彼と彼女 ~僕だけの秘密2~
あれ? 陽菜だ。
友達と遊びに行く途中、反対の歩道に陽菜の姿を見つけた。
今日は早いな。部活終わったのかな?
陽菜が遅いだろうと思って、友達とも約束したんだけど。
「ごめん。用事思い出した。帰るね」
呆気にとられた友達をおいて走り出す。
反対側だから、横断歩道を渡るのが面倒だけど、信号が青になったと同時に駆け出してゆく。
人混みをかき分けて、やっと、後ろ姿を見つけて、
「陽菜」
呼ぶと、振り向いてくれた。
「歩夢」
僕は驚いた顔をしている陽菜の首筋に抱きついた。
陽菜とは身長が同じくらいだから、腕を回したらちょうど首に来るんだよね。
ホント、身長は欲しい。
理玖は180くらいあるって言っていたし、航太も175,6あったはず。せめて航太くらいは欲しい。
そうなんだよね、陽菜を胸元あたりで抱きしめたいもん。
僕はまだ中1で、成長期。これからだよね。
「ちょっと、歩夢ってば、離して」
焦った声で僕の腕を振り解こうとする。
僕だって男だよ。そう簡単に腕から逃がしたりしない。
「えー。いいじゃん、いつものことじゃん」
陽菜に抱きつくのは日常茶飯事で、騒ぐことでもないのに。
陽菜だっていつも抱きしめてくれるのに。
「それはそうだけど」
「ほらあ」
「でも、みんなが見てるから。いくらなんでも恥ずかしいから」
ここは公道で公衆の面前。
確かにたくさんの人が行きかっていて、僕らに注目しているのはわかったけど。
でも、僕は誰に見られても構わない。どこだろうとね。
それに、それ以上のことを陽菜としている僕としては、抱きしめるくらいかわいいことだと思うんだけど。
さすがに陽菜には言えないけど。
「歩夢。お願いだから。離して」
陽菜の本気の声がした。
本気で嫌がってる。
仕方ない、これ以上は止めとかなきゃね。
あとが怖いから。
機嫌を損ねたら、しばらく口を聞いてくれないし、家にも出入り禁止になっちゃうんだよね。
それに、陽菜を抱きしめられなくなったら困るし、嫌われたくないし。
僕は渋々、自分の腕をほどいた。
目の前には陽菜の顏。
ほっとしている陽菜がいた。
まっ、いいや。
帰ってから、思う存分抱きしめよう。




