彼と彼女 ~好きになったのは俺~
部活が終わって、校門のそばまで来ると彼女がいた。
視線の先には、あいつと彼女。
二人で帰る後ろ姿を君はじっと見ていた。
友達の彼女を好きになる趣味はなかったんだけど。
彼女はあいつを友達と言う。気持ちを許せる大事な友達だと。
「友達って言葉で航太を縛らない方がいいよ」
一度、彼女に言ったことがあった。
俺の言葉に彼女は意味が分からないというように、ポカンとしていたけれど。
あいつの気持ちは、言葉の端々から感じていたから。
その時は、あいつの味方だったんだ。
友達の好きな女の子。
知っていたから、どんなに惹かれていても、自分の気持ちを抑えていた。
これ以上、好きにならないように。
それなのに、いつの間にか――
あいつは、彼女の親友とつきあい始めた。
何があったのかは知らない。あいつの心の変化に驚いたけれど。
でも、チャンスだと思ったんだ。
彼女に近づく、またとない絶好のチャンスだと。
これからは航太に遠慮する必要はないだろう?
あいつは彼女を諦めたのだから。
だから、何の問題もないだろう?
あいつには今、別の彼女がいるしね。
俺だって、ずっと彼女のことが好きだったから。
俺はあいつみたいに簡単に諦めたりしない。
必ず、彼女の心を手に入れる。
俺は友達という立場を最大限に利用する。
必ず、彼女を俺のものにするために。
そのための第一歩。
彼女の視線の先に誰がいるかなんて知らない。
俺は彼女だけを真っ直ぐに見て、声をかけた。
「陽菜ちゃん。今帰り? 一緒に帰ろう」




