第41話 深層へ3
ダンジョンから出て、ひかるんを病院に連れていく。
どうやら疲れが出ただけで、命に別状はないようだ。
俺はとりあえずひかるんが大丈夫だったことを、ツイートしてファンに知らせておく。
「はぁ……ひかるん、頑張ったもんなぁ……」
グレートオーガと対峙していたときのひかるんは、尋常じゃないくらいに震えていた。
きっと怖かっただろう。
それは、俺が想像するよりもはるかに大きな恐怖だっただろうな。
そりゃあ、倒れるのも無理はないか。
しばらく俺はひかるんの病室で付き添っていた。
こんなときだというのに、ひかるんの家族らしき人はやってこない。
一応病院の人が連絡したはずだけど……。
なんでだろうか。
しばらくして、ようやくひかるんが目を覚ました。
「ここは……?」
「ここは病院だ。もう安心だ」
「そう……ですか……。ありがとうございます。もう少しで下層クリアできそうだったんですけどね……はぁ……。またお願いします」
「ああ、うん。俺はいつでも付き合うけど……でも、どうしてそこまでして……?」
ひかるんはそこまでして攻略したいのだろうか。
そういえば、もともとひかるんは攻略組さながらの武闘派だったな。
だがあまりパーティーなんかは組まずにソロでやっていたっけ。
ひかるんははっと、なにかに気が付いたような顔をして、自分の帽子を押さえた。
ひかるんはいつも、帽子をしていて外さない。
「……っ! あ、あの……辻風さん……帽子の中……見ましたか……?」
「ん? いや……別に……?」
「そ、そうですか……ならよかったです……」
なぜそんなにも帽子の中を気にするのかはわからない……。
もしかして散髪失敗したのかな……?
「辻風さん、いや……ハヤテさんと呼んでいいですか……?」
「うん、いいけど……」
「私、どうしてもまた下層に行きたいんです……! ハヤテさんとなら、今度こそ下層をクリアできる気がするんです……!」
「それはいいけど……でも、また倒れるかもしれない。少し休んだほうがいいですよ」
なぜひかるんがここまで下層にこだわるのか、俺には謎だった。
そのときだった、遅れて、ひかるんの両親らしき人がやってきた。
初老のおばさんだった。
ひかるんの母は、まるで娘に向けるのにはふさわしくないような目つき……まるでゴキブリでも見るような目つきで、ひかるんのことを見下した。
そして、あろうことか娘に対してこんなことを言ったのだ。
「薄汚い……。迷惑をかけるなとあれほど言ったでしょう……まったく……」
俺は、怒りが沸騰しそうだった。
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