第七百三十二話 多士済々(中編)
---三人称視点---
天界エリシオンの生命の間。
天界における生命や機械、兵器を生み出すエリアである。
その生命の間に、
天使長ミカエル、熾天使ラファエル。
また知天使ケルプの姿が見えた。
身長180前後、白皙、前に流した銀髪。
金糸の刺繍が施された純白の法衣に黒いブーツという格好。
そして背中には一対二枚の漆黒の翼が生えていた。
その近くに大天使サリエルの姿もあったが、
まだ二名ほど姿が見当たらない大天使が居た。
「まだ二名ほど足らないですね。
こんな大事な会議に遅れてくる――」
と、サリエルが言いかけたところで――
「……いや既にこの場に来ているさ」
何処からともなく機械的な音声が聞こえてきた。
条件反射的にミカエル達は、音声が聞こえた方角に視線を向ける。
するとそこには大きな黒い影が見えた。
よく見ると目が慣れて、その姿が露わになるが、
そこに映ったのは、通常の大天使とは異なる姿であった。
その姿は神化した熾天使の姿に似ていた。
身長200前後、ボディカラーは、
透明感のある空色で肉体が構成されており、
装甲の形状は何処となく中世の騎士を連想させる。
頭部はバイザーつきのヘルメット型。
両腕を胸の前で組んでいるが、
手足は長く、胸部もボディも逞しい感じに重量感があるが、
腰はくびれており、良い感じに身体の凹凸があった。
そして背中には、見る者を魅了する二枚一対の銀の翼が生えていた。
「力天使メルキセデクか、久しいな」
「嗚呼、このような姿を見るのは随分と久しぶりだ」
「天使長ミカエル、熾天使ラファエル。
ワタシが力天使メルキセデクだ、以後お見知りおきを」
見た目も声も機械的だが、
こうして喋ってみると、他の天使と然程変わらないように見えた。
「その姿は常時、神化している感じかね?」
「同士サリエル、その質問には応えられない」
「そうですか、まあ別に構わんさ」
「……これで五人集まりましたな」
と、知天使ケルプ。
「でも計算上、あと一人足りなんな」
と、熾天使ラファエル。
「……嗚呼、だが近くに気配は感じる」
天使長ミカエルがそう言うと、
まるで計ったようなタイミングで近くから声が聞こえてきた。
「流石は天使長ミカエル、良い勘をしてられている」
ミカエルが新たに開放した大天使は全部で三体。
サリエルとメルキセデク、そしてサンダルフォンである。
そしてその最後の三体目の大天使が優雅な歩調で現れた。
身長は180前後、見た目は眉目秀麗の男性の姿だ。
艶のある綺麗な栗色の髪は程よい長さで、
手足も長く、身体全体のバランスも良くて、均整のとれた肉体だ。
だが少しばかり華奢な感じもする。
そして黒いインナースーツの上から、
臙脂色の鎧を装着しており、
背中には四枚二対の漆黒の翼が生えていた。
「我が名は大天使サンダルフォン。
天使長ミカエル、熾天使ラファエル。
またその他の大天使よ、遅れてすまなかった」
やや芝居がかった口調でそう言う大天使サンダルフォン。
その見目麗しい姿も相まって、
何処かの超人気の役者のような雰囲気を全身から醸し出している。
だがこれで全員が揃った。
天使長ミカエルを筆頭に六人の大天使がこの場に集結した。
これ自体が異例の事態である。
そんな状況でサリエルが疑問を投じた。
「……いや噂に聞く大熾天使長のお姿がありませんな」
「大熾天使長? あれは一種の神話やお伽噺ではないのか?」
と、メルキセデク。
「だがそこに居るサンダルフォンに関係あると聞いたが……」
「同士サリエル、自分もその事はよく知らんのだよ。
まあ神話などでは自分と兄弟と言われているが、
自分の知る限り、そのような大天使と遭遇した事はない」
「そうか、ならば天使長ならご存知でしょうか?」
「同士サリエル、今その話題は不要だ。
まずはこの面子で会議を行う。
これは天使長命令だ、素直に従え」
「了解致しました」
サリエルは細長い両手を広げ、
大げさな動作で肩を竦めた。
するとミカエルが強く響く声を発した。
「これで全員が揃ったな。
まずは全員無事に揃った事に礼を言う。
この度はよく集まってくれた。 感謝する」
天使長の言葉に周囲の熾天使、大天使が無言で相槌を打つ。
天使長は微笑を浮かべて、進行を続けた。
「皆に集まってもらった理由は一つだ。
我々が侵攻していた惑星ウェルガリアに関する話だ。
同士ガブリエルを仲介役として、
ウェルガリアの民を近々この天界へ招く事になるだろう。
その際には貴公等に天界の各エリアに分かれて、
ウェルガリアの民を迎え撃ってもらいたい」
この言葉には大天使達も少なからず驚いた。
地上の民に接触する事自体が稀少なのだが、
よりにもよってその地上の民をこの天界に招く。
これは通常では考えられない状況だ。
過去、それもとても遠い遠い過去に、
堕天使達が反乱して、
この天界が戦場となった事があるとの神話は有名だ。
だが地上の民がこの天界へ来る。
という話はこの場に居る大天使の大半も初耳であった。
この事実に少なからずの抵抗感を覚えるが、
司会役を務める天使長ミカエルも至って真面目な表情。
それ故に誰も発言しようとせず、
ここは辛抱強く天使長の次の言葉を待った。
そして玲瓏たる美声で天使長が周囲に告げた。
「この決定に貴公等も色々と思うところもあるだろうが、
天使長権限によって、これは決定事項とする。
もう一度言う、天使長権限によって、
惑星ウェルガリアの民をこの天界にて迎え撃つっ!!」
次回の更新は2026年1月27日(火)の予定です。
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