それほどまでに視聴者が増えると、当然、このアカウントが俺のアカウントだとバレる。

 俺たちが今このゲームをやってることも、世間に筒抜けだ。


 だから、マッチングした相手チームが、チャットで話しかけてきた。


【うお……!? 相手辻おじじゃん……! すげー! 有名人じゃん】

【マジだ……! よろしくお願いしますー】


 まあ、そりゃあ相手チームにも知ってる人いるよな……。

 なんだか、下手なのに目立つの嫌だなぁ……。

 そう思っていると、今度は俺たちのチームは負けてしまった。

 すると、先ほどの相手チームからまたチャットが飛んできた。


【辻おじよっわwwwwww】

【ひかるんにキャリーしてもらっててダセえwwww】

【センスなさすぎ】


 めちゃくちゃ煽られた……。

 なんだろう、すごく悔しい……。

 ひかるんが、そんな俺を慰めてくれる。


「ま、まあ……ハヤテさんはまだ始めたばかりですし……。気にすることないですよ! ああいうのは、このゲームでは挨拶みたいなものです」

「そ、そうはいってもだなぁ……さすがにこれ以上配信でこのゲームやるのは、俺も申し訳なくなってきた……」


 このゲームには、それぞれのプレイヤーにランクというものがあるらしい。

 ランクはブロンズからはじまり、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイア、マスター、グランドマスターと段階がある。

 このランクを賭けて戦っているようで、負ければ降格し、勝てば昇格できるのだそうだ。

 俺は認定戦の結果、シルバーだった……。

 ちなみにカレンはマスターで、ひかるんはグランドマスターだそうだ。


 これ以上は、俺が足を引っ張ってしまう。

 カレンたちのランクを下げてしまうことにもなるからな……。

 俺も、足を引っ張らないくらい、うまくなりたい。


 それに、これはあくまでもゲーミングPCの宣伝のためにやっているのだ。

 そこで俺が醜態をさらしていては、宣伝にもならないだろう。


「よし、二人とも、今日はありがとう。俺、次にやるまでにうまくなっておくよ!」

「そのいきです、先輩!」


 配信の終わり際、コメント欄が若干荒れる。


【ちょっと今回の辻おじは残念だったな……】

【辻おじにも苦手あるんだな……】

【これ以上は他のプレイヤーに迷惑だから二度とやるな】

【さすがに酷い。トロール。迷惑】

【出直してこい】

【さすがに下手すぎて見ててイライラするわ】


 あれ……もしかして俺が悪いのか……。

 初心者だから仕方ないと言い聞かせてたけど、コメント欄が若干荒れている。

 俺って、そこまで酷かったのか……。

 ていうか、ゲームの世界って結構弱者に厳しいんだな。

 なんか、このままじゃ悔しいな……。


 ということで、俺はソロで鍛えることにした。

 幸い、コメント欄がいろいろ教えてくれた。

 俺がソロで配信をやり始めると、知らないIDからDMがきた。

 誰だろうか……。

 開いてみると、それは太陽という名前の人物だった。

 いったいなにものだろうか……。

 太陽のプロフィールに飛ぶ。

 すると――。


「うわ……!? すげえ人じゃん……!?」


 なんとその人物は、オーバーウィッチのプロ選手だった。

 しかもなんと日本人で唯一オーバーウィッチプロリーグに参加したことのある選手だそうだ。

 そんな有名人が、俺になんのようだろう。って、俺のほうが有名人なのか……。

 でも有名人になると、こんなふうに有名人から近寄ってくるもんなんだなぁ……。


【DM失礼します。辻おじさんがオーバーウィッチ強くなりたいとのことで、もしよかったら僕がいっしょに練習みましょうか?】


「まじかよ……!? トッププロの人が教えてくれるのか……!」


 これはありがたい申し出だった。

 俺は、すぐにお願いしますとDMを返した。


 その日から、俺と太陽選手との地獄の特訓が始まった。


「おお……! 辻風さん、なかなかいいセンスです……!」

「はは……! 慣れてきたら楽しいですね!」


 俺は、ヒールしまくった。

 もともと、ヒールをするのは得意だ。

 ゲームの中でも、ダンジョンにいるのと同じようにヒールをすればいいだけのこと。

 慣れれば、なんということはなかった。

 俺のランクはどんどん上がっていった。

 

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