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春花秋月  作者: きさらぎ
18/26

彼と彼女 ~僕だけの秘密2~

 あれ? 陽菜だ。


 友達と遊びに行く途中、反対の歩道に陽菜の姿を見つけた。


 今日は早いな。部活終わったのかな?

 陽菜が遅いだろうと思って、友達とも約束したんだけど。



「ごめん。用事思い出した。帰るね」


 呆気にとられた友達をおいて走り出す。


 反対側だから、横断歩道を渡るのが面倒だけど、信号が青になったと同時に駆け出してゆく。 




 人混みをかき分けて、やっと、後ろ姿を見つけて、


「陽菜」


 呼ぶと、振り向いてくれた。


歩夢あゆむ


 僕は驚いた顔をしている陽菜の首筋に抱きついた。


 陽菜とは身長が同じくらいだから、腕を回したらちょうど首に来るんだよね。

 ホント、身長は欲しい。

 理玖は180くらいあるって言っていたし、航太も175,6あったはず。せめて航太くらいは欲しい。

 そうなんだよね、陽菜を胸元あたりで抱きしめたいもん。


 僕はまだ中1で、成長期。これからだよね。


「ちょっと、歩夢ってば、離して」


 焦った声で僕の腕を振り解こうとする。

 僕だって男だよ。そう簡単に腕から逃がしたりしない。


「えー。いいじゃん、いつものことじゃん」


 陽菜に抱きつくのは日常茶飯事で、騒ぐことでもないのに。

 陽菜だっていつも抱きしめてくれるのに。


「それはそうだけど」


「ほらあ」


「でも、みんなが見てるから。いくらなんでも恥ずかしいから」


 ここは公道で公衆の面前。

 確かにたくさんの人が行きかっていて、僕らに注目しているのはわかったけど。

 でも、僕は誰に見られても構わない。どこだろうとね。


 それに、それ以上のことを陽菜としている僕としては、抱きしめるくらいかわいいことだと思うんだけど。

 さすがに陽菜には言えないけど。


「歩夢。お願いだから。離して」


 陽菜の本気の声がした。

 本気で嫌がってる。

 仕方ない、これ以上は止めとかなきゃね。

 あとが怖いから。


 機嫌を損ねたら、しばらく口を聞いてくれないし、家にも出入り禁止になっちゃうんだよね。

 それに、陽菜を抱きしめられなくなったら困るし、嫌われたくないし。


 僕は渋々、自分の腕をほどいた。


 目の前には陽菜の顏。

 ほっとしている陽菜がいた。



 まっ、いいや。

 帰ってから、思う存分抱きしめよう。


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