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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第九十四章 力天使ヴァーチャ

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第七百二十六話 一大決心(後編)


---ラサミス視点---



「……」


 オレの言葉を聞いて、ドリス義母かあさんは暫し黙り込んでいた。

 その表情は一言では形容しがたい複雑さを帯びていた。


 多分、義母かあさんも悩んでいるのであろう。

 オレの気持ちも理解出来るが、

 やはり娘婿として家庭を最優先して欲しい。


 という思いが胸の中で渦巻いているのであろう。

 そしてドリス義母かあさんは、決意を固めた口調で――


「分かったわ、そこまで言うならおやりなさい。

 でもどうせやるならとことんやりなさい。

 世界を救い、莫大な報酬を得て、

 その報酬で一生安泰の生活を妻子共に享受する。

 それくらいの野心を抱きなさい。

 ただ都合良く使われるなんて事はないようにね」


「それじゃあ……許可を頂けたんですか?」


 オレの言葉に義母かあさんが「ええ」と頷く。


「まあアナタも男ですし、

 またアナタのそんな所にエリスは惹かれたんでしょう。

 それに義母ぎぼに止められたくらいで、

 決意を揺るがすようでは、

 今後の人生で妻子を護っていく事も出来やしないでしょう。

 だからアナタ、そしてエリスと共に天界へお行きなさい。

 ラミレスちゃんの世話などは、

 私やアナタの兄夫妻に任せて頂戴」


「あ、ありがとうございます」


「お母さん、本当にありがとう!」


 オレとエリスはドリス義母かあさんに何度も頭を下げた。

 それを彼女は優しい面持ちで全て受け入れてくれた。


「いいのよ、それにそうよね。

 もし天界での戦いに負けたら、

 この世界もとんでもない事になるだろうし、

 それだったら、娘婿を戦場へ送って、

 成果を上げさせる方が賢い選択肢よね」


「そうなるように全力を尽くします」


「ええ、アナタならきっと出来るわ。

 じゃあもうこの話はお終い。

 ここからしばらくは一人の夫として、

 妻子と共に平穏な生活を送りなさい」


「はい……」


 こうして何とかドリス義母かあさんの説得に成功。

 まあ彼女も全てを受け入れた訳じゃないだろうが、

 親として出来る妥協点を何とか見つけてくれたのだろう。


 ……その期待には何としても応えないとな。

 でもしばらくはゆっくり家族と暮らしたい。

 今ぐらいはそれを実行しても誰も責めやしないだろう。


 戦士にも休息が必要だからな。



---------


 その日の夜二十三時過ぎ。

 夕食、入浴を終えたオレとエリスは、

 二階の寝室で一緒に寝る事にした。


 お互いに寝間着に着替えて、

 オレ達はベッドに腰掛けて見つめ合った。


「最終決断は半年後なのね?」


 エリスがオレを見つめながらそう言う。


「嗚呼、半年後も結論は変わらんと思うが、

 その間に精々家族サービスや親孝行をするよ。

 天界へ行ったら、いつ帰ってこれるか分からんからな」


「そうね、メイリンやミネルバ達も行くの?」


「ミネルバは行く気のようだが、

 メイリンは少し悩んでいるようだな。

 まあ無理もないと言えば無理もないが」


「そうね、でも多分メイリンは一緒へ行くわ。

 他の団員も結局はアナタへついて行くでしょう」


「……その可能性は高いな。

 まあオレとしては無理強いする気はないが……」


「皆、アナタの事を信頼しているのよ。

 そりゃ天界へ行くのは誰でも怖い。

 でもアナタと一緒ならきっと大丈夫。

 アナタにはそう思わせる何かがあるのよ」


「そういうもんかね……」


「うん」


 まあこういう風に信頼されるのは悪い気はしねえ。


「まあ自分じゃよく分からんが、

 オレの出来る限りの事はするよ」


「……ラサミス、私が一緒について行く事は賛成なの?」


「え~と……」


 いざこう言われると反応に困るな。

 でもエリスが居れば何かと心強い。

 そして妻の手前、オレも無茶な事はしない。

 ……という自制心も働くであろう。


「嗚呼、回復役ヒーラーはいくらいても構わんしな。

 それにエリスが側に居れば、

 オレも勇気が沸くし、自制心も働くだろう。

 だから君の同行はオレも賛成だ」


「そうよ、良かったわ」


 エリスはそう言って、身体を寄せてきた。

 そしてオレは右手で彼女の肩を優しく掴んだ。

 それから自分の気持ちを正直に打ち明けた。


「エリスはオレの事をよく褒めてくれるけど、

 兄貴やドラガンと会うまでのオレは本当に腐っていた。

 自分の道を歩んでいるエリスやメイリンにいつも引け目を感じてたよ」


「……そうだったの?」


「嗚呼、でも兄貴と再会、ドラガンと出会ってオレは変われた。

 あの二人のように格好いいおとこになりたくてね。

 そこからはがむしゃらに頑張ったよ。

 そして気がつけば、今のようになっていた」


「うん」


「オレは昔、英雄ヒーローというものに憧れていたが、

 英雄ヒーローと呼ばれた連中もきっといつも目の前のやるべき事を

 やり続けただけと思うんだ。 今ならそうだと分かる……気がする。

 だからオレは危険を承知であえて天界へ行くよ。

 ここで逃げたら、その後、平和な生活を送れたとしても、

 オレはある種の引け目を感じながら、一生生きて行く事になるだろう。

 だからオレも自分の役割を果たす為にレクサーや他の連中と一緒に

 天界へ行くよ。 多分、ウチの団員も大半が同行してくれるだろう。

 でもオレはあえて理想を貫くよ。

 仲間を誰も死なせず、天使達を必ず説得してみせるよ。

 だからエリスもオレについて来てくれ」


「うん、ついて行くわ」


「そうすればオレは実力以上の力を出せる」


「……そうなの?」


「嗚呼、惚れた女の為なら男は頑張れるものさ。

 それは今も昔もきっと変わらない」


「そうかもしれないわね」


「嗚呼、でも結論を出すまでまだ時間はある。

 だからその間は嫁さん孝行して、息子を可愛がるよ」


「うん」


「……」


 そしてオレ達はお互いに無言になって見つめ合う。

 それからお互いの顔を近づけて、唇を重ねた。


 ……。

 こんな可愛い嫁さんを失いたくない。


 そしてこの気持ちは妻子を持つ男が皆、思う事であろう。

 その為にもあの天使長ミカエルを納得させないとな。


 でもそれはまた今度にしよう。

 今は自分の気持ちに正直になろう。


 それからオレ達は身を寄せ合って、

 久しぶりにベットの上でお互いを愛し合った。



次回の更新は2026年1月11日(日)の予定です。


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