第38話 はえーやっぱおいなりさん好きなんやなぁ
いなりがうちに加わったので、いなりの紹介動画を撮ることにした。
俺はカメラのスイッチをオンにする。
「はいどうもー辻ヒールおじさんこと辻風ハヤテです。今日は新しい家族を紹介したいと思います!」
『おー!待ってました!』
『wkwk』
「狐のいなりです!」
俺はいなりを抱っこして、カメラに向けて紹介する。
いなりの小さな手を持って、カメラに向かって手を振る。
『おおー!』
『かわいい……!』
『いなりちゃん!』
『お狐さまだぁ』
「じゃあ、いなりには芸を披露してもらおうかな」
俺はボールを手に持って、いなりに向かって投げた。
するといなりはそれを鼻先で器用にキャッチし、ヘディングをしはじめた。
「キュルキュル!」
「よしよし! すごいぞ!」
『いなりちゃん!器用!』
『かわいい!』
『いなりすごい!』
うまくできた褒美に、俺はいなりにいなり揚げを投げる。
「さあいなり! ご褒美だぞー!」
「キュルキュルー♪」
いなりはいなり揚げに夢中でかぶりつく。
いなりは本当にお稲荷さんが好きだなぁ。
『いなりがいなり食ってて草』
『共食いじゃん』
『はえーやっぱおいなりさん好きなんやなぁ』
『くぁいい』
『おいしそう』
いなりの動画は好評で、かなりの再生数になった。
◇
いなりの動画をアップロードして、一息ついたころ。
LINEに、ひかるんからメッセージが届いていた。
なんだろうか。
【ひかる:辻風さん。さりーにゃさんとのコラボ見ました! 楽しかったです!】
お、ひかるんもよう見とる。
わざわざメッセージまでくれて、ありがたいな。
【ありがとう! ひかるんの昨日の動画もよかった!】
俺が返事を返すとすぐにまた返信が帰ってきた。
【ひかる:その……私も辻風さんとコラボしたいです。駄目ですか……?】
ひかるんとコラボかあ……。
たしかに俺としても、それはぜひやってみたいんだけど。
でも、ひかるんとは滝川アソレのときのことがあるからなあ。
変に表で仲良くしてまた炎上しても怖い……。
だけど、まあ、大丈夫だとは思うけど。
前のはアソレが暴走したせいでああなっただけだからな。
さすがにひかるんのまともなファンは、コラボくらいではなんにも言わないだろう……。
よな……?
それに、最近の俺はカレンやサリナさんともたくさんコラボしている。
だから、ひかるんとだけ噂されたりはしないはずだ。
他にもいろいろコラボしているから、ガチ恋勢も変な勘違いはしないだろう。
よし、大丈夫だ。
一応ひかるんにも確認だ。
【ダメじゃないけど、逆にいいの? 俺とコラボして、ファンの人とか大丈夫?】
【ひかる:大丈夫です。私はなにを言われても、辻風さんとコラボがしたいです!】
【じゃあ、ぜひお願いします】
そこまで俺とのコラボを希望してくれているのなら、断る理由はない。
あのひかるんがコラボしてくれるなんて、ありがたい話だ。
これにてこの章は終わりです
次回からはいよいよ物語の核心に迫っていきます!
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