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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第九十四章 力天使ヴァーチャ

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第七百二十四話 帰還(後編)


---ラサミス視点---


 オレは要点をかいつまんで、

 分かりやすく今回の一連の騒動に関して、ドラガンに説明した。


 するとドラガンは真顔になり「そうか……」と言って暫し黙り込んだ。

 まあそう簡単に結論が出せる問題じゃないからな。


 他の団員達も神妙な顔をして、ドラガンの言葉を待っていた。

 するとドラガンも考えがまとまったのか、

 ゆっくりとした口調でオレに問い掛けてきた。


「ラサミス、端的に聞くぞ。

 お前は天界遠征軍に加わるつもりか?」


「嗚呼、そのつもりだ。

 だがオレは他の団員にそれを強制するつもりはない。

 遠征に参加するか、どうかはこの半年の間によく考えて欲しい。

 決してオレに対して妙な義理立てはしないように。

 あくまで自分の意思や気持ちを最優先して決めてくれ」


「……」


 オレがそう言うと、周囲の仲間達は再び沈黙した。

 まあでもこれは最初に言っておかないとな。

 

 この天界遠征はこれまでの戦いとは違う。

 それこそウェルガリアの命運を掛けた戦いになるだろう。

 でも正直生きて帰れる保証は何処にもない。


 そんな戦いに仲間を強制参加させる。

 なんて真似はオレには出来やしない。


「そうか、まあ拙者もお前と同じ意見だよ。

 こればかりは強制出来るものじゃないからニャ。

 皆もよくよく考えて答えを出すがいいさ」


「嗚呼、オレもそう思うよ。

 まあまだ半年の猶予があるさ。

 無理に答えを出そうとせず、

 自分の本音を大事にしてくれ、以上が団長としての言葉だ」


「……アタシは参加してもいいわ」


 と、決意した表情でそう言うミネルバ。

 すると他の団員も自分の意見を述べ始めた。


「あたしは正直悩んでいるわ。

 気持ち的には参加したいけど、正直怖いと思う気持ちも強い」


「メイリン、それが普通さ」


「オレは多分参加すると思うよ。

 魔王陛下の力にもなりたいからね」


「そうか、ジウバルト。

 お前の気持ちはよく分かったよ。

 だが今すぐ結論を出す必要もない。

 兎に角、よく考えてから結論を出せ」


「嗚呼、分かったよ……」


「他の皆も結論を急ぐなよ。

 焦らずよく考えろ、これは団長命令だ」


 するとジュリー、バルデロン、マリベーレが「はい」とか「うん」とか返事した。

 まあ多分、多くの者が遠征に参加する事になるだろうが、

 現時点で結論を急ぐ必要もないからな。


「じゃあしばらく皆に休暇を与えるよ。

 オレも久しぶりに自宅へ帰るわ。

 何かあったら気兼ねなく連絡してくれよ」


「うむ、久しぶりの一家団欒を楽しめ」


「嗚呼、じゃあ皆、またな」


 そう言ってオレは拠点ホームを後にした。

 そしてその後で自宅へと向かった。


「妻子に会うのも久しぶりだな。

 ラミレスももう大きくなったのかな?」


 ラミレスももう一歳半だからな。

 もう少しでちゃんとした言葉も喋るだろう。


 ……。

 こうして家族の事を考えると、やはり胸が痛むぜ。


 ラミレスはまだまだ手間がかかるし、

 その負担はエリスやドリス義母かあさんにかかっている。


 その上で未知なる世界――天界へ行くのだ。

 これは一人の父親としては、少々無責任かもしれない。


 ……でもやはりオレは行かなくちゃならない。

 ここまで首を突っ込んでおいて、

 今更、素知らぬふりを決め込む事は出来ない。


 などと思っていると自宅についた。

 ……なんだか庭の手入れが行き届いてるな。

 綺麗に刈られた芝と手入れが行き届いた花壇。


 恐らくエリスが子育ての合間に手入れしてくれたのだろう。

 彼女には本当に頭が下がる。

 まさに良妻賢母だ。


「おっと……感傷に浸りすぎたな。

 とりあえず玄関のドアをノックしよう」

 

 オレは自宅の玄関の赤い扉を左手で数回ノックした。


「オレだ、ラサミスだ」


 すると赤い扉が開いて、

 オレの愛妻――エリスの姿が視界に入った。


「あ、ラサミス。 おかえりなさい」


「嗚呼、エリス、ただいま」


「とりあえず中へ入ったら?」


「……そうだな」


 オレはエリスと横に並んで、一階のリビングまで移動した。

 そのリビングには、ドリス義母かあさんがラミレスを抱えて、

 ソファに腰掛けていた。


「ラサミスくん、無事で何よりだわ」


「はい、お義母かあさん、無事に帰って来ました」


「色々と疲れたでしょう。

 夕食の準備をするから、

 アナタはソファでゆっくり休んでいて頂戴」


「はいっ……」


「あ、お母さん。 ラミレスの世話を変わるね」


 そう言って、今度はエリスがラミレスを抱き抱えた。

 赤子を抱く姿が妙に絵になる。

 まさに育児する母親という感じだ。


「ちょっと食材が足りないわね。

 アナタ達の拠点ホームに行って食材を分けてもらいに行くわ。

 ラサミスくんはエリスと一緒にラミレスちゃんの世話をしてて」


「あ、はいっ!」


「お母さん、いってらっしゃい」


 しばらくするとドリス義母かあさんは家の外へ出た。

 必然的に家の中には、オレ達夫婦と息子だけが残された。


 オレとエリスは無言で見つめ合っていた。

 何だろう、色々と喋りたい事があるが言葉が出てこない。

 でもまずはこの一言を言わなくちゃならない。


「エリス、ラミレス、ただいま」


「うん、おかえりなさい」


 こうしてオレは死線を乗り越えて、我が家に帰って来た。

 ……帰るべき家がある、という事は幸せかもしれない。


 そう噛みしめながら、

 オレは今この瞬間に言い表せない幸福を感じていた。


次回の更新は2026年1月6日(火)の予定です。


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