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ただの奥歯  作者: 島猫。
27/30

27:ボーイズラブ。R15。『涼しい顔の裏側』

ボーイズラブ。R15。









友人の晋太郎(しんたろう)は最近いつもスマホを見ている。

俺がすぐ横に居ても真ん前に居ても、平気でスマホに目を落とす。

画面の照度はかなり下げていて、常に消音。

ゲーム画面だと暗いなりにもまだカラフルで目立つ上に指の動きでなんとなくそれだと分かるのだが、それ以外だと何をしているのか、一体全体さっぱり不明だ。


「お前さ、いっつもいっつもそんなに何見てんの?」


若者らしく、SNSで女の子と遣り取りしていたりするのだろうか。

因みに俺はというと今どきには珍しく、家の方針によりスマホデビューは高校卒業までお預けになっている。


「んー、さて、何でしょう?」


晋太郎(しんたろう)はこめかみに人差し指を添えたニタリ顔、フザケていやがる。


「知らんっちゅーの」


分からなくて気になるから勇気を振り絞って聞いているというのに、人の気も知らずにコイツは。

あまり詮索したら気を悪くするだろうかと思うから、聞くのを極力控えているというのに。

気まずい空気は好きじゃないから、さっさと話題を変えることにする。


「なぁ、先週の中間テスト、何の教科が戻って来た?」


「うちのクラスは数学と現社と……英語、と物理。で、俺のスマホがそんなに気になるの?」


俺の細やかな気遣いと小さな努力虚しく、話題はするりと元に戻った。


「気になる。だって晋太郎(しんたろう)、俺と居てもずっとスマホ見てんじゃんか」


お前が話題を戻したのだからと、ここぞとばかりに正々堂々訊いてやる。


「スマホにヤキモチ? 良介(りょうすけ)くんは可愛いでちゅね」


「気っ持ち(わり)ぃー。お前ほんっとに腹立つ」


アハハッと晋太郎(しんたろう)が機嫌良さそうに笑っていて、これまた腹が立つ。


「はい、どうぞ」


「見ていいの?」


晋太郎(しんたろう)が俺にスマホを差し出したので、受け取って表示されたままの画面を見た。

画像はほとんど無く、沢山の文字の羅列。

コイツ真面目か!

……や……え?

んん??

え……っと。

……ど、ど、ど、どエロい単語が並んでいる……。

それも、ここじゃ口に出して言うのも憚られるような。

「らぶえっち」とか、「♡喘ぎ」とか、「乳首攻め」とか、どれもなかなかではあるが、これでもまだ可愛い方だろう。

チラッと晋太郎の様子を窺うと、口笛でも吹けそうな涼しい顔をしている。

なのに俺といったら、どんな顔をしていいのか分からずに、怒りからなのか恥ずかしさからなのか混乱からなのか、顔に熱が急速に集まって、身体がぷるぷると震えている。さながら急速湯沸かし器。ついでに何だか……股ぐらが熱い、ヤバい。


「面白いっしょ? エロ小説のフリー投稿サイト」


「お前……いっつもこれ見てんの?」


良介(りょうすけ)とだけ居るときな。他の奴らも一緒に居るときは俺ゲームしてるし」


「は? 意味わかんねぇ」


「だって興奮すんじゃん、良介(りょうすけ)の顔見ながら、良介の今みたいな顔とか想像すんの」


そう言って晋太郎(しんたろう)の手が俺の(ほほ)にさわぁ……と触れた。

それが何故だがとてもいやらしい手つきに思えて、ゾクゾクと全身に悪寒が走る。


「なぁ、良介。他の奴らの前でそんな物欲しそうな顔したら駄目だよ」


頬をさわぁさわぁとなぞる手は俺の唇までおりてきて、口内に侵入した指先はやらしい手つきのまま俺の舌をさわりと撫でた。


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― 新着の感想 ―
[一言] おお! サクッとしたプチエロ感覚のお話ですね!
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