第七百三十五話 刻苦精励(中編)
---ラサミス視点---
眼前のオーガ達は大体、体長250センチ(約250センチ)くらいか?
オーガとしては平均的なサイズだな。
今まで見た天使達よりかは大きいが、
天界へ行けば巨大な天使と遭遇する可能性はある。
それに接近戦の練習には、
オーガとかリザードマンが打ってつけなのも事実。
「ウオオオッ!!」
眼前のオーガが雄叫びを上げて、棍棒を上段に構える。
対するオレは中段に聖刀を構えた。
上段は振り下ろすだけで相手を攻撃出来て一見有利だが、
斬る為に前進すると、中段にある相手の刀が腹部に刺さるリスクがある。
オレもこの半年の間に、
黄金の手だけでなく、
侍などの刀を使う前衛職の職業ギルドに入り浸り、
刀術の基本技や応用技を覚えて、腕を磨いていた。
まあ相手や相手の武器によって、
戦い方も変わるが、今はモンスターが相手。
だから練習を兼ねて、基本、応用技を試してみよう。
「んじゃオーガ相手に新技を披露してみるか。
行くぜ、無明三段っ!!!」
オレは一歩踏み込んで、
通常の間合い、一足一刀よりは少々遠い距離から、
オレはオーガの喉をめがけて突きかかった。
と、相手や周囲には見えたろうが、
実際は広げていた脇を締めて剣先を上げ、
右足を30セレチ(約30センチ)程、出して前傾姿勢を取ったのだ。
「ガアアアッ!!」
意表を突かれたオーガがオレの刀を避けようと、
自分の棍棒を横に振るが、その時にはオレは左足を引き付けながら、
刀を下腹の辺りまで下げていたので、オーガの棍棒は空振った。
その相手の棍棒が無くなった空いた空間を、
鳩尾の骨のない所をめがけて下から突き上げた。
本当は刃を横にして肋骨の間から、
心臓を狙うのが、刀術の主流なんだが、
相手の腕に当たって失敗する危険があるので、
オレは下から突き上げることにした。
相手のオーガが突きを避けようと、
棍棒を左に振った為、身体も左に向いており、
オレの放った突きは、
オーガの鳩尾から入り心臓を捉え、背中側の肋骨も捉えた。
「ウ……ウオオオオオッ――」
綺麗に技が決まりオーガが呻く中、
次の瞬間には、オレは刀を引き抜いていた。
刀で肉を突いても、抵抗がほとんど無いので、
骨に当たった感触を刀を戻す合図にしている。
この一連の動作が約一秒から三秒。
今回は相手がモンスターなので、綺麗に決まったが、
人間相手にはここまで綺麗に決まる事は珍しい。
うつ伏せに倒れたオーガの下に徐々に血の池が広がり始める。
心臓が裂かれていても、
切り口が小さいので血が噴き出さないのだ。
ここ半年近くでひたすらこの三段突きを練習した成果でもある。
誘い、躱し、突く。
この三つを以て成し、
上段、下段、中段と攻める意味もあった。
オレの後ろに控えていた仲間もあまりの見事さに呆然としていた。
うん、これなら大天使相手にも使えそうだ。
「ガアアアッ!!」
「ラサミス、危ないっ! 新手よ!」
後ろからミネルバの声が聞こえた。
それと同時にオレは再び聖刀を構える。
とりあえず三段突きも練習はもう良いだろう。
ならば峰打ちを喰らわせて、
ジウバルト達が狩りやすいようにしてやろう。
目の前には三匹のオーガが立っていた。
それぞれ石斧、棍棒を持っていた。
まずは石斧のオーガから殺ろう。
オレはオーガの振るう石斧を軽く跳躍して回避。
そこから前傾姿勢を取って、左足で地面を強く蹴る。
「――峰打ちっ!」
とりあえず聖刀で石斧のオーガの腹部を強打。
それと同時にオーガが後ろに大きくよろめたい。
まずは一体。
「ウオオオッ!!」
「――遅いっ! 峰打ちっ!」
再び峰打ちを放つ。
狙う箇所は先程と同じく骨のない鳩尾付近。
綺麗な峰打ちが決まり、棍棒のオーガが地面に両膝をつく。
「う、ウオオオッ……」
立て続けに二匹がやられて、
残された棍棒持ちのオーガが戦いた。
こうなれば勝ったも同然。
オレはまた前傾姿勢を取って、
左足で地面を蹴って、あっという間に間合いを潰した。
「――峰打ちっ!」
今日、三度目の峰打ち。
これも綺麗に逆袈裟で決まり、
オーガが棍棒を手放して、呻き声を上げて後退した。
「今だ、ジウバルト、ジュリー、バルデロン!」
「おう! ――スパイラル・ザッパーッ!」
「はい! ――スピニング・ドライバーッ!」
「行きます! ハイパートマホークッ!」
オレの掛け声と共に、
ジウバルト達もそれぞれ前へ出て武器スキルを放つ。
ほぼ無抵抗の状態でオーガ達は断末魔を上げた。
まあ典型的なパワーレベリングスタイルだが、
オレも峰打ちの練習はしておきたいからな。
「ガアアアッ!!」
などと思っているうちに新手が現れた。
……通常のオーガに似ているが、アレはハイ・オーガだな。
冒険者から奪ったと思われる剣や戦斧。
そして軽鎧の肩当てやすね当ても装備していた。
見た感じ体長は200から215といった感じだ。
ハイ・オーガが五体で通常のオーガも五体。
普通のパーティなら苦戦は間違いないが、
オレ達は連合軍の中でも名の知れた連合の一党。
今更モンスター如きにビビらねえぜ!
「敵は十体だがオレ達なら楽勝だっ!
だが油断はするなよ、とりあえずオレとミネルバ。
そしてジュリーとジウバルトも接近戦をしろ!」
「了解」「ああ」「はいっ!」
さあて、相手はハイ・オーガだ。
コイツ相手なら色々を試せそうだが、
まずは一体ずつ確実に倒していくぜ!
次回の更新は2026年2月3日(火)の予定です。
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