第七百三十四話 刻苦精励(前編)
---ラサミス視点---
天使軍との決戦から早くも五ヶ月が過ぎた。
暦の上ではウェルガリア歴1607年3月5日。
オレ達「暁の大地」は話合いの結果、
エリス、メイリン、ミネルバ、マリベーレ。
ジウバルト、バルデロン、ジュリーの七人が天界遠征に参加する事となった。
この辺はエリスが言ってた通りになったな。
尚、半年の猶予があったので、
マリベーレとジウバルトには一時的に復学させて、
リアーナ大学付属の高等部に通わせていた。
まあこんなご時世に学校に通わせても無駄と言われるかもしれんが、
マリベーレとジウはまだまだ少年少女という年齢。
だから団長としては、最低限の学生生活を送らせてやりたい。
というような感じで二人に伝えたが、
ジウバルトは――
「こんなご時世でのうのうと学校に通う気はしないぜ」
と、予想通りの反応をしたが――
「五月蠅い、これは団長命令だ」
と、団長権限を強行して無理矢理従わせた。
ジウバルトの気持ちも分かるが、
オレくらいの年齢になると、
この辺の気遣いが大事だからな。
今ではドラガンや兄貴の気持ちがよく分かる気がする。
まあオレも年を取った証か。
後は他の団員は基本的に自由行動。
とはいえ気楽に遊んでいられる訳もなく、
オレやエリスと共に近場のダンジョンなどに潜り、
レベル上げや技の熟練度を上げる日々が続いた。
オレも新たに覚えた独創的技「無明三段」を魔物や魔獣相手に鍛錬を兼ねて連発していた。
他の団員も技や魔法。
また新たに習得した独創的技の熟練度を上げていた。
天界へ行くまで、少しでもレベルを上げておきたいからな。
そういう訳で今日も全員で迷宮探索に繰り出していた。
前衛はオレ、ミネルバ、ジュリー。
中衛にメイリン、ジウバルト、バルデロン。
そして後衛にマリベーレとエリスという陣形で、
事前に討伐依頼も受けて、
場所は毎度の如く、リアーナ北東部のダルタニア迷宮だ。
オレのレベルは既に94という超高レベル。
このレベル帯だと滅多にレベルが上がる事はないので、
オレは魔物や魔獣を弱らせて、
とどめは仲間に刺させるというパワーレベリングスタイル。
おまけに今では結構回復量があるので、
エリスをサポートするサブ回復役として働いた。
「ガルルルオオオンッ!」
「――ヴォーパル・スラストッ!」
上層及び中層はメイリンの魔法攻撃で魔物、魔獣を一掃して、
人型モンスターが増える下層まで降り立ってきた。
今は下層エリアの二十七階。
この階辺りから人型魔獣のブルーウルフやオーガやハイ・オーガが増える。
まずはオレやミネルバが魔物、魔獣と戦って、
弱ったところをジュリーやジウバルト、バルデロンがとどめを刺す。
という戦術でドンドンと魔物、魔獣を倒していく。
「――スピニング・ドライバーッ!」
「――キリング・サイスッ!」
「――クロス・スマッシュッ!」
「ギャ、ギャォォォンッ!?」
ジュリー達の武器スキルが決まり、
青い人狼は絶叫して息絶えた。
「これで十体め、しかしハイエナ気分が抜けないぜ」
「まあそうですね、でもジウくん。
これも団長達の好意ですよ」
「そうですとも!
おかげで我々もこの半年の間で
結構レベルが上がったじゃないですか」
ぼやくジウにフォローするジュリーとバルデロン。
最近では良く目にする光景だ。
まあ確かにある種の寄生プレイだが、
単純にレベルを上げる効率だけ考えたら、
このパワーレベリングスタイルが一番効率が良い。
「ウガアアアァッ!」
そうこうしているうちに新手が現れたようだ。
叫び声の聞こえた方向に視線を向けると、
棍棒や石斧を手にしたオーガが十体ほど現れた。
「ぼやいてるうちに新手が来たぜ、
まずはオレとミネルバが迎え撃つ。
ミネルバ、好きに戦っていいぞ」
「――了解っ!」
それが合図となり、ミネルバが漆黒の魔槍を構えて一歩前へ出た。
オレも鞘から征伐剣・顎門を抜いて、刀を構える。
「ウオオオッ!」
前方のオーガが棍棒や石斧を振り上げて、
間合いを詰めていきたので、オレ達も武器で応戦する。
レベル30くらいまでなら、
苦戦する大型の魔物だが、
今のオレやミネルバのレベル帯だと正直物足りない相手だ。
だが今後の天界の戦いを想定して、
魔物、魔獣を狩る際には、
このような人型モンスターを多めに空いてしている。
オーガ達は棍棒や石斧を縦横に振るうが、
オレとミネルバは体捌きや足捌きを駆使して回避。
あるいは刀や斧槍で軽く受け止める。
「今ではオーガ相手だと少々物足りないな」
「そうね、でもあくまでレベル上げが目的だから、
迷宮探索も安全マージンを確実に確保すべきよ。
所詮は手慣らし程度というくらいに割り切るべきよ」
ミネルバの言う事も尤もだ。
レベル上げばかり考えて最難関の迷宮に潜って、
油断してパーティ全滅、なんてなったら目も当てられない。
だからここは比較的近場の迷宮で、
毎日毎日、地道にモンスターを狩るのが無難だ。
「――ダブル・スラストッ!」
「グ、グッアアアァッ!!」
そうこういっているうちにミネルバが一体を追い込んだ。
最近の彼女はレベルも70を超えて絶好調だ。
でもオレは団長かつレベル90代。
彼女に後れをとるわけにはいかない。
「よーし、ここはちっとばかし本気を出すぜ。
「無明三段」を使うから、
皆、サポートを頼む」
オレがそう言うと、
ミネルバ達は「了解」や「はい」と答えた。
そしてオレは腰を落として、
両手で聖刀の柄を強く握りしめた。
――さあ、オーガさんよ。
――悪いけど、刀の錆になってもらうぜ!
次回の更新は2026年2月1日(日)の予定です。
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