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第33話 ナパーム


 俺達を頭上から見下ろす蛇よりも更に上にソレは居た。

 あの生き物には良い思い出など一つも無い。翼を用いて自在に空を飛ぶ生き物、鳥。鳥は制空権を持つ絶対的強者だ。その中でもあいつは別格だろう。

 体高は5メートル程、翼を広げた大きさは目測だが10メートルを超えているように見える。元のサイズと比較したらLサイズって所か?随分とデカくなったものだ。

 血を啜り、炎を操り、カーラの村を焼いた張本人。怪鳥ナパーム。二度と会いたくなかった相手が一番会いたくないタイミングでやってきてしまった。


 前回と同じだ、ナパームが口に咥えて来た木の枝が燃え盛り、それを下に投げ捨てる。俺達を炙る気か?流石に全てを諦めかけたその時、俺は自分の目を疑った。

 ナパームが燃やしたのは蛇の尾だったのだ。ロベリアを狙った物では無い、ロベリアからは遠ざけて焼いている。

 魔力を帯びた火は生木だろうと容赦無く焼き、火は更に勢いを増す。

 大蛇はたまらずロベリアを離して尾を引っ込めた。俺にはナパームがロベリアを助けたようにしか見えなかった。何故?何が目的で?いや、今はそれどころでは無い。

 ロベリアの無事が確認出来たなら混乱に乗じて逃げるのが最善手だ、ナパームと大蛇が潰し合ってくれるのであればこんな有難い事は無い。

 後はカーラと一緒に逃げるタイミングを測る事だけに集中するべきだ。…しかし問題とは立て続けに起こるものだと実感してしまう、カーラが見当たらない。


 そうこうしている間にも両者の争いは続いていた。そんな中、ナパームが何も無い空中で何かを口に咥えるような動作を取ったのが見えた。

 ナパームの能力は可燃性の物に火を付けて投げてくるといったものだったはず、燃える物でもあったのだろうか?俺のカニの視力でも何を咥えたか分からなかったが、ナパームの口内に光が灯り、嘴から火が漏れ出た事で理解した。

 あいつの能力もグレードアップしているようだ。しかしそれにしたってあれはズルい。空気中の酸素を燃やせるのであれば火を吹けるのと変わらない。


 ナパームは大蛇を直接は狙わない、周りの木々を次々と燃やしていく。蛇の燻製でも作る気なのだろうか?というか、このままでは俺達も燻製になりかねない。

 ロベリアに合図を送り川へ避難する事にした。それでも俺は全身が川に浸かるから良いとしてもロベリアは身体が半分以上水から出てしまう。

 俺よりも乾燥に強い種だとは言っても長くは持たないだろう。

 蛇の燻製が出来上がるのを待つ余裕は無い、そもそも持久戦はナパームにも不利なように思えるし、何かしら策があって攻撃を仕掛けたはずだ。今はナパームを応援するしかない状況なのが何とももどかしい。


 ナパームは蛇の攻撃を躱しながら旋回し、一方的に焼いていく。絵面だけ見ればナパームの圧勝なのだが実際にはいつ戦況がひっくり返ってもおかしくはない、鳥は打たれ弱い生き物だ、機動力と攻撃力を得た変わりに防御力を捨てている。それに蛇の動きは意外にも早く、ナパームの回避も常に紙一重なように見える。

 転生したクラスメイトの中でもこの二人は最強格なんじゃないかと思わされる程に俺の介入する余地が無い。


 大蛇はその長大な身体を活かして木々を地面ごとなぎ倒し、火を消しながらナパームを鋭い牙で捉えようとする。ナパームがどれほど飛び回ろうともしつこく追いかけ回し、追い付いては大口を開く。それを繰り返すもナパームを捕らえるには至らない。


 ナパームは機動力を活かし縦横無尽に飛び回る。空中において鳥を捕獲できる生き物なんて鳥以外にいやしない。

 大蛇を直接は焼かずに火を広げるようにして燃やしている事からナパームが作り出せるのは火種レベルの物なのだろう。それでも確実に、少しずつだが大蛇は弱っていく。

 …しかしそれは飛び続けているナパームとて同じ事、体力が続くとは思えない。


 そんな攻防がしばらく続いた後、ナパームの動きが変わった。大蛇の動きが鈍くなった時を見計らってクチバシで噛み付く動作が目立ち始めたのだ。

 火が吐けなくなったのか?と、そう思ったがどうやら違うらしい。ナパームのもう一つの能力、吸血。ナパームは生き血をすする能力を持っている、カーラの父親もそれで生きたまま血を吸われて死んでしまったのを思い出した。

 生き血をすする鳥、火を操る鳥、なんともイレギュラーな進化を辿ったものだ。…って、装備を使うカニの俺が言えた事では無いか。


 噛み付き、血を飲む度にナパームの体力が戻っていくのが見てとれる。捕食行為で魔力を補充出来るのならナパームが生き血を飲むのもまた捕食行為に他ならない。こうなるとナパームの弱点は防御力以外には存在しないだろう。

 一発でも当たればナパームの負けは確定するのに負ける姿が想像出来ない。

 どんな心境の変化かは分からないが今だけでも味方と判断して良いのだろうか?それでもカーラはナパームを許さないと思うけど。カーラ…カーラは今どこに居るのだろう、プルメリアが一緒に居るならそう簡単には死んだりしないと…そう思いたい。


魔物VS魔物の頂上決戦です。主人公の出る幕無いですねぇ(笑)

まぁ、蛇も鳥もカニには荷が重いので勘弁してください。

主人公が活躍するのはもうちょい後になります☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヤドカリちゃん可愛いです。 [一言] タイトルを見てなんだそれは?と釣られて一気読みしました。 とても面白いです、これからも応援してます。
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