10:詩かエッセイか『おかあさんと呼ばれて』
一番下の子だけが私のことを「ママ」と呼ぶ
3歳と2ヶ月
「ママ」
「お母さんよ」
「○○○(子の名前)のマ、マ」
笑うと目が細くなり、笑うと目が無くなる子
顔をくしゃりとさせ、嬉しそうに目を無くし、私のことを「ママ」と呼ぶ
上の子達はみんな私を「お母さん」と呼ぶ
言葉の出初めは「ママ」だったかもしれない
でも自然に「お母さん」になった
そう呼ぶように私が仕向けた
私が自身を「お母さん」と言った
自分も自身の母親のことを「お母さん」と呼んでいたから
自分は「ママ」という柄ではないと思った
自身が母親をそう呼んでこなかったことで、気恥ずかしさもあった
私は「お母さん」
それが一番しっくりきた
子達には、父親のことを「とうと」と呼ぶように仕向けた
とうと遅いね、とうと帰ってきたかな、とうとのご飯どうしよう
とうと、とうと、とうと、とうと
でも、子達は気付けば全員が「お父さん」と呼んでいる
最初の頃は「お母さん」に矯正しようとした
うちにママはいないのよ、ママじゃなくてお母さんよ
それでも、一番下の子は私のことを「ママ」と呼ぶ
「ママ」
「お母さんよ」
「おかあさん」
寂しくなった
胸がきゅうっとなった
子の成長
置いてけぼりな自分
元々は「お母さん」と呼ばせたかったのに、いざ呼ばれると急に悲しい
一番下の子は私のことを「ママ」と呼ぶ
「ママ」
「お母さんよ」
「○○○(子の名前)のマ、マ」
ドキドキする
この遣り取りはあとどれくらいだろうか
私は子達みんなの「お母さん」
でも、貴女だけの「ママ」




